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コーポレートガバナンスコードは、本当に守られているか。国際環境NGOのRANが熱帯林減少に関与する日本の主要10企業の報告と実態を調査。「全社が不十分」と評価(RIEF)

2016-06-01 13:51:53

RAnキャプチャ

 

  国際環境NGOの「Rainforest Action Network(RAN)」は1日、日本の金融庁と東京証券取引所が上場企業に導入を勧奨しているコーポレートガバナンス・コードが、実際に日本企業の持続可能な行動につながっているのかどうかを、10の代表的企業を対象に、東南アジア等での熱帯林減少問題への対処状況を調べる形で調査・評価した。

 

 

 東京証券取引所が、上場企業がガバナンスコードを遵守しているかどうかを調べた統合報告書によると、実に 99% 以上の企業がサステナビリティーとス テークホルダーに関する規則を完全に遵守していると自ら報告 している。ほぼ「完璧」だ。しかし、RANは調査結果から、「それは事実ではない」とし、投資家に注意を喚起している。

 

 texキャプチャ

 

 RANは日本企業が自社の取引先のサプライチェーンや、売買取引部門、それに金融サービスを通じて、熱帯林減少とそれに伴う地域コミュニティで生じている社会的リスクに関連する企業10社を選び、それぞれのコーポレートガバナンスコード報告書を精査した。

 

 対象企業は、パーム油植林や木材、紙パルプ、それらに融資する金融機関等で、①アスクル②不二製油ホールディングス③伊藤忠商事④丸紅⑤王子ホールディングス⑥住友林業⑦三菱UFJフィナンシャル・グループ⑧みずほフィナンシャルグループ⑨三井住友フィナンシャルグループ⑩三井住友トラスト・ホールディングス、の10社。

 

 調査の結果、10社すべてが、報告書上ではステークホルダーとの協力や、サステナビリティ対応を記載している。しかし、対応策のレベルにばらつきがあるうえ、全体として熱帯林を危険にさらす産品と関連するESGリスクに必要な対策がとられていない、と指摘している。

 

 RANは10社すべてが、森林由来産品のサプライチェーンや資金調達に際して、高保護価値(HCV)林と高炭素蓄積林(HCS)の破壊、地域社会との紛争などの重大なESGリスクにさらされている、と評価。これらのリスクを報告書で十分に開示していないとしている。また、ステークホルダーである地域社会を適切に配慮した企業はなく、苦情処理メカニズムを提供した企業も一社もない。

 

 ただ、森林事業の住友林業と王子ホールディングスは、熱帯林リスクのあるサプライチェーンに関するセクター別ポリシーの実施状況についての部分的な情報を開示している。

 

 金融機関では、三井住友トラスト・ホールディングスが、リスク管理の枠組みや投融資先企業へのエンゲージメントの一環として、ESG課題を明示的に検討し、報告している、と評価している。ただ、同社を含め金融機関はいずれも、顧客ベースのESGリスクに対応するためのセクター別の投融資方針を公表していない。

 

 RANは調査結果を踏まえて、多くの日本企業はガバナンスコードに基づく自社のサステナビリティ情報やステークホルダーに対する義務の遵守実態を、「体系的に誤って報告している」か、あるいは「何が意味のあるサステナビリティ情報であり、エンゲージメントであるかについての理解が根本的に欠けている」かのどちらかだ、と厳しく指摘している。

 

 またこうした企業の対応は、コード自体の「落ち度」ではないが、コードとそれを評価する記載要領のあいまいさが、「誤った報告」を促している、とも指摘。検討すべきステークホルダーの範囲や、サステナビリティ課題への対処に際して。どのような措置が適切なのか、さらにどのような情報が開示されるべきかを、明確にすべきと、金融庁と東証にも要請をしている。

 

 RANは企業が、事業活動に伴う環境・社会・ガバナンス(ESG)情 報を開示することは、株主やその他のステークホルダーがその企業の業績と投資可能性を評 価する際の重要な考慮事項になる、と指摘。開示の対象には、企業本体のみならず、取引先のサプライチェーンも含むとしている。

 

 こうした情報を意図的に伝 えなかったり、隠蔽すると、企業が環境や社会に対 する有害な影響と繋がっていることが投資家には伝わらず、投 資家に不測の損失をもたらす可能性がある。そうした影響は、企業活動が、環境やステークホルダーの住民に弊害を与え続けるだけでなく、企業自身のブランドの評判低下、サプライヤー契約の取り消し、サプライチェーンの破壊、操業の遅延、生産停止や法的措置などを引き起こす可能性があると、警告している。

 

http://www.ran.org/shareholders_beware_company_misreporting_on_critical_sustainability_issues_could_cost_you_the_earth