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国際協力銀行+日本のメガバンク3行による インドネシア・バタン石炭火力発電所計画への融資決定に 国際環境NGOのBankTrackが強い不満声明(RIEF)

2016-06-07 16:18:26

Banktrackキャプチャ

 

 国際環境NGOのBankTrack(本部オランダ)は、インドネシアのバタン石炭火力発電所計画に、日本の国際協力銀行(JBIC)とみずほ銀行など日本のメガバンクなどが資金支援を決めたことに対して、「地域住民と気候変動を無視した判断」と批判する声明を出した。特にエクエーター原則(赤道原則)の署名行であるメガバンク3行の融資について、「原則自体の意味が問われる」と強い不満を示している。

 

 バタン火力発電所はジャワ島中部に建設される発電容量2000MWの超々臨界圧方式の石炭火力発電所計画。総事業費45億㌦の大規模プロジェクトで、伊藤忠のほか電源開発(Jパワー)、インドネシアのアダロ・パワーの3社が出資して設立したビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)が事業主体で実質、日本企業による「日の丸プロジェクト」。ファイナンスもJBICのほか、民間金融機関9行のうち、みずほ、三井住友銀行など7行が日本勢。他の2行はシンガポールの銀行。融資総額は34億2100万㌦に達する。http://rief-jp.org/ct1/61827

 

 

 同事業については、豊かな農地の収用をめぐって地元の住民の反対が続き、計画着手が5年も延びてきた。その間、土地収用を巡って事業計画側の人間と、農民の間で衝突が繰り広げられ、インドネシアの国家人権委員会が何度も是正勧告をしてきた。また事業の可否を決める環境アセスメント(事前影響評価)手続きでこうした人権問題が無視されているとの批判も続いていた。

 

 事業には影響を受ける7000以上の村が関心・不安を示し、首都ジャカルタでも抗議行動が展開されてきた。2013年には地元の役所や軍隊が反対派住民を攻撃して多くのけが人を出すという事態まで引き起こしていた。反対派住民たちは強引な土地収用手法への批判のほか、発電所が引き起こす環境変化が、地元の農業、漁業へ悪影響を及ぼすほか、大気汚染物質増大による健康影響を懸念する声も強い。

 

 Greenpeaceが2014年に公表した調査レポートによると、バタン火力発電所が稼動すると、発電所からの有害物質の拡散で年間800人の死者の増加が見込まれ、発電全期間を通すと、3万人に膨れ上がると推計している。また同発電所はアジアでも最大級の石炭火力発電所であるため、建設が完成した2020年以降、毎年1080万㌧のCO2を排出する。

 

 パリ協定ではインドネシアも2030年までに現状よりCO2を29%削減する約束をしているが、同発電所を含めたインドネシアで現在計画されている火力発電所が予定通りに建設されると、むしろ国全体のCO2排出量は増大してしまう。

 

 このためBankTrackのClimate and Energy Campaign Coordinator である Yann Louvel氏は、「この融資は本来、金融機関が重視しなければならない人権保護や持続可能社会の建設へのファインスとは全く正反対の行動だ。銀行は石炭火力への融資の代わりに、インドネシアの再生可能エネルギー事業に融資を振り向けるべきだ」と指摘している。

 

 またBankTrackの代表のJohan Frijnsも、「みずほ、三井住友、三菱東京UFJの3メガバンクはいずれも国際プロジェクトファイナンスに際して、事業の持つ環境、社会、ガバナンス(ESG)の影響を銀行の視点で事前評価するエクエーター原則(赤道原則)の署名行でもあるだけに、今回の融資決定はショックだ。特にみずほは、同原則署名金融機関で構成する『エクエーター原則協会』の前議長金融機関でもあった。もし同原則を適用しても、バタン火力事業のような人権無視の計画にゴーサインが出るようならば、同原則自体の意味が問われる」と指摘している。

 

  BankTrackはエクエーター原則参加金融機関に対して、直接、間接の働きかけを展開しており、今後、日本勢に対する姿勢が厳しくなることが予想される。また、今回のケースで「原則の有効性」が問われる形となったことも、今後の同原則の評価・取り扱いに影響する可能性もある。

 

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