HOME10.電力・エネルギー |主要国際金融機関37行の石炭等化石燃料関連融資、2016年は前年比22%減。日本勢は過去3年ではMUFG、過去6年ではみずほFGがトップ。国際NGOらが調査報告(RIEF) |

主要国際金融機関37行の石炭等化石燃料関連融資、2016年は前年比22%減。日本勢は過去3年ではMUFG、過去6年ではみずほFGがトップ。国際NGOらが調査報告(RIEF)

2017-06-22 21:16:34

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  国際環境NGOのRainforest Action Network (RAN)など主要NGOグループは、世界の主要銀行37行について、石炭などの化石燃料産業への融資状況を評価した報告書を公表した。融資総額は2016年は総額870億㌦(約9兆6500億円)で、前年比22%下がった。日本の3メガバンクは2016年だけで総額7970億円、2014年からの3年間では2兆2400億円の融資額。このうち、みずほフィナンシャルグループは2011年からの合計が4兆円超と、他の日本勢より突出して多いことから、NGOらは同グループを「無責任銀行ジャパン大賞」に選定した。

 

 報告書は「banking on Climate Change 2017」で、RANのほか、BankTrack、シェラクラブ、Oilchangeが合同でまとめた。それによると、主要金融機関が、石炭火力、石炭鉱山、タールサンド、深海掘削油田、北極圏油田、輸出用LNGの各部門へ貸し出している額を評価した。対象産業・事業への2016年の融資総額が総額870億㌦(約9兆6500億円)で、15年の1110億㌦(12兆3200億円)よりも22%下がったのは、15年のパリ協定合意に加え、石炭火力発電等の採算の低下、投資家を中心にDivestment運動が高まり、銀行の石炭関連融資の基準も強化されてきたこと等が影響したとみられる。

 

 ただ、14年からの3ヵ年でみると、化石燃料分野への貸し出し総額は2900億㌦(32兆1900億円)と、依然、膨大な額に達している。また、タールサンド、北極圏海底油田、深海海底油田など、環境影響の大きい石油開発は、3ヵ年で1056億㌦(11兆7299億円)を占めるなど、引き続き環境負荷の増大に歯止めはかかっていない。

 

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  タールサンド向け融資の多いのはカナダのRoyal Bank of Canada(RBC)、深海油田開発には米国のJP Morgan Chase、北極圏油田はドイツ銀行などと、それぞれ得意分野の金融機関が主導し、他の金融機関が協調融資等で参加する形がとられている。

 

 16年の石炭鉱山向け融資は、対象銀行全体で155億5800万㌦で、前年比35%減と大きく下がった。Divestment運動の広がりが影響した可能性がある。しかし、一方で、同年の石炭火力発電所向け融資は前年比30%増の303億4600億㌦と、逆に大きく伸びている。3ヵ年で見ても、石炭火力向けは毎年増加基調にある。融資リターンの大きい石炭火力は銀行にとって、依然、有望な貸出先になっていることがうかがえる。

 

 3ヵ年合計の融資総額では、中国銀行(bank of China)が220億9700万㌦でトップ。次いで中国の建設銀行(210億5100万㌦)で、上位6位までに4行が中国勢。中国の石炭燃料依存が膨大であることを物語る。日本勢では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MIFG)が91億3200万㌦で13位、みずほフィナンシャルグループが73億2900万㌦で16位、三井住友フィナンシャルグループが37億4900万㌦で23位と続いている。

 

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  日本の3メガバンクについて、さらに2011 年からの総融資額をみると、みずほFGが384億㌦超で、MUFGの255億㌦、SMFGの190億㌦を大きく引き離している。みずほFGの対象金融機関は、みずほ銀行、みずほ証券、みずほ信託銀行、千葉興業銀行などが入る。環境NGOらは、みずほFGの国際分野での化石燃料関連融資が2014年以降で60%も増加しており、パリ協定採択以降で、日本勢の中で唯一、融資増となっていることなどから、同行を「無責任銀行ジャパン大賞2017」の対象に選んだ、と発表した。

 

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 報告書は各金融機関の融資額や融資姿勢等を、化石燃料の部門ごとにスコアリング評価して、A~Fの格付けを付けている。このうち、問題が全く無いAはどの金融機関も得られなかった。「落第」を意味するFは、日本の3メガバンクと、中国の4行がそろって付けられた。

 

 また、今回は化石燃料関連融資の評価に加えて、人権擁護に関する銀行融資の問題点についても調査を行った。昨年は、米国の先住民族の権利を無視した形で勧められたダコタ・アクセス・パイプライン・プロジェクト(DAPL)への金融機関の融資問題がクローズアップされた。DAPLへの国際融資の是非については、国際プロジェクトファイナンスの環境・社会課題を金融の視点で解決を目指すエクエーター原則があるが、DAPLについて同原則の趣旨を無視した形となったことで、金融機関側の今後の対応が求められている。

 

http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2017/06/BankingOnClimateChange_summary_JP.pdf

https://drive.google.com/file/d/0B_ZcMvgwe8Z1dmZMWjE0aTFYNVU/view

 

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