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三井住友信託銀行、海運業界の気候変動対策を推進する金融イニシアティブ「ポセイドン原則」に署名。日本勢初。船舶ファイナンス・ポートフォリオ全体のCO2排出量削減努力を公表(RIEF)

2020-03-13 12:28:05

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   三井住友信託銀行は、海運業界の気候変動対策を支援する金融機関の取り組みである「ポセイドン原則(The Poseidon Principles)」に署名した。日本の金融機関としてだけでなく、アジアでも初の署名となる。署名金融機関は、国際海事機関(IMO)が定める国際海運の温室効果ガス(GHG)削減目標や対策に沿い、船舶ファイナンス・ポートフォリオ全体のCO2排出削減努力貢献度を算出、公表を求められる。

 

 国際海運からのCO2排出量は世界全体の2.2%。海運業界はCO2排出だけでなく、Soxやその他の汚染物質の大気、海洋への排出削減を求められている。一方で、世界貿易の約90%が海運に頼っており、重要な経済機能を担っている。こうした機能を維持しつつ、海運業界のGHG削減を迅速に進めるため、金融機関が主要海運会社との協力に基づいてポセイドン原則を立ち上げた。

 

 原則は2019年6 月に、グローバルに船舶ファイナンスを手がける欧米主要金融機関11行が創設した。創設行はシティ(Citi)、Societe Generale(ソシエテ・ジェネラル)、DNB、ABN Amro、Amsterdam Trade Bank、Credit Agricole CIB(クレディ・アグリコル)、Danish Ship Finance、Danske Bank、DVB、ING、Nordeaなど。これらの銀行で世界の船舶融資の約20%を占める。http://rief-jp.org/ct6/90904

 

海運業はグローバル経済の「動脈」
海運業はグローバル経済の「動脈」

 

 原則は、①気候変動への適合性評価(Principle 1: Assessment of climate alignment)②説明責 任(Principle 2: Accountability)③実行(Principle 3: Enforcement)④透明性(Principle 4: Transparency)の 4 原則で構成される。署名機関は原則を順守し、順守状況の開示を求められる。

 

 原則の創設に際しては、世界の主要海運会社も賛同しているほか、Global Maritime Forum、Rocky Mountain Institute、UCL Energy Instituteの専門機関による技術支援も受けた。

 

 署名金融機関は、自らが手掛ける船舶ファイナンスポートフォリオのCO2排出削減努力の達成度を公表する。ポートフォリオのCO2総排出量を削減するため、個別の融資に際して海運会社向けにCO2削減を働きかけることが期待されている。一方、温暖化対策に積極的に取り組む海運会社は、取り組みに見合った安定的な資金を得ることができる。

 

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 英UCLの研究によると、IMOの目標を達成するには、GHG排出量がゼロあるいは低水準の燃料への転換のほか、よりクリーンな技術を用いた新たな船舶の設計開発等が必要になる。これらの温暖化対策投資だけで、2030年から50年にかけて、累計で1兆~1兆4000億㌦、年平均で500億~700億㌦規模の投資が必要と推計している。

 

 金融機関はこうした「温暖化対策需要」に資金供給することで、海運会社のGHG削減を支援するとともに、新たなファイナンス機会を拡大することにもなる。日本勢として初参加の三井住友信託銀行は、2021 年度から原則に基づく排出削減努力貢献度の算出を開始する予定。

 

  同行は、「ポセイドン原則への署名を通じて、国内の海事クラスターの一員として、またグローバルに船舶フ ァイナンスを展開する金融機関として、顧客企業の事業活動を支援するとともに、海運業界の気候変動リスク対応に貢献することを目指す」とコメントしている。

 

https://www.smtb.jp/corporate/release/pdf/200313-2.pdf

https://www.poseidonprinciples.org/