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世界初のカーボン規制リスク保険を、英ロイズ保険組合の東京海上日動系保険会社が開発(Bloomberg)

2011-05-30 21:21:15

 東京海上日動火災の傘下にある英国ロイズ保険組合所属の保険会社Kiln社は、欧州連合(EU)が温暖化対策で導入しているキャップアンドトレード(C&T)市場で売買される排出権(カーボン)クレジットについて、欧州委員会が政策変更をした場合に、取引参加者が被る規制リスクをカバーする初の保険引き受けを始めた。

  この保険の対象は、EUが新たな規制を提案したり、規制を実施する場合を想定している。Kiln社のアドバイザーでもある Parhelion Underwriting Ltdの代表、Julian Richardsonは、「われわれは、規制リスク・プレミアムにふさわしい保険を提供できるようになった」と述べている。通常、規制当局の提案はカーボン市場でのルールが適用されるよりも数カ月も前に提起される。保険料は対象となる取引総額の3~8%という。

 規制リスクの事例は次のようなものである。欧州委員会は昨年5月、C&T取引参加者が、温暖化係数が二酸化炭素(CO2)の11700倍のHFC23の削減で法外な利益を得ることを抑制するため、HFC削減プロジェクトからのクレジットを2013年5月から禁止する提案をした。この規制案は今後、欧州議会などの審議を経て、このままいくと、今年後半に法律となる。

しかし、この規制は300億ユーロ(430億ドル)もある既存のカーボン・クレジットの価値を脅かす。国連は2005年以来、、36億ユーロ分のクレジット(先週のクレジット価格)をHFC23削減プロジェクトから認めている。その市場規模は国連の炭素市場の45%に相当する。欧州委員会の昨年5月の提案後、ロンドンの国際先物取引所の2010年12月カーボン先物価格は、昨年5月3日には14.53ユーロだったが、同12月10日には11.35ユーロへと22%も下落した。

 EU加盟国代表で構成する欧州気候変動委員会は今年1月21日、この禁止を勧告した。そうしたら今度は、2011年12月分の先物価格が19%上昇し、先週には13.03ユーロとなった。

すでにKiln社は先月、世界初の炭素クレジット適格性保険商品を、ある国際銀行に販売した。保険会社側は、この保険が既存のカーボンクレジット向け投資のポートフォリオをカバーするものか、それとも新たな取引のリスクをカバーするものかは、明らかにしていない。しかし、新たな規制が施行された場合に保険金の支払いが保証されるのは間違いない。

ただ、Kilnの spokeswomanである Laura Guerinによると、欧州委員会が新たな規制の提案をする場合は、かなり想定されることなので、それらをすべて保証対象とするのはリスクが非常に大きい、と述べ、、カバー範囲を限定する可能性も示唆している。

先のRichardsonは、この保険の保険料がいくらになるかは、カーボン削減プロジェクトのホスト国と、削減にどの技術が用いられるか、さらにはリスクをカバーする期間によって決まる、と説明する。例えば、EUは後発開発途上国での削減プロジェクトを優先するため、途上国の中でも相対的に豊かな中国での削減プロジェクトからのクレジットの場合はリスクが高くなる、という具合だ。

  EU法の改正という規制リスクが、突如、カーボン・クレジットや途上国でのCER(認証排出削減量)などの価値を失わせ、市場の手控え要因のひとつになる。「われわれが提供する保険は、通常の保険商品だが、それを全く新しいビジネス分野に提供したということだ。われわれがこれまで環境エネルギー野領域で培った保険技術を、カーボンクレジットと政治リスクの領域での技術を結合させたものだ」。KilnのPaul Culhamは、こう言って胸を張った。