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インドネシア・ジャワ島での日本企業主導の石炭火力発電事業計画。融資予定の国際協力銀行(JBIC)の現地調査直後に事業者側が住民に脅迫等の人権侵害。国内NGO4団体が緊急要請(RIEF)

2016-03-10 20:48:16

 

  日本のNGOのFoE Japan、インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワークの4団体は、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討中のインドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業問題で、JBICが環境社会面の現地調査を実施した直後に、事業者による新たな人権侵害が起きているとして、安部首相、麻生財務相ら宛の緊急要請を行った。

 

  
 焦点となっているインドネシア・バタン石炭火力発電事業は、日本の電源開発(Jパワー)、伊藤忠商事、インドネシアのアダロ・パワーの3社が出資して設立したビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)を事業主体として、ジャワ島中部のバタン州に1000MWの超々臨界圧方式の石炭火力発電を2 機建設し、インドネシア国有電力会社(PLN)に25年の長期契約で売却する計画。

 

 JBICはBPIが融資調達する約27億㌦の60%にあたる約16億㌦を融資する計画だ。また民間銀行も1年間のつなぎ融資として、三井住友信託銀行、三菱東京UFJ銀行など、邦銀が中心になって総額2億7000万㌦を融資する予定になっている。

 

 ただ、農業や漁業を中心にした生活をしている地域の住民らは、超大型の石炭火力が建設されると、農地の収用や海への廃水などで、生態系が変化し、農民と漁民の主要な生計基盤が失われとして、反対を表明している。しかし、土地収用や生計手段喪失にどう対処するのかという点についての住民協議や補償計画書の提案等がなされないまま、2011年からBPIは土地売却交渉を始め、農作業等にすでに影響が出ている都される。

 

 こうしたことから、反対派住民らは、これまでもJBICをはじめ、日本の関係企業等への陳情を繰り返してきた。一方で、NGOによると、現地では、事業者側が雇ったとみられる警備員や暴力団ら、さらに国軍・地元警察などによる反対派住民への脅迫活動も相次いでおり、インドネシアの国家人権委員会からも、「警官や国軍兵士が土地売却交渉から撤退すべき」との勧告が出されているという。

 

 住民らは昨年7月、農業、漁業など生計手段への影響や事業者側の人権侵害の増加を懸念して、JBICへの異議申立てを行なうとともに、改めてJBICに融資を拒否するよう求めた。このためJBICは「JBIC環境社会配慮ガイドライン」に則った適切な環境社会配慮が行われているかの確認作業に入り、その一環として3月初めには現地調査を実施した。その際、異議申立てを行なった住民らとも会合を持って、話を聞いた。

 


 しかし、このJBICと住民間の会合終了直後の今月4日、事業者側は未売却の農地への住民のアクセスを遮断する行動に出た。事業予定地では土地の売却を拒否している約60名の農民らが、依然として耕作を続けており、収穫期を控えているため、農作業に入らざるを得ない。農民らは、事業者側の措置は農民に自分の農地での収穫もさせず、締め出そうとする新たな脅迫・強制行為だと非難している。

 


 NGOらは、事業の融資調達期限が4月6日に迫っているが、事業者側にはJBICガイドラインに則った適切な環境社会配慮を実行し、人権に配慮しようという意思が明らかに欠如している、と指摘。JBICには融資拒否の判断をとるよう求めている。

 


 以下、NGOからの要請書。
>PDFはこちら
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2016年3月7日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様

インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業
JBIC現地調査直後に起きている人権侵害に係る緊急要請


 

 現在、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討中の「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業」について、JBICは『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(以下、ガイドライン)に基づく環境レビューの一環として、2016年3月1日に同事業に反対する住民らとの面談を実施されました。同面談では、住民からさまざまな人権侵害の報告がなされたため、JBICが事業者に事実関係を確認し、人権配慮とガイドラインに則った適切な対応を求めるものと私たちは期待しておりました。ところが、JBICが帰国した直後に、未売却の農地へのアクセスを巡り、現場で新たな人権侵害が起きていることが明らかになりました。具体的には、以下のような問題です。



 これまで、未売却の農地への自由なアクセスが制限されている、あるいは、通常とは異なるルートで遠く迂回して農地に行く必要があったものの、事業者によって事業予定地周辺に張り巡らされたフェンスの数箇所が開放されていることで、曲りなりにも通行可能な状態にはなっていました。



 しかし、現地住民からNGOに寄せられた情報によれば、JBICが反対派住民と面談して間もない同年3月4日から、開放されていた箇所についても事業者側がフェンスを設置し、未売却の農地へのアクセスを完全に遮断する作業を始めたとのことです。また、同作業に伴い、農作物の一部が踏みつけられたり、土で埋められるなどの被害も出ているとのことです。同作業の現場には、事業者の警備要員、警官等が同行し、農民は抗議しようにも為す術がない状況に晒されています。



 事業予定地では土地の売却を拒否している約60名の農民らが、依然として耕作を続けており、収穫期を控えている農地も多くあります。彼らは、上記3月1日の面談のなかで、事業者による生計手段の回復措置は効果的でないという考えを示しており、土地の売却にも補償措置にも合意せず、今後も農民として生活を継続していく堅い決意を示していました。

 

 また、農地へのアクセスや水供給の制限が、地権者に精神的なプレッシャーをかけて土地を売却させようとする事業者側の脅迫・強制行為の一つであるとも説明していました。今回のような農地へのアクセスの完全な遮断は、農民に収穫もさせず、農地から締め出そうとする事業者側の新たな脅迫・強制行為です。



 しがたって、私たちは、以下のとおり、日本政府・JBICに緊急要請をさせていただきます。



(i) 3月1日の反対派住民との面談後、JBICが未売却地へのアクセスについて、事業者に確認した内容、および、事業者に求めた対応について明らかにすること。
(ii) 3月4日から事業者側が未売却地へのアクセスを完全に遮断する作業を行なっているという住民からの報告について、早急に現場での事実確認を行ない、農地への自由なアクセスの確保や被害を受けた農作物に対する補償等、しかるべき対応を事業者に求めること。事実確認は、事業者を通じてのみではなく、JBIC自身、もしくは、第三者を通じても行なうこと。



 同事業については、これまでにもさまざまな人権侵害が指摘され、改善が求められてきましたが、今回のように、JBICの現地視察直後においても、事業者が地権者・農民の人権を尊重するどころか、人権侵害を繰り返し、かえって事態が悪化している状況は大変憂慮すべき事態であると考えます。このように事業者やインドネシア政府側に、JBICガイドラインに則った適切な環境社会配慮を実行しようという意思、ひいては、人権に配慮しながら問題解決を図っていこうという意思が明らかに欠如しているような事業に対し、巨額の私たちの公的資金が投じられるべきではありません。



 JBICガイドラインでは、「環境レビューの結果、適切な環境社会配慮が確保されないと判断した場合は、適切な環境社会配慮がなされるよう、借入人を通じ、プロジェクト実施主体者に働きかける。適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる。」と規定されています。現在、同事業の融資調達期限が4月6日に迫っておりますが、ガイドラインの同規定にもあるとおり、環境レビューの結果を融資の意思決定に反映し、同事業への融資拒否という賢明な判断をとっていただけますようJBICに要請致します。



以上


国際環境NGO FoE Japan
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/160307.html