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格付け機関のS&P。気候変動が金融機関に及ぼす影響分析。法的、規制、評判リスクなどへの対応が重要。保険会社は直接コストも増加(RIEF)

2016-05-16 10:02:56

S&P1キャプチャ

 

 格付け機関のS&Pは、気候変動の深化により金融機関機関が被るリスクを分析したレポートをまとめた。特に、気候変動による保険金支払増加という直接のコスト増を被る保険会社の負担は、評判リスク、規制リスク、訴訟リスクで増加するとしている。

 

 気候変動が金融セクターに及ぼす影響について、国際的な金融監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)のタスクフォースが情報開示の整理を進めている。同タスクフォースが今春まとめた第一次レポートでは、追加開示が必要な気候変動関連の6つのリスクを整理した。

 

 急激な気候変動による急性影響、変動が長期化する慢性影響という2つの物理的リスクのほか、政策/法的/訴訟のリスク、 技術変化リスク、市場・経済の変化リスク、評判リスクだ。

 

 ただ、気候変動が金融機関に及ぼす正確な影響については不確実な面が多い。S&PはFSBの第一次整理を踏まえて、金融機関に与える主な影響を①収入②資産価値下落の引当・減損③オペレーショナルリスク/訴訟④税金(カーボン税等)⑤自己資本充足⑥情報開示–の6分野とした。

 

 S&Pキャプチャ

 

 金融機関のうち、保険会社は気候変動によって保険金支払い増という直接コストを負う。そのコストは、評判リスクへの対応コスト、規制コスト、訴訟リスクによってさらに膨らむ、と指摘している。

 

 しかし、気候変動による潜在的影響を量的に把握することは困難である。仮に十分なデータがあるとしても、各リスクは複層し、不確実性が影響度の推計は容易ではない。

 

 そこでレポートは、気候変動で金融機関が直ちに影響を受けることは少ないが、評判リスク、金融リスク、法的リスクは短期ならびに中期的に増大する可能性があると指摘している。格付けに際して、これらのリスクへの評価を重視する姿勢を示している。

 

 また金融機関が、こうした特定のリスクへの対応を意識することは、本業の金融活動の中で気候変動に向き合うことにつながり、大きなインセンティブになる、と指摘している。気候変動の影響を抑制する経済活動・事業に資金を供給する役割を果たすことになる。

 

 金融機関は経済社会が低炭素社会に移行し、社会を温暖化の影響に、より耐久力・回復力を高める社会を構築するために、必要な資金供給役となることを期待されている。

 

 また、投融資先の企業が持続可能性を高めるための改善・改革への投資力も期待されている。エネルギー産業や農業部門のCO2削減や森林伐採の減少などのための投資も期待される、としている。

 

 ただ、金融機関が社会や企業の温暖化対応へ資金供給する対応が不十分だと、金融機関自身が評判リスクを被るほか、結果的により強い規制を受ける可能性もあると警告している。

 

https://ja.scribd.com/doc/311698033/Climate-Change-Related-Legal-and-Regulatory-Threats-Should-Spur-Financial-Service-Providers-to-Action-04-05-2016