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機能するか、「サステナブル行動原則」~起草委員会で異論続出(FGW)

2011-02-22 17:59:15

2月22日に開いた「日本版環境金融行動原則委員会」の第四回会合で、事務局側から「行動原則(案)」が公表された。同日の会議ではこの案をめぐって意見が交わされたが、表題が「環境金融」から「サステナブル金融」に代わったことをめぐり、参加した委員の間から異論が続出した。

名称を変更したことについて、ドラフトを作成した金井司・住友信託銀行CSR担当部長は「個別のガイドラインでの運用ではESG(環境、社会、ガバナンス)中心になってくるので、(原則が)環境だけだとESGに言及しにくい。赤道原則やクラスター爆弾向け融資禁止措置などの金融の個別行動にすでに社会的テーマが織り込まれつつある」などを理由に挙げた。

これに対して、「内容には異論ないが、ソーシャルな部分は今後の課題として考えていた。環境だとわかりやすい」(京葉銀行)、「前文の最初に『貧困』が出てくるのは違和感がある。最初は気候変動など環境のほうがいいのでは」(日本興亜損害保険)、「あえて『サステナブル原則』とうたわなくても、ガイドラインのほうで(サステナブル関連は)やるという二段階にしてはどうか。環境金融で賛同する金融機関を集めて、そこからやるほうがやりやすい」(三井住友銀行)、「「環境に(加えて)社会も入れると、実際の実施面でやっていけるか不安。各論でよりシャープにやっていくなら、入り口は(環境で)絞ったほうがいい」(第一生命保険)、「我々規模の小さなところは、入口は狭くてステップを踏んでいくほうが進めやすい」(オリックス信託銀行)、「個人的にはサステナブルもいいが、具体的な行動をするとなると迷う。(サステナブルとすることで)行動しないことの理由になってしまうと本末転倒にもなるので、(環境に)絞るほうがいい」(野村ホールディングス)等。

会議で特別講演の形でスピーチしたアンドレ・アバティ氏(元ABNアムロ、弁護士)は、サステナブルの重要性を強調した。同氏は講演において以下のような趣旨を述べた。

世界的な経済と金融の潮流において、ESGの問題への対処の必要性が高まっている。その為、世界各国の金融部門の成長と事業の成功は、ESGの問題への対応によって成否が変わってくる。この潮流は、日本の金融部門にとっても例外ではなく、ESGの問題への対応を行うことが、国際的な競争力の確保につながる。このような状況だからこそ、ESGの原則(フレームワーク)を作るチャンスである。そして、このような原則を策定し、機能させるにはいくつかの成功要因があり、政府の政策に基づく原則の場合は、「Process」「Commitment」「Implementation」「Reporting」が重要となる。サステナビリティの道は、すぐに目標到達できるものではないが、まずは取り組みを始めることが大切である(要約のみ)。

委員長の末吉竹二郎氏は「わざわざ集まって議論をするのは、少し先を示すものであることが重要。今やっていることの再確認に重きを置くのか、金融が社会を先導することが金融自身のサバイバルにつながるのではないか」などと説明した。

(各発言は、委員会会場での聞き取りに基づく)