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インドネシアのバタン石炭火力発電所建設問題 現地で工事開始の報道。環境NGOは「住民合意なしの農地アクセス封鎖に抗議」 緊急要請書を提出 (RIEF)

2016-03-27 11:32:57

indonesiaキャプチャ

 

 インドネシアのジャワ島中部バタンでJパワーや伊藤忠商事などが出資、国際協力銀行(JBIC)などが融資する日本官民主導の大型石炭火力発電所事業の工事が、4月1日に始まる、との報道が流れた。

 

 同事業計画には、地元住民が農地の収用や発電所の環境汚染を嫌って反対を続け、着工が約3年半遅れている。今回の報道では土地収用のメドがついた、としている。

 

 しかし、環境NGOのFOEによると、反対運動を続けている住民たちは、「事業者が地権者・農民の合意もないまま、未売却の農地へのアクセス経路を完全に封鎖した」と反発しているという。

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/160325.html

 

 同事業には、JBICが約21億円を融資するほか、三井住友信託銀行、三菱東京UFJ 銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の日本の大手銀行と、シンガポール DBS 銀行、シンガポールOCBC 銀行等が融資団に加わっている。その融資調達期限が4月6日に迫っているという。

 

 日本の各銀行は、今回のような大型発電所やダムなどを対象とするプロジェクトファイナンスの環境・社会的影響を、事前に評価するエクエーター原則に署名している。

 

 現地住民からの要請を受けて、日本のNGO4団体(国環境NGO FoE Japan、インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク)は、25日、日本政府・JBICに対し、緊急要請書を提出した。

 

 要請書では、JBICに対し、早急に農地アクセス経路を確保するよう事業者に働きかけるとともに、適切な環境社会・人権配慮を怠っている事業者への融資を拒否するよう求めている。

 

 同プロジェクトはインドネシアと日本の官民パートナーシップ(PPP)方式による初の大型発電事業で、総出力は原発2基分に相当する200万kW。発電事業会社のビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)には、Jパワーと地元石炭大手アダロ・エナジー子会社が各34%、伊藤忠が32%出資する。

 


NGOからの要請書本文のPDFはこちら

 

<3月4日以降の現場の状況>


 写真:事業者はすでに事業予定地周辺をフェンスで囲んでいたが、3月4日までは数箇所が開放されていた。3月4日以降、事業者の警備要員や警察に護衛された労働者(PLNに雇われたと思われる)が、開放箇所の封鎖作業を開始。

 事業予定地内にある未売却の農地で耕作を続ける農民は、自分の農地に行くためフェンス下を通るしかなくなった。3月22日にはフェンス下の隙間もフェンスや柵で封鎖され、通れなくなった(写真撮影:インドネシア現地より)。

 写真:ポノワレン村では、3月23日の時点で、この1箇所のみが開放されていた。フェンスに貼付されたBPIの通知(3月21日付)には、「BPIは、バタン発電事業の地域に設けられている開放箇所が2016年3月24日、フェンスで封鎖されることを通知する。それ以降、事業地へのアクセスは一切禁止される」と記載されている。

3月24日には、この開放箇所もフェンスで封鎖されてしまった。(写真:2016年3月23日、インドネシア現地より)

 

<NGO要請書本文>

2016年3月25日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様

インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業
住民合意なしの農地アクセス封鎖に係る緊急要請
 

 現在、国際協力銀行(JBIC)が融資を検討中の「インドネシア・中ジャワ州バタン石炭火力発電事業」について、私たちは同年3月7日付で「JBIC現地調査直後に起きている人権侵害に係る緊急要請」を提出し、「3月4日から事業者側が未売却地へのアクセスを完全に遮断する作業を行なっているという住民からの報告について、早急に現場での事実確認を行ない、農地への自由なアクセスの確保や被害を受けた農作物に対する補償等、しかるべき対応を事業者に求めること。事実確認は、事業者を通じてのみではなく、JBIC自身、もしくは、第三者を通じても行なうこと」を日本政府・JBICに要請しました。

 しかし、3月24日に事業者が事業予定地周辺に張り巡らされたフェンスの開放箇所を完全に封鎖してしまったとの報告が、現地住民から寄せられています。これは、農民が未売却の農地、つまり、彼らの生活の糧にアクセスするための経路を一切絶たれたことを意味します。

 私たちは、前回の緊急要請以降、2週間強が経つなか、地権者が売却を拒んでいる農地への自由なアクセスが確保されることもなく、状況が一向に改善されていない現状について、深い憂慮の念とともに、強い抗議の意を示します。日本政府・JBICは、農民の生計手段を維持するとともに、現場での無用な衝突や不測の事態を回避するためにも、早急に未売却の農地への自由なアクセスを確保するよう、事業者に求めるべきです。

 JBICは、「3月24日に開放箇所を封鎖し、それ以降は事業地へのアクセスを一切禁止」する旨を記した3月21日付の事業者による通知を事前に認識しており、JBICから事業者に対しては、『環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン』(以下、ガイドライン)に則った、適切な環境社会配慮を行なうよう、働きかけが行なわれてきたはずです。

 それにもかかわらず、フェンスの開放部分が封鎖され始めた3月4日以降、農民のなかには、農地へのアクセスを阻害されたため、フェンス下の隙間を通って、農作業に出かけざるを得ない状況も見られました。また、現在、フェンス下の隙間も封鎖されており、農民は完全に農地へのアクセスを絶たれた状況となっています。

 彼らは事業者による生計手段の回復措置は効果的でないという考えを示しており、土地の売却にも補償措置にも依然として合意していません。このように、事業者が地権者・農民の合意もないまま、一方的に3月24日という日付を設定し、彼らの生計手段を奪うような行為は、ガイドラインに著しく違反していると考えます。

 また、事業者やインドネシア政府側に、JBICガイドラインに則った適切な環境社会配慮を実行しようという意思、また、人権に配慮しながら問題解決を図っていこうという意思が明らかに欠如していると言えます。

  前回3月7日付の緊急要請の繰り返しになりますが、JBICガイドラインでは、「環境レビューの結果、適切な環境社会配慮が確保されないと判断した場合は、適切な環境社会配慮がなされるよう、借入人を通じ、プロジェクト実施主体者に働きかける。適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる。」と規定されています。

 現在、同事業の融資調達期限が4月6日に迫っていますが、ガイドラインの同規定にもあるとおり、環境レビューの結果を融資の意思決定に反映し、同事業への融資拒否という賢明な判断をとるよう、JBICに強く要請します。

以上


国際環境NGO FoE Japan
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/batang/160325.html