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COP23参加報告。4つの方向性の確認(小田原治)

2017-12-21 17:01:30

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 11月12日~16日の間、COP23(国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議)のサイドイベントに参加してきた。私の参加証は、サステナビリティ推進のための石油ガスの業界団体IPIECA(国際石油産業環境保全連盟)から割り当てられたもの。IPIECAは “CCS Fly”というCCS推進イベントを実施した。


 COP23の会場はライン河に沿った緑豊かな公園の中に設営されており、サイドイベント会場(Bonn Zone)は、政府間協議会場(Bula Zone)から1.5Km離れた場所にある。会場間の移動にはシャトルバスと自転車が用意されていた。

 

 期間中(11月6~17日)、12の大箱Meeting Roomと約40のPavilion(国、および、IETA、IUCN、UNESCO等の団体が出展)の中で、サイドイベントが同時並行で開催された。どのイベントに参加するか、選択がするだけで半日かかる。私が5日間で参加したのは21イベント。内訳はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)関連2件、カーボンプライシング関連6件、国連関連3件、IEA関連4件、CCS関連3件等であった。

 

 その中から、私が注目した4件のトピックスについて報告する。なお、いずれも私個人の理解、感想であることをお含みおきいただきたい。

 

 1. TCFD提言に沿った気候変動関連リスク情報の開示場所は、当面は自主開示資料から

 

 今年6月に最終版が発表されたTCFD提言は、法定財務情報開示文書での気候変動関連リスクの開示を求めているが、実際には自主開示資料での開示となる見込み。2018年、2019年は各企業が自主開示の中でTCFD提言を取り入れ、その開示レベルがセクター毎にスタンダード化されていく。現状、法定開示に取り込む具体的な動きはEU、OECDには見られない。自主開示の進展を見て、3~4年先頃から法定開示に取り込む動きがでてくるかもしれない。

 

 2.欧州排出権取引制度(EU-ETS)で、2021年以降カーボンプライス回復の見込み。

 

 リーマンショック後の景気低迷によるCredit余剰から価格低迷(2011年以降€10/t-CO2未満)が続くEU-ETSの改革のため、余剰Creditを買取/償却するMSR制度(Market Stability Reserve)の仕組みが11月上旬に正式決定した。2019年から運用を開始し、2021~2022年以降にリーマンショック前の€20レベルへの回復を目指す。EU各国が経済的に競争力を弱める政策を実行できるかどうかは疑問だが、少なくとも仕組みは用意されたということ。

 

 3. 国連環境部は11月に発表した”The Emissions Gap Report 2017”で、パリ協定で各国が提出した削減目標(NDC)を2020年時点で強化すべきと提言。

 

 国連環境部は、世界排出量と2℃目標とのギャップ分析報告書(The Emissions Gap Report)を毎年発行している。11月に発行された2017年版では、「世界の排出量の増加傾向は続いており、2030年時点で2℃目標達成可能な排出量レンジ内を目指すならば、各国が表明しているNDCを2020年時点で強化しなければならない。」と提言している。

 

 パリ協定では、参加国が既に2020~2030年を対象としたNDCを表明しており、5年毎に下方修正を検討する仕組みになっているが、2025年ではなく2020年時点で下方修正する必要があるとの主張だ。2000年に強化される可能性がゼロではないことを意識しておきたい。

 

 また、このイベントで、2015年のCOP21でパリ協定締結を主導した当時の仏外相ファビウス氏を国連環境部の顧問に招聘したことが発表された。国連環境部のギャップ分析結果をCOP交渉に反映するためのドライバーとする狙いがあるものと思われる。

 

 4. 欧州系の国際石油企業を主体とする気候変動対応のための業界団体OGCI(Oil and Gas Climate Initiative)が、英国でCCSへの政府関与モデルの構築に取り組む

 

 IPCCの第5次評価報告書をはじめ、2℃目標を達成するモデルには、CCSによるオフセットが必ず組み込まれているが、現実にはCCSの導入は進んでいない。実施コストが高く経済性が無いことが原因で、CCSの実施にはなんらかの政府支援が必要だ。

 

 かかる背景のもと、OGCIが英国でガス発電事業及び周辺の一般産業から排出されるCO2を対象にCCS事業に取り組む。狙いは、CCS事業についての政府関与モデルの構築である。具体的には、(1) 英国政府のCCS導入政策への働きかけ、(2) 国民のCCSの必要性に対する正しい理解の促進。の二つを進め、連動させることを目指す。英国で成功すれば、その手法をインド、中国等に適用することを目指している。

 

 <追記>

 COP23の主催国はフィジーだったが、フィジーには参加者受け入れのインフラがないので、今回の開催地は、COPの事務方協議が行われるドイツのボンになった。しかしながら、ボンも人口31万人で決して大きな街ではない。

 

 私は一ヶ月前に予約しようとしたが、すでにボンのホテルは一杯だったので30キロほど北のケルンにホテルをとった。ボンまで電車で小一時間、ボンからバスかトラムに乗り換えて会場に向かうので、トータルで片道1時間半はかかった。しかも、ドイツの国鉄は毎朝10~15分遅れるのが常態化している。救いだったのは、COP参加者は公共交通機関を無料で利用できたこと。参加者タグの裏に張られたホノグラムのシールを車掌さんに見せるだけでよかった。

 

 来年のCOP24はポーランドのカトヴィッツェで開催される。石炭採掘業、鉄鋼業などが盛んな人口30万人の街だという。カトヴィッツェの次のオプションはアウシュビッツになる。ホテルの予約はお早めに。

 

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小田原 治(おだわら・おさむ)国際石油開発帝石・経営企画本部プロジェクトジェネラルマネージャー・気候変動対応推進担当。