HOME |「日本経済研究センター」が福島事故処理費用を試算。総額50兆~70兆円で、政府見通しの3倍。廃炉処理不可能の場合は、さらに増大。原発発電コストもLNGなどより高い。原発優位の政策の見直しを求める(RIEF) |

「日本経済研究センター」が福島事故処理費用を試算。総額50兆~70兆円で、政府見通しの3倍。廃炉処理不可能の場合は、さらに増大。原発発電コストもLNGなどより高い。原発優位の政策の見直しを求める(RIEF)

2017-04-03 14:57:11

NRC1キャプチャ

 

 日本経済新聞系の公益社団法人日本経済研究センター(岩田一政理事長)は、東京電力福島第一原発事故の処理費用を総額50兆~70兆円とする試算結果をまとめた。政府推計の3倍以上になる。同試算は「福島原発の廃炉ができる」との前提で、もし廃炉が出来ない場合は、費用はさらに増大する。また、政府は原発はもっとも安価な電源と主張しているが、同センターは、現状でも石炭、LNG火力発電を上回るとしている。政府の「原発優位」政策が経済的に成り立たないことを強調している。

 

 福島原発の処理費用ついて、経済産業省は昨年12月に、廃炉・汚染水処理、賠償、除染の合計の費用額として22兆円との推計を公表している。この推計に基づいて、国民負担として2.4兆円を電気料金に上乗せすることを法改正ではなく、閣議決定で決めている。残りのうち16兆円分は東電の収益と、政府が保有する東電株売却益で対応、さらに除染は2兆円分を国費や他の電力等で分担するなどとしている。

 

 これに対して同センターは、東電収益等で16兆円を調達するという計画は、電力小売自由化の市場下では容易ではなく、その場合、株売却も不可能と指摘。そうなると、仮に処理費用が経産省試算通りの22兆円である場合でも、国民負担は増大するとしている。

 

 その上で、経産省の22兆円試算の根拠が不正確な点を指摘している。まず除染について、最終処分が未定で、六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物処理と同様に処理すると、処理費用は経産省の8兆円の見積もりから、4倍近い30兆円になるとしている。同様に汚染水処理もトリチウムを含めて処理する場合は4倍の32兆円となる。

 

 汚染水処理について、トリチウム含有のまま海洋放出すれば、費用は11兆円まで下がる。その場合の漁業関係者への補償は40年継続下場合で3000億円と推計。センターは「海洋放出が有力」としている。

 

 センターの試算は、「福島原発の廃炉ができる」ことを前提にしている。ただ、現実は事故原発の内部がどうなっているかも把握できていない。最悪の場合、チェルノブイリ原発のように「石棺」化して、永久管理せざるを得ないケースも想定されるとし、その場合は、永久管理費用や、帰還させた住民への新たな賠償や移住問題などが必要として、処理費用がさらに増大するとの見方を示している。

 

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    経産省が主張し続ける「原発は最も安価な電源」という点についても、同センターは“虚構”であることを暴いている。原発の建設費用は福島事故後、英国では2倍に上昇しているが、経産省の試算は従来のまま。センターは「福島事故を経験した日本の方が安全性は重視され、コストがかかる可能性が高い」として、経産省試算の2倍とはじいている。

 

 その結果、原発の発電コストは政府試算(総合エネルギー調査会)の1kWh当たり10.3円から40%強高い14.7円となり、石炭火力やLNG火力を上回った。さらに、経産省試算は原油価格を2014年平均の1バレル105ドル、円相場は1㌦=105円としているが、現行の原油価格50ドル、円相場110円で再試算すると、火力やLNG発電のコストはさらに1~4割下がる。また太陽光などの再生可能エネルギー発電も固定価格買い取り制度(FIT)の見直しでコストが低下し続けており、「原発の経済性は極めて不透明であり、現状でも既に競争力がないと思われる」と結論付けている。

 

 こうした分析を踏まえて、同センターは①福島原発事故の原因究明と安全基準確立②除染、賠償、廃炉の将来試算を早急に③原発の過酷事故に対する国家補償の保険制度の確立④原子力技術を官民で存続させる「原子力事業集中管理機構」の設立⑤温暖化ガス削減目標の再検討⑥高レベル放射性廃棄物・最終処分場を2030年までに確保ーーなどを提言している。

 

http://www.jcer.or.jp/policy/concept2050.html