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RIEF論文:「新たな資本市場として飛躍する『グリーンボンド』。グローバル市場で発行額が急拡大、日本でも本格始動」(藤井良広氏)

2016-12-27 15:48:53

fujiigreenbondキャプチャ

 

 2016年はグリーンプロジェクト等に資金を供給するグリーンボンド市場が急成長した。年末時点でのグローバルな発行額は79億㌦(約9兆2400億円)で前年比倍増近くになった。国内市場でも2016年は日本勢による広義のESG債の発行が前年比倍の5件となった。グローバル市場につながる形で花開くことが期待される。そうしたグリーンボンドの概観を「週刊金融財政事情2016年12月19日号」でまとめた。

 

 本論文は、グリーンボンドの基本的な流れと概要、現状をわかりやすく解説したものである。2007年に第一号が誕生して以来、国際的な公的金融機関が途上国での温暖化対策事業へのファイナンス資金を調達するために債券を発行するようになった経緯から、グローバルイシューである温暖化対策資金を途上国等に供給するという政策意図が原動力となっている。

 

 そうした流れを明確にしたのが2016年の市場の拡大だった。CO2排出量が世界最大の中国が、前年末に中国人民銀行による国内版ガイドライン(中国金融債券公告)を発表、国内でのグリーンボンド市場作りに乗り出した。化石燃料依存のエネルギー構造を、再生可能エネルギー重視に切り替えるための資金調達手段としてグリーンボンドが注目されたわけだ。中国の国営銀行などはグローバル市場でのボンド発行にも熱心で、グリーンボンド市場全体の底上げにつながった。

 

 本論文はこうした市場の潮流を踏まえ、それまで不活発だった日本市場で胎動がみられてきたことなどを紹介している。そうは言っても、急速に成長する市場であり、かつグリーン事業へのファイナンスを軸とするため、その評価のあり方など、課題も山積する。また政策面では、中国を見習ってか、環境省がいきなり「日本版ガイドライン」策定に入るなどの“混乱”もみられる。論文はその辺りについても言及している。