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メガバンクの東電向け無担保融資 不良債権への追い貸しの疑い(FGW)

2014-05-01 00:44:05

金融庁も東電向け「不良債権」は”お目こぼし”(?)
金融庁も東電向け「不良債権」は”お目こぼし”(?)
金融庁も東電向け「不良債権」は”お目こぼし”(?)


三井住友銀行など大手銀行や信託銀行は、東京電力向けの融資を約650億円を、従来の担保付から無担保融資に切り替えて継続した模様。無担保になると東電は資金使途の自由度が高まる。しかし、東電向け融資を、不良債権の一部である「要注意先債権」に分類している融資金融機関もあり、金融危機時には禁じられていた「不良債権先への”追い貸し”」となった可能性がある。

 

東電への融資を無担保に切り替えたのは、三井住友銀のほか、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行の大手4行。東電は、このほかの大手生命保険などの金融機関からの融資についても、借り換え期限がきた後は、無担保に切り替えたい方針。

 

各金融機関の融資は、東日本大震災以降、社債発行ができなくなった東電の資金繰りを支援するため、政府の要請もあって、実施されてきた。しかし、東電の賠償責任負担や廃炉費用の増大などで企業としての存続が不明なことから、融資に際して各金融機関は発電所などの東電資産を担保とする融資としていた。

 

今回の無担保化は、東電の強い要請に加えて、安倍政権による国の東電支援の拡大で、無担保化しても貸し倒れとなるリスクは低いとの判断で一致したためという。ただ、完全に東電の”倒産リスク”が消えたわけではないことから、各金融機関は融資期間を6カ月に短縮し、以後は東電の経営状況に応じて融資継続を判断する形で、貸し倒れリスクを最小限に抑える方針。

 

1月に認定された東電の新しい総合特別事業計画(再建計画)では、これまで東電が負担してきた除染や中間貯蔵施設の費用を国が分担する規定が盛り込まれた。除染等の費用は際限なく膨らんでいるため東電の経営の先行きが読めない原因にもなっていた。国の分担によって、そのリスクが軽減されることになった。

 

ただ、東電の経営が中期的に安定するには、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が焦点だが、その見通しは依然として立っていない。これらの不安定要因はあるものの、金融機関が融資を継続することで資金面の不安が解消し、東電の経営再建にもつながるとの判断に立ったものとみられる。

 

しかし、多くの金融機関は東電向け債権を不良債権の第一段階である「要注意先」に分類しているとみられる。また担保をはずすことで、破綻リスクが高まるのは間違いない。政府の除染等の費用分担は銀行債権を直接保証するものでもない。従来ならば、こうした不良債権については、むしろ担保を追加徴求するか、金利の引き上げなどによって焦げ付きリスクへの備えを厚くするのが普通。

 

それを無担保化して融資を継続したり、新たに融資をしたりするのは、金融危機時に禁じられていた「追い貸し」に類似する。東電の福島第一原発処理が支障をきたすと、一気に東電の経営が行き詰まるリスクは続いている。そう考えると、銀行を監督する金融庁が、こうした実質的な”追い貸し”をどう評価するのかが気になる。金融監督行政も東電向けは”別扱い”ということなのか。