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三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)TCFD提言のシナリオ分析で、移行リスクは2050年までで最大2700億円、物理リスクは380億円。3メガバンクの自己試算出そろう(RIEF)

2020-10-19 14:34:45

MUFG00333キャプチャ

 

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、TCFD提言に基づく気候変動リスク対応のシナリオ分析結果を公表した。移行リスクは単年度ベースで約10億~90億円、2050年までの累積で最大2700億円、物理リスク(水害)は累計で380億円と試算、「与信ポートフォリオへの影響は限定的」としている。プロジェクトファイナンス向けの石炭火力発電融資は、現在35億8000万㌦(約3800億円)を抱えるが、2030年度に半減、2040年度メドに一部を除いてゼロにするとの方針を示している。

 

  「MUFGサステナビリティレポート2020」の中で公表した。移行リスクのシナリオ分析は、国際エネルギー機関(IEA)が公表している「持続可能な開発シナリオ(2℃シナリオ)」と「新政策シナリオ(4℃シナリオ)」を前提とし、各シナリオによる信用格付への影響分析と、与信ポートフォリオ全体への財務インパクトを分析した。

 

 物理リスクについては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)モデルに基づくRCP2.6(2℃シナリオ)とRCP8.5(4℃シナリオ)を前提に、水害発生時の被害推計を分析した。いずれも2050年までの影響を推計した。

 

 その結果、移行リスクは単年度ベースで2050年までに10億~90億円、累計で300億~2700億円、水害に絞った物理リスクは380億円程度と推計した。これらの結果について、MUFGは「移行リスク、物理リスクとも、今回のシナリオ分析では、与信ポートフォリオへの影響は限定的」と評価している。

 

 すでに三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)とみずほフィナンシャルグループは同様のシナリオ分析結果を公表している。3メガバンクの2050年までの移行リスクはほぼ3000億円、物理リスク(水害)は300億~500億円という水準で出そろったことになる。https://rief-jp.org/ct1/98662

https://rief-jp.org/ct1/102701

 

RIEF調べ
RIEF調べ

 

 

 一方、石炭火力発電への新規融資については、原則、実行しない方針を決めているが、現在の石炭火力向け融資残高(プロジェクトファイナンス)は、2019年度末時点で35億8000万㌦となっている。これを2030年度に半減、40年度にゼロにすると公約している。

 

 ただこの点については、環境NGOの350org等は、公表の石炭火力向け融資残高はコーポレートファイナンス向けの融資を含んでいないほか、新規融資停止方針には、超々臨界圧石炭火力(USC)向け融資や途上国政府の事情によって例外を認める内容になっていることから、不十分、と批判している。https://world.350.org/ja/press-release/201016/?fbclid=IwAR1NNqsShCgONqJY-ZWfPmHKZGoO8DlNvOqVDJG4U3B9zxSwiQ3i5xOonPA

 貸出ポートフォリオに占める炭素関連資産については、エネルギーセクター向けが2020年3月末時点で、2.8%(前年は3.0%)、電力等のユーティリティセクター向けは3.4%(同3.6%)で、合計6.2%(同6.6%)としている。総額6兆1400億円になる。

https://www.mufg.jp/dam/csr/report/2020/ja_all.pdf