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消えてしまった?日本版環境金融行動原則起草委員会(FGW)

2011-04-26 21:46:29

環境省の肝いりで、昨年来、議論が進められていた「日本版環境金融行動原則」の策定作業が、いつの間にか、見えなくなっている。原則案を練ってきた起草委員会は、3月16日に予定していた第五回会合が東日本大震災で中断して以降、他の会合や委員会が再開ペースに入っているのに対して、こちらは音沙汰が全くない。とん挫したのは地震の影響ではないとの声も聞こえてくる。

同原則づくりは、環境金融を推進しようという金融機関を一堂に集めて、日本の金融らしい(?)環境金融行動原則を宣言しよという金融機関の自主的行動である。ポスト京都以降の温暖化交渉の枠組みに沿って、国内でも温室効果ガス削減や省エネ、節エネなどの事業への資金供給を活発にしようという狙いがある。国際的には国連環境計画(UNEP)の金融イニシアティブ(FI)や、責任投資原則(PRI)、プロジェクトファインスのエクエーター原則などが知られる。これらに対して、日本の原則案は、銀行だけでなく、証券、保険、資産運用などの業態を網羅し、さらに中小金融機関も参画できるような包括的な枠組みを目指してきた。

地震の影響で第五回紀草委員会が延期になったままだが、実はその前の2月の第四回会合で、事実上、行き詰まり状態に陥っていた。その原因はタイトルにあった。当初からの原則のタイトルは「環境金融」。ところが、第四回会合でいきなりタイトルを変更して「サステナブル金融」になった。http://financegreenwatch.org/jp/?p=340

環境だけではなく、社会性やガバナンスなどのESGを踏まえた、より高位な概念のサステナビリティを目指すべきだという、原案作りのワーキンググループによるものだった。確かに、一般企業のCSRも、ESGを踏まえたサステナビリティを柱に据える例が日本でも増えている。また環境経営という言葉よりも、サステナブル経営、CSR経営と、幅広に捉えられるようにもなっている。

しかし、金融機関にとって、特に社会性への配慮を原則としてコミットすることは、容易ではないようだ。サステナブルを押し立てるワーキングの面々と、「とりあえず環境で」という難色グループの綱引きは、どちらかというと難色グループのほうが、少なくとも数では上回っていた。金融機関にとって社会性となると、融資先が支払い困難に陥った際の回収問題に微妙に絡んだり、社会性をたてに、強引に取引を迫られたりしないかという懸念のほうが先に立つようだ。

したがって、第五回会合で、これらの問題にどう決着がつくのか、注目されていた。しかし、どうも妙案はなかったようで、ワーキンググループはむしろ地震による中断によって助けられた格好のようだという。とはいえ、いつまでも中断のままでいいわけではない。日本が抱える最大の課題である地震対策、原発の放射能対策のいずれも、環境の回復、コミュニティの復興などへの資金供給が求められている。原発に代わる風力発電、太陽光発電プロジェクトへの期待も高まっている。

難色グループに配慮して、タイトルを再び「環境金融」に戻すか、あるいはサステナブルの意味を薄めて、原案通りの「サステナブル金融行動原則」とするか。しかし、あいまいなまま、あるいは形だけだと、それこそ原則自体がサステナブル(持続可能性)ではなくなってしまう。

会合がいつ復活するのかということと、委員長の末吉竹二郎氏、さらには推進してきた前環境事務次官の小林光氏らのかじ取りが注目される。