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国内金融機関、輸入燃料依存のバイオマス発電への投融資の取り組み、大半が情報開示せず。ガイドラインありと回答した金融機関は3社のみ。環境NGOの調査で判明(RIEF)

2021-02-02 12:32:16

FOEキャプチャ

 

  生物多様性保全を脅かす懸念のあるバイオマス発電に対する投融資について、資金供給元の国内金融機関の多くが、不十分な管理と情報開示にとどまっていることが、環境NGOの調査でわかった。環境NGOのFoE Japanが国内449社の金融機関に対して実施した調査に対して、59社しか回答せず、バイオマス発電事業に融資・出資の実績・予定ありと回答した金融機関は9社のみだった。投融資先企業のESG関連の情報開示が求められる中で、金融機関自身の情報開示等の体制整備の不十分さが浮き彫りになった。

 

 (写真は、森林資源の大量伐採を展開する米エンビバ社の燃料加工工場に運び込まれる木材等:米南東部で)

 

 FoE Japanは、金融庁に届出のある主要な金融・保険企業、合計449社を対象にして、2020年12月から2021年1月にかけ、融資の際のバイオマス発電の持続可能性の確認に関するアンケート調査を実施した。その結果、回答があったのは59社(回答率13%)にとどまり、バイオマス発電事業に融資・出資の実績もしくは予定があるとした回答は9社だけだった。

 

 これまでの各金融機関の報道資料等では、発電事業への出資を明らかにしている金融・保険企業はもっと多い。しかし、そのほとんどからは回答がなかったという。

 

 回答企業の業態別では、銀行は120行中4行、信用金庫は255社中54金庫、生損保66社は回答ゼロ、リース等その他8社もゼロ。匿名1社だった。投融資額が多いとみられる銀行の回答率の低さが目立った。

 

 投融資実績があると回答した9社のうち、8社は「実績がある」、2社が「予定がある」(うち1社は実績もあり)と回答した。回答のあった59社のうち、ガイドラインを有する企業は3社、ガイドラインがない企業は55社、未回答が1社。投融資実績・予定ありと回答した9社のうち、ガイドラインを有していたのは2社のみだった。ガイドラインを有する3社のうち2社は、ガイドラインにGHG排出や森林減少・劣化評価に関する内容を含んでいると回答した。

 

 バイオマス発電は、植物が成長段階でCO2を吸収するため、燃料として使ってCO2を排出しても、ライフサイクルではカーボンニュートラルになるとして、再生可能エネルギーに分類される。しかし、FoE Japanによると、国内で相次いで建設される大規模バイオマス発電所の場合、燃料の大半を、海外からのパーム油、パーム椰子殻(PKS)、木質ペレットに依存しており、燃料生産地における生態系破壊や森林減少・劣化、人権侵害など多くの環境・社会課題を抱えているという。

 

 今回のアンケートで、投融資の実績があると回答した企業8社の場合、8社すべてが、投融資に際して、燃料調達計画を確認していた。また7社は、投融資後も燃料調達の状況を確認していた。さらに5社は、環境影響評価(自主的なものも含む)の有無を確認していると回答した。ただ、燃料の第三者認証(FSC等)の取得確認については、5社が「確認していない」と回答した。

 

 FoE Japanは、「今後、金融機関との対話を通じ、大規模に燃料を輸入するバイオマス発電事業の問題点等を共有し、投融資にあたっての気候変動・生物多様性・人権等の持続可能性や環境社会基準の策定などを働きかけていきたい」としている。

https://www.foejapan.org/forest/biofuel/210201.html