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国際協力銀行(JBIC) インドネシア・バタン石炭火力発電所への融資契約締結。総額34億㌦強。民間と協調融資、民間の政治リスクも保証(RIEF)

2016-06-03 21:31:03

batan3キャプチャ

 

  国際協力銀行(JBIC、渡辺博史総裁)は3日、伊藤忠商事などが主導するインドネシアのジャワ島中部での大型石炭火力発電所建設計画に20億5200万㌦を融資する貸付契約を結んだと発表した。地元住民の反対行動を押し切る形での融資となる。三井住友銀行など9行も追随、融資総額は34億2100万㌦の大型融資となる。

 

 インドネシア・バタン石炭火力発電事業は、伊藤忠のほか電源開発(Jパワー)、インドネシアのアダロ・パワーの3社が出資して設立したビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)が事業主体。JBICの融資は同社に対して行われる。

 

 計画では、ジャワ島中部のバタン州に1000MWの超々臨界圧(USC)方式の石炭火力発電を2 機建設し、インドネシア国有電力会社(PLN)に25年の長期契約で売却する。総事業費45億㌦の大規模プロジェクトだ。JBICは融資総額の6割を貸し付けるとともに、民間金融機関の協調融資分に対して「ポリティカル・リスク」に関する保証を提供する、としている。

 

 同計画に対しては、建設予定地の住民との間で土地収用を巡って摩擦が続いているほか、環境負荷が相対的に少ない超々臨界圧(USC)技術を用いるものの、天然ガス発電に比べてCO2排出量が多いことなどで、地元や環境NGOの反対意見が根強い。また反対派を封じ込めるような暴力事件も発生、インドネシアの国家人権委員会が強く懸念を表明してきた。http://rief-jp.org/ct1/61739

 

 

 この点で、JBICは①事業は日本の高い技術を用いて海外インフラ事業を金融面から支援、日本の産業の国際競争力の維持・向上に貢献する②日本政府の「インフラシステム輸出戦略」と合致③インドネシア初のUSC方式のプロジェクトで、効率的かつ環境に優しい技術導入を実現できる――などを融資決定の理由としている。

 

 協調融資に参加する金融機関の大半は日本勢で、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、新生銀行、農林中央金庫、シンガポールDBS Bank(シンガポール) Oversea-Chinese Banking Corporation(同)の各行。

 

 インドネシアでは経済成長により電力需要が増大していることから、政府は2015~2019年の間に35GWの発電能力増強を目指すなど、電力インフラの整備に取り組んでいる。今回のバタン火力発電所はその一つに位置付けられている。

 

 JBICの渡辺総裁は今月末の退任を前にして、懸案だった今回の案件にゴーサインを出した形だ。ただ、JBICが民間金融機関の政治リスクまで保証する規定を盛り込んだことに対して、今後、新たな議論が起きる可能性がある。

 

  というのは、先に日本が主催して開いた伊勢志摩サミットの宣言で「すべての国に対して非効率的な化石燃料補助金を2025年までに撤廃することを奨励する」との合意が盛り込まれたためだ。JBICの民間金融機関向けの「政治リスク保証」は、一種の補助金との見方もでき、それがサミットの約束年限の2025年を超えて提供されることになる。

 

http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2016/0603-48594