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サステナブルファイナンス大賞キーパーソンに聞く②。三井住友信託銀行・堀井浩之リサーチ運用部長「国内株アクティブ運用評価にESGインテグレーション」(RIEF)

2016-02-22 13:02:47

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  三井住友信託銀行は、2015年のサステナブルファイナンス大賞で優秀賞を受賞した。同年から始めた「国内株アクティブ運用へのESGインテグレーション」が評価された。同行の堀井浩之リサーチ運用部長に取り組みの経緯や成果などを聞いた。

 

――日本の銀行として初めてESG評価を株式運用に本格的に取り込みましたね。

 

堀井:当社は2003年からESG評価と取り入れたSRIファンドで実績を上げてきました。こうした基盤の上に、2015年、企業の付加価値やサービスの持続的な成長、それらを支えていく実際のガバナンスの強固さなどを評価するための手法を独自に開発し、これを株式運用でのアクティブリターンの向上と、ダウンサイドリスクの低減を目指して、運用情報の中に取り入れました。これを「ESGインテグレーション」と呼んでいます。

 

――決断の背景は何だったのですか?

 

堀井:昔も今も企業評価は財務情報が中心ですが、当社は「企業の競争力源泉を見極める」ために、ESGという言葉がない頃から非財務情報の分析に注力してきました。その意味では当社のリサーチ活動自体が極端に変わったわけではありません。ただ、スチュワードシップ・コードの導入によって、われわれから事業会社に向かって「持続可能な企業価値向上への取り組み」を意見表明していく状況になり、非財務情報、当社ではESG情報と同義としていますが、この重要性が高まると考えてESG情報の評価手法を開発しました。

 

――ESG情報の評価手法の特徴を教えてください。

 

堀井:われわれは非財務情報を、ほぼESG情報としてとらえています。E、S、Gそれぞれの情報を投資機会につながる「オポチュニティ項目」と、企業価値に影響する「リスク項目」に分けて整理した場合、E、Sのオポチュニティ項目、たとえば環境関連投資や海水淡水化投資、あるいは介護の支援ロボットなどはビジネスとして成立しているものがあり、こうした分野の評価は企業の将来業績数字に置き換えることができます。

 

一方、ESGの各リスク項目やGのオポチュニティ項目は具体化する時間軸が見え難く、数字でも表しにくいものです。そこで、こうした財務情報で置き換えができない項目を定性的な分析でスコアリングして「見える化」したのです。

 

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――スコアリングはどのようにやるのですか。

 

堀井:当社では「経営」、「事業基盤」、「市場動向」、「事業戦略」の4分野に分けてスコア化しています。評価の詳細項目は全部で50項目あり、たとえばリーダーシップが優れているとか、資本の効率性についての経営者の姿勢とかになります。ただ、これらは定性評価のため個人差が大きくなりやすく、これではファンドマネジャーが「うん」と言いません。そこで意識したことが二つあります。一つは評価項目をできるだけ網羅的にすることで、個々のアナリストの目線・評価軸があまりブレないようにしました。

 

 もう一つは「何がその企業の本当の強み(アルファ)なのか」が判るようにすることです。スコア化でありがちな「全項目への点数付与」をしてしまうと、企業の強みを埋没させてしまう恐れがあります。そこで当社では、例えば「リーダーシップが優れている」が格段に優れていると判断した場合、それだけで「経営」の分野を満点にしてもいいということにしています。

 

――良いパフォーマンスをあげている企業は、その特徴があるということですね。

 

堀井:そうですね。尖った強みを持っている企業は中長期的に企業価値が向上するので、良いパフォーマンスに繋がると思います。なお、ESGスコアは各業種の担当アナリストが付与するので、業種内序列は簡単に見ることはできるのですが、業種を問わず全銘柄を比較することは容易ではありません。当社では、各業種のトップ企業を横串比較することで比較可能な状態に加工して、全銘柄の序列ができるように工夫しています。

 

――東芝のような不祥事が出た場合はどう評価しますか。

 

堀井:われわれとして大事なことは、まずは起きた出来事の実態把握をしっかり行なうこと。その上で、会社側がどのような再発防止策や管理体制の整備をしていくのか、それを組織の末端までどのように浸透させていくのか、という点を見るのがポイントだと思います。投資はあくまで未来志向ですから。

 

 

http://www.smtb.jp/csr/ri/evaluation.html