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【私論 エネルギー・環境戦略 エネルギー投資の動向は】原発は巨大な不良資産  グリーンピースのダロス氏(共同)

2012-09-06 17:43:00

原発への投資は金融機関にとっての重荷になりつつあると話すグリーンピースのギョルギー・ダロス氏
発電所の建設資金など、投資の動向がエネルギー開発の将来を決める大きな要素の一つとなる。原子力や再生可能エネルギーへの投資の現状や将来について内外の専門家に聞いた。

原発への投資は金融機関にとっての重荷になりつつあると話すグリーンピースのギョルギー・ダロス氏



 発電コストが安い、と言われた原子力発電だが、原子炉建設には多額の費用がかかり、事故対策費用も巨額になる。環境保護団体、グリーンピースのシニア・アドバイザー、ギョルギー・ダロス氏は、原発への投資リスクは大きく、結果的に投資家に大きな損失をもたらすと指摘する。
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 ―日本の金融機関や投資家は、原発に巨大な投資をしてきたが。

 「2000年から11年にかけて社債や株式の購入などの形で多数の大手金融機関が540億ユーロの資金を、低金利で東京電力に提供してきた。東電の株価が事故後に急落したという事実だけを見ても、これらの投資家が巨額の損失を受けたことは明白だ」

 ―原子力への投資は有利だとされていたが。

 「原発への投資が有利だとされてきた背景の一つは、彼らがコストやリスクを過小評価し、それを費用に算入してこなかったからだ。廃棄物処理のコストも将来世代に回されている。福島のような巨大事故の発生確率も過小評価されてきた。原子力産業は、研究開発支援や補助金などさまざまな形の政府からの援助、つまりは税金による支援を受けてきた。実は原子力への投資が大きなリターンをもたらすものではない」

 ―福島事故の影響はどうか。

 「原子力産業支援のため自ら原発の売り込みをするような政治家への目は厳しくなっているし、日本をはじめとする各国で政府の財政状況が悪化し、政府からの資金も先細りするだろう。大事故の発生確率がこれまで考えられてきたよりも高いことが明らかになったし、各国で安全規制が強化されて、廃炉になる原子炉が増え、稼働率も下がれば利益はどんどん縮小する。事故を起こせば経営母体の資産の100倍を超えるような損害をもたらす財産は原発だけだ。多くの投資家や金融機関にとって原発は潜在的な不良資産となりつつある」

 ―企業への影響は。

 「特に老朽化した原発で大事故の危険性が増大していることなどへの警告は福島の事故前にあったが、金融アナリストやアドバイザーはその警告に耳を貸さず、誤った評価をしていた。だが、事故後にはさまざまな形で見直しが進んでいる。事故前には世界第4位だった東電株価の時価総額は90%も減り、多くの原発を抱える電力会社や関連企業の株価も軒並み暴落している。市場での資金調達はどんどん困難になるだろう。早期に原発から撤退し、再生可能エネルギーなどの成長分野への投資に向けるべきだ」(聞き手 共同通信編集委員 井田徹治)

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 GYORGY DALLOS 69年ハンガリー生まれ。エコノミストとして多くの銀行やコンサルタント企業での勤務を経て、11年から現職。

http://www.47news.jp/47topics/e/234251.php