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脱原発は可能か。「十分可能だと思う」西川善文三井住友銀行顧問が断言。先の読める経済人は日本にもいる

2011-05-26 22:10:34

nishikawazenbun
(日経のビジネスリーダーの西川善文氏の経営者ブログから):東日本大震災による福島原発の大事故の発生以来、あちこちで脱原発の議論が起きている。結論からいえば、私は一定の時間軸をおいて、国を挙げて様々な対策に取り組めば、脱原発は十分可能だと思う。国民生活の安心、安全が第一義であるから、原発事故の再発不安が完全になくなる、あるいは不安をミニマイズしていくためには、今のところ脱原発に向けて我が国のエネルギー政策の舵(かじ)を大きく切っていくしかない。


 しかしながら我が国の現状は、電気エネルギーの30%を原子力に依存しているのだから、本気で進めるのであれば、脱原発を「中長期の目標」として、その達成のための対策を強力に実行していく必要がある。




 その対策のまず第一は、家庭、企業、その他すべての電力利用者が、それぞれ目標を定めて節電を確実に実現していくことである。そのためには、節電状況の可視化が不可欠である。この夏は、15%の節電が要請されているが、この節電目標が達成できるかどうかは一つの試金石となるであろう。この夏の節電が実現できれば、次は年間を通じて節電を常態化し、定着させていくことであろう。




 そのためには、なぜ国を挙げて節電が必要であるか、国民の信頼が得られる国のトップ(総理大臣)が、分かりやすい言葉で、メディアを通じて全国民に訴えることである。大多数の国民の信頼が得られていないトップが訴えても効果がないことは言うまでもない。




 また、国民も企業もこぞって取り組まなければならない課題であるから、自分ひとりくらいとか、わが社1社くらいとかといった甘えを許してはならない。従って、目標を一定期間オーバーした家庭や企業に対しては、ペナルティーとして電力料金の値上げや一定期間の送電停止をしてはいかがか。

第二に、代替エネルギーの開発である。太陽光発電、風力発電、バイオマス発電・熱利用、コージェネレーション、燃料電池、廃棄物発電など様々なものがある。既存の発電方法と比べコストなどで課題も抱えているが、それぞれの地域の特性や所要電力量に応じて活用すれば大きな効果が期待できる。


 金融機関に身を置いた立場から言わせてもらえば、第三に挙げるのは、金融機関の協力とリーダーシップである。




 この点に関しては、信用金庫として最大級の城南信用金庫(東京)が、震災後いち早く発出した「脱原発宣言」には、全金融機関が見習うべき点がある。




 要点は、「福島の原発事故は、我が国の未来に重大な影響を与えている」「原子力エネルギーは、一歩間違えば取り返しのつかない危険性を持っている」また「それを管理する政府機関も企業体も万全の態勢をとっていなかった」「原子力エネルギーに依存することは、あまりにも危険性が大きい」と指摘したうえで、地域金融機関として今、できることは、ささやかではあるが、省電力、省エネルギー、そして代替エネルギーの開発に少しでも貢献することではないかとして、同信用金庫として考えられる省電力、省エネルギーのための様々な取り組みに努めるとともに金融支援を通じて、地域の顧客の省電力、省エネルギーのための投資を支援すると宣言した。そしてまず手始めに、省電力のために10万円以上の投資を行った個人を対象に1年定期の利息を1%(通常0.03%程度)に引き上げる「節電プレミアム預金」を始めると発表した。




 金融機関がここまで働きかけるのは異例である。城南信用金庫のこの英断は、原発依存から脱却するため再生可能な代替エネルギーへシフトする意識の大転換に貢献すると評価される。国として脱原発に取り組むのであれば、こうした動きが大銀行をはじめ全金融機関に波及することを期待する。