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銀行の低炭素政策・マネジメントをチェックする投資家向けの「ガイドライン」公表。英非営利団体ShareActionが作成(RIEF) 

2017-02-23 18:21:15

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  気候変動対策への銀行の役割の重要性に関心が集まっているが、年金等の投資家が銀行の気候変動対応をエンゲージメント(関与)活動として評価するための「ガイドライン」を、英非営利団体のShareActionが作成、公表した。金融安定理事会(FSB)が気候変動による銀行等の金融セクターへの影響を財務的に評価するルール化を目指しているが、そうした評価を補完する、との位置づけだ。

 

 公表されたのは、「Banking on a Low Carbon Future~An Investor Guide for Engaging with Banks on Climate Change~」と題したレポート。ShareActionは英国の非営利団体で、年金や資金運用機関向けに責任投資を促進する活動を展開している。FSBの気候変動財務情報作業部会(TCFD)報告は、気候変動が経済に及ぼす影響を銀行などの金融セクターが財務的に評価し、資金供給を通じて低炭素経済への移行を促進しようとしている。

 

 ShareActionの「ガイドライン」は①銀行の気候リスク政策の評価とマネジメント体制②低炭素促進の金融商品とサービスの開発状況③低炭素社会構築に向けて他のステークホルダー等との政策エンゲージメントと協調行動④気候変動対策の実行とモニタリングーーの4分野を「キーエリア」と位置づけている。

 

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 投資家は、投資先の銀行へのエンゲージメント活動で、一対一の直接対話、議決権行使、集団的エンゲージメント活動等において、低炭素経済への移行を、銀行本来の資金供給機能を通じて支援しているかどうかを確認し、促す必要があるとしている。

 

 具体的な方法論としては、たとえば、①の銀行の気候リスク政策とリスクマネジメントの確認に際しては、銀行の保有資産(投融資先)に高炭素ビジネスセクターやプロジェクトがどの程度盛り込まれているかを、シナリオ分析を使って評価するよう指摘している。また気候変動の影響を受ける投融資先の物理リスク評価についても、セクターごと、地域、顧客ごとに資産評価を求めている。

 

 資産単位の影響評価に続いては、銀行全体において、シナリオごとの気候変動リスクが、損失可能性を示すVaR(バリュー・アット・リスク)をどの程度高めるかを検証し、ポートフォリオ全体への影響を計算するよう求めている。投資家は、こうした個々の銀行の企業としての気候変動リスクを把握することで、銀行間の比較検証が可能になる。

 

 さらに、パリ協定で各国が2030年までの国別削減目標(NDCs)を誓約したが、特にグローバルベースで活動する銀行は、複数の国のNDCsによって影響を受ける。投資家は銀行がこうした国レベルの気候変動対策の影響を適切に扱っているかどうかを確認する必要がある。

 

 このほか、気候変動リスクを軽減するために、投融資先について石炭や石油・ガス、その他の温室効果ガス高排出産業などの取り扱いを定めた「除外政策」があるかどうかの確認なども求めている。②以下のキーエリアについても、それぞれ投資家として具体的にどう対応するかのモデルが示されている。さらに、分野ごとの質問案も「ツールキット」として用意されている。

 

 日本の年金等の投資家も、こうしたガイドラインを活用して、低炭素化に力を入れている銀行と、そうでない銀行を区分けした投資をしてもらいたい。

https://shareaction.org/

 

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