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「2017年サステナブルファイナンス大賞」受賞企業インタビュー⑥地域金融賞受賞の常陽銀行。「公益信託で環境保全のための地域貢献活動を支援」(RIEF)

2018-03-22 17:11:12

jyoyobankキャプチャ

 

 2017年サステナブルファイナンス大賞の地域金融賞は常陽銀行が受賞しました。受賞理由は、1992年から同行が継続している「エコーいばらき」環境保全基金の活動です。基金創設からの25年間で、県内で1000件を超す環境活動に、総額1億2100万円の助成金を提供、地域の環境活動を地道に支えて来ました。田所喜久雄氏(営業推進部総合金融サービス部室長)らにお聞きしました。

 

 (写真は、サステナブルファイナンス大賞地域金融賞の賞状を受け取った常務取締役の西野英文氏(左))

 

――そもそも、常陽銀行が環境活動支援の基金を設立したきっかけは何だったのですか。

 

 田所氏:実は、1992年にブラジルのリオで、地球サミット(環境と開発に関する国連会議)が開催されることが決まり、93年には茨城県で全国都市緑化フェアも開催されるなどのイベントが相次ぐ環境下でした。そこで、銀行としても地球社会の一員として、市民の環境活動を、積極的に支援したいとの思いがスタートですね。

 

 また茨城県は緑化フェアのほか、94年には第6回世界湖沼会議を開催するなど、環境に関する関心が非常に高い県なのです。霞ケ浦の環境保全に関する市民活動や、調査研究なども盛んです。また県北地区と筑波地区は日本ジオパークに認定され、渡良瀬遊水地や涸沼もラムサール条約の登録湿地に指定されています。つくば市は内閣府の「環境モデル都市」に選定されています。こうした緑豊かな茨城県を地元の銀行としても、息長く支えていきたいと思って活動を展開しています。

 

インタビューに答える左から、三村氏、田所氏、米川氏
インタビューに答える左から、三村氏、田所氏、米川氏

 

――公益信託を利用された理由は。

 

 田所氏:銀行が直接、寄付活動をやるよりも、自分たちも参加する形の仕組みが望ましいと考えました。公益信託だと、われわれが受託者(信託会社)に財産の運用を委託して、公益性を明確にして支援活動ができます。そこで、92年に日本火災保険(現、損保ジャパン日本興亜)と第百生命(現、マニュライフ生命保険)と共同で設立しました。

 

 追加型(募集型)にしたのは、基金に賛同していただける取引先企業や、行員からも寄付を受けることができるためです。行員からの寄付は本店・支店の各部門で行員の社会貢献活動として今も、定着しています。現在の基金は、委託者が当行と損保ジャパン日本興亜で、受託者は三菱UFJ信託銀行です。

 

――助成対象事業はどんなところが多いですか。

 

 田所氏:助成活動は年間100件、金額にして1000万円を目標にしています(2016年度は97件、994万円)。対象分野は大きく4つの分野があります。まず、茨城県内における自然環境、生活環境の保全活動。次いで、環境の保全活動を促進するための調査研究。それから、環境の保全活動を普及啓発する活動と、持続可能な開発のための教育。それに、災害復旧・復興支援にかかわる活動(環境保全に限る)も対象です。

 

 災害復旧・復興支援にかかわる環境保全活動は、2011年の東日本大震災で県内の各所も被害を受けたほか、15年の関東東北豪雨災害では鬼怒川決壊で、常総市で大きな被害が出ました。これらの復旧関連の環境活動を今も支援しています。災害関連への助成は16年度までに33件、総額4,460,000円となっています。また多いのは、小中学校での環境学習の支援や、環境活動の発表会への助成などですね。

 

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――環境活動への助成事業を続けることでの地域や顧客との関係で、何らかの変化や手応えはありますか。

 

 田所氏:1件当たりの助成金は上限30万円と決めています。少額ですが、継続的な活動には10年も続けているものもあります。われわれが支援した先が、その活動を評価されて、多くの表彰を受賞したりしています。たとえば、茨城県立土浦第二高等学校(日本水大賞)、いばらき森林クラブ(全国育樹活動コンクールで農林水産大臣賞)、水戸市立上大野小学校(自然環境功労者環境大臣賞)などです。我々の支援が、世間での評価につながったともいえ、うれしい限りです。

 

 米川比奈氏(営業推進部総合金融サービス室):われわれも、助成金を出すだけでなく、助成先団体や市町村による地域でのイベントに、行員が一緒になって参加する活動も行っています。まさに「地域貢献」です。ちなみに、公益信託の名称に入っている「エコー」の言葉は、エコロジー(ecology:環境)とエコー(echo:反響)を組み合わせたもので、環境保全活動が多くの市民にこだまして広く広がり、長く取り組まれていくという意味をこめています。

 

――長年の環境面の地域貢献活動を、銀行の本来業務にどうつなげてこられましたか、あるいは今後どのような展開を目指していますか。

 

 三村泰央氏(経営企画部広報室):実は、2008年に「JOYOエコ定期2008」を2ヶ月間、キャンペーンとして取り扱いました。これはお客さまが定期に預金していただくと、預入額の0.05%相当額から1000万円までの当行が負担して、環境保全活動に取り組む団体に寄付する仕組みです。その際、当基金にも一部(100万円)を追加拠出しました。同預金の募集総額は200億円を早期に達成しました。

 

 同預金は、現在は扱っていませんが、環境に貢献する本業の活動としては、昨年11月から今年の2月末までの期間で、「通帳アプリ」キャンペーンをしています。これは通帳を冊子のものから、ウェブに切り替えていただくことで、紙資源を節約するとともに、ウェブ口座に切り替えていただいた件数に応じて、当行が環境保全団体に寄付するというものです。これもお客さまに好評でした。

 

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 米川氏:基金とは別に、太陽光発電事業支援の融資制度「LALAサンシャイン」も実施しています。茨城県は日照条件も良く、2016年度の同制度による融資額は440件、190億円でした。今年度も順調です。銀行が取り扱い手数料の0.2%を地域に寄付するCSR私募債の扱いも、年間で110億円取り扱いました。

 

 三村氏:地域創生ということでは、地域の起業家支援のための「創業専用融資」のほか、「地域創生ファンド」「クラウドファンディング」なども扱っています。革新的・創造的な新事業プランを募集・表彰するビジネスプランコンテストの「めぶきビジネスアワード」を毎年開いて、地域の元気な起業家の発掘に務めています。アワード受賞企業に対しては、ファンドからリスクマネーを投資して支援を継続します。茨城には元気な起業家が多いと思います。

 

――最近では、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)のプロジェクトにも参加されたと聞きました。

 

 萱津拓也氏(地域協創部次長):同プロジェクトは、筑波大学と当行、つくばウェルネスリサーチ、それにタニタヘルスリンクの各機関がコアメンバーとなってスタートしています。地域の人々の健康を高めることで、医療費・介護給付費を抑制することを目指しています。SIB事業は、すでに神戸市や八王子等で取り組まれていますが、今回の取り組みの特徴的な点は、住民の健康管理意識の高い兵庫県川西市、新潟県見附市、千葉県白子町を広域連携する点です。

 

 金融機関としての取り組みは、ヘルスケアサービス事業者の事業活動への投融資ということになります。経常費関連の融資と、業績連動部分への投資資金の提供などが期待されます。健康増強の評価については、筑波大学が評価指標を開発します。具体的な活動の進展はこれからですが、金融機関としても、地域住民の方々の健康・生活管理などの活動にも積極的に加わって行きたいと考えています。

 

                                                  (聞き手は、藤井良広)