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サステナブルファイナンス大賞キーパーソンに聞く①日本政策投資銀行・松田知樹財務部長。「SRI債(グリーンボンド)毎年発行へ」(RIEF)

2016-02-19 20:57:59

SFADBJキャプチャ

 

 環境金融研究機構(RIEF)は先に発表した「第一回サステナブルファイナンス大賞」で、5つの金融機関を選出した。受賞した各金融機関のキーパーソンに、活動内容の紹介とともに、今後の展開を聞いた。第一回は、サステイナビリティボンドの発行で大賞(優秀賞)を受賞した日本政策投資銀行(DBJ)の松田知樹財務部長。

 

――サステイナイビリティボンドの前には、一昨年にグリーンボンドも日本の金融機関として初めて発行しましたね。

 

松田:DBJは長年にわたって、投融資の分野で環境への取り組みを行ってきました。まず2004年にDBJ環境格付融資を創設しました。これは環境への取り組みの優れた企業に低利で融資を行う制度ですが、この12年間で累計約490社、約8,400億円(2015年12月末)の融資を行っています。

 

 もう一つのDBJ Green Building認証制度は2011年に開始しました。これは環境面で優れた配慮を行っている建物に対して評価及び認証をする制度で、4年間で累計約260件、約4000億円(2015年9月末)の融資を行っています。こうした投融資面での実績を資金調達に活用したのが、今回のサステイナビリティボンド。一昨年のグリーンボンドと合わせてDBJ社会的責任投資債(SRI債)と位置づけています。

 

――ボンドの発行はいつごろから考えていたのですか。

 

 松田:実は欧州投資銀行(EIB)が2007 年に気候変動債(Climate Awareness Bond)を出した時から、SRI債を活用した資金調達を考えていましたが、実際の発行までには結構時間がかかったというのが実感です。今回、二年続けてSRI債の発行に踏み切れたのは、第一に、海外で環境投資に対する投資家のニーズが非常に高くなってきた点があります。第二は、何がグリーンかということや、債券で調達した資金の使途を確認する手順などの枠組みを標準化したグリーンボンド原則(GBP)が、一昨年初めに示されたことが大きかったと思います。

 

 DBJキャプチャ

 

 

――グリーンボンドの認証の仕組みも広がっています。

 

松田:二つのSRI債はいずれも第三者認証機関のオピニオンを取得しています。外部の評価機関から債券がGBPのプロセスに合っているかどうかのオピニオンを得ることで、SRI債の資金使途が適切であることを投資家にわかりやすく説明することができたと思っています。「何がグリーンか」ということは、こうしたオピニオンによって投資家にわかるようになっており、マーケットの拡大に貢献しています。発行体そのものに対するグリーン格付の議論も一部にあるようですが、当行がIRをしている中では欧州の投資家などはオピニオンを重視しているように感じています。

 

――今回のボンドの投資家層は。

 

 松田:いずれも社会的責任投資の意識の高い欧州投資家をメインターゲットとして、ユーロ建てで発行しています。両方とも、投資家としては、環境投資を意識的に行う「グリーン投資家」と呼ばれる欧州の機関投資家などが60~70%を占め、新しい投資家層を獲得できたことが当行にとって最大のメリットとなりました。

 

――現在は、円建てで債券を出す市場環境ではありませんが、長期的にみて「円建てグリーンボンド」発行の可能性はどうですか。

 

松田:日本での長期投資の市場づくりは、まさに当行がやろうとしていることです。ただ、今は円の金利がこれだけ低下しているので、金融商品としてのニーズが高くないというのが実態です。したがって当行はむしろ外貨で発行することで日本の投資家にも魅力あるものにできるのではと考えている面もあります。

 

今後も、対象となる資産の積み上がり状況によりますが、年に一回はSRI債を継続的に発行したいと考えています。今後は、当行が取り組んでいるDBJ BCM格付融資やDBJ健康経営格付融資など、さらなる資金使途の拡大も積極的に検討していきたいと思っています。

 

――SRI債を個人向けの投資信託のような形で販売することは考えられますか。

 

松田:当行の商品としては個人向けのものはまだありませんが、いずれ、いろいろなことを考えていきたいと思っています。世界銀行が日本市場においてグリーンボンドを販売する際、まず個人投資家を対象にして販売してきたといった例もありますが、当行としてはまず、当行自身を日本の個人投資家によく知ってもらってから長期的な観点で対応したいと思っています。

 

http://www.dbj.jp/ir/credit/sri/sustainability/index.html

http://www.dbj.jp/ir/credit/sri/greenbond/index.html