HOME |昨年の世界の新規再エネ投資、前年比23%減の一方で、追加発電量は過去最高。再エネ事業の経済効率性向上を立証。日本は再エネ政策の“失敗”で新規発電量も減少。UNEPなどの共同調査で判明(RIEF) |

昨年の世界の新規再エネ投資、前年比23%減の一方で、追加発電量は過去最高。再エネ事業の経済効率性向上を立証。日本は再エネ政策の“失敗”で新規発電量も減少。UNEPなどの共同調査で判明(RIEF)

2017-04-10 20:43:49

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 国連環境計画(UNEP)などによると、昨年中の世界での新規の再生可能エネルギー投資額は、前年比23%減の2416億㌦だった。この大幅減少は、再エネコストの低下によるもので、導入設備による追加発電量は前年比8%増の138.5GWと過去最高。日本は政府の制度変更などの影響で、投資額は前年比56%減と、コスト低下分を上回る大幅減となり、世界の再エネ投資増の潮流から遅れつつある。

 

 調査はUNEPとUNEP協力センター・フランクフルト・スクール、ブルームバーグNEFの3社が共同でまとめた。

 

 それによると、2016年中に新規に建設された再エネ発電所の発電総量が過去最大の138.5GWとなったにもかかわらず、投資額が大幅減少したのは、大きくみて二つの要因があったと分析している。ひとつは、太陽光や、洋上、陸上両方の風力発電等の技術革新によって、太陽光と風力を合わせた再エネ発電の平均資本コストは1kW当たり前年比10%以上低下したほか、再エネ全体の発電コストの経済性が向上した点だ。

 

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 もうひとつは、いくつかの国で政策の“失敗”が影響した点がある。そのうち代表的なのが日本だ。固定価格買取制度(FIT)を担当する経済産業省が、太陽光発電の買い取り価格を毎年引き下げを続けたほか、17年4月から大規模太陽光を入札制度に変更するなどの政策リスクが顕在化したため、市場の投資意欲が減退したという。

 

 また世界最大の潜在的再エネ市場である中国市場も、再エネ事業へのファイナンスの提供が鈍化するなどの影響が市場の伸びを抑えたとみられる。再エネ技術の進歩による価格低下というポジティブな影響を全体的に反映させた市場と、政策リスクが新規投資への警戒感を高めた個別市場の混在が昨年の特徴でもある。

 

 しかし、グローバルな潮流としては再エネ発電の伸長が顕著だった年といえる。新規の電力投資の過半数の55%は再エネ発電によって占められたのも初めてだ。再エネ発電の導入量は化石燃料発電のほぼ倍になった。この結果、世界の電力供給に占める再エネ発電(大規模水力を除く)の比率は、前年の10.3%から16年は11.3%へと、着実に1%ポイント増加した。再エネ導入の増加で、CO2の排出量は1.7G㌧削減されたと推計される。

 

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 先進国と途上国に分けてみると、2013年くらいまでは、投資環境の整った先進国市場が中心だった。だが、途上国での温暖化対策が広がって来たこともあり、15年は途上国への投資が初めて上回る逆転現象が起きた。ただ16年は先進国への投資が1250億㌦(前年比14%減)で、途上国の1166億㌦(同30%減)を再び上回った。11年連続で投資額が伸び続けていた中国市場が32%減の783億㌦にとどまったほか、南アフリカ、メキシコ、チリなどが政策面での遅れなどで60%減以上の低下をしたことなどが大きかった。

 

 先進国は日本を除けば、総じて堅調だった。米国の前年比減少率は平均を下回る10%減の464億㌦。オバマ前大統領が再エネ発電への税制支援を5年間延長したことが効果があった。欧州はコスト低下に加えて、洋上風力などへの投資意欲が強く、全体で3%増の598億㌦と伸びた。特に英国の240億㌦(1%減)、ドイツ132億㌦(14%減)などがけん引役となった。日本はすでにみたように56%減の144億㌦にとどまった。

 

 再エネの種類別では、太陽光発電への投資が1137億㌦と最も多かった。投資額はコスト下落で前年比34%減と大きく下がった。再エネ価格の低下は、各国が実施する入札価格にも明らかに反映している。昨年中では、チリの太陽光発電で1MWh当たり29.10ドル、モロッコの風力発電で同30㌦(日本のFITでは商業用太陽光が2017年度は1kWh当たり28円=1MWh換算では28000円)などの低コスト化が実現している。

 

 新規の太陽光の発電量は前年の56GWから34%増の75GWに急増した。ついで風力への新規投資は1125億㌦で、太陽光とほぼ同水準を維持した。前年比伸び率は9%減。ただ、新規発電量は54GWで前年の63GWから15%ほど減少した。これは再エネのコスト低下効果が太陽光ほど風力には効かなかったといえる。風力のうち陸上のコストがあまり下がっていないためだ。今後、洋上風力へのシフトが加速するとコスト低下効果が顕在化するとみられる。

 

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 その他の再エネでは、バイオ燃料は37%減の22億㌦で過去13年間でもっとも少なかった。バイオマス発電と廃棄物発電は68億㌦、小水力は35億㌦、地熱発電は27億㌦、海洋利用の発電は1億9400万㌦など。

 

 再エネへのファイナンスは順調に推移している。多くの国で投資家はクリーンエネルギー部門への投資需要が強く、同分野での企業・事業合併は前年比17%増の1103億㌦にのぼった。購入されたメガソーラー事業やウィンドファームなどの再エネ事業の額は過去最高の727億㌦に達した。再エネ関連企業への買収も58%増の276億㌦に達した。

 

 調査メンバーの一人であるフランクフルトスクールの Dr. Udo Steffens氏は「既存のメガソーラーやウィンドファームに対する投資家の旺盛な食欲は、世界が再エネ事業にシフトしている強いシグナルを意味する」と説明している。

 

 またBNEF の会長のMichael Liebreich氏は「ここ数年の再エネコストの急激な低下により、仮に各国で現在投じられている再エネへの補助金や政策支援がなくても、太陽光や風力などは、既存の化石燃料発電に比べても低い価格で発電できる国が増えている。途上国でもそうした国が出てきた」と指摘、「再エネの新しい世界」が拓けてきた、と展望している。日本はそうした中で、唯一、「出遅れ国」のままで推移するのだろうか。

http://web.unep.org/newscentre/more-bang-buck-record-new-renewable-power-capacity-added-lower-cost

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