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インドネシアのバタン石炭火力発電問題 OECDの多国籍企業行動指針に基づく国内窓口(NCP)が反対派住民の調査要請を正式受諾(RIEF)

2016-07-28 12:12:31

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 インドネシアのジャワ島バタン石炭火力発電所建設問題で、経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業行動指針に基づく日本政府の国内連絡窓口(NCP)は、インドネシアの住民団体から同事業を推進する伊藤忠と電源開発(Jパワー)両社による人権侵害の調査要求を受け入れた。

 

 インドネシア・バタン石炭火力発電事業は、伊藤忠、Jパワーの日本2社と、インドネシアのアダロ・パワーの3社が出資して設立したビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)が事業主体。JBICはBPIに対して20億5200万㌦を融資する契約を結んだ。

 

 計画は、ジャワ島中部のバタン州に1000MWの超々臨界圧(USC)方式の石炭火力発電を2 機建設し、インドネシア国有電力会社(PLN)に25年の長期契約で売却する。総事業費45億㌦の大規模プロジェクトだ。JBICは融資総額の6割を貸し付けるとともに、日本のメガバンクなどの民間金融機関の協調融資分に対する保証の提供などを行う。

 

 しかし、事業をめぐって、住民の合意がないまま未収用農地へのアクセスを事業者側がフェンスを設置して封鎖し、農民の収穫を妨げるなどの強引な手法や、反対派住民への暴力行為などが指摘されてきた。このため、現地の住民団体Paguyuban UKPWR および支援するGreenpeace やFOEなどの環境NGOは今も反対運動を続けている。

 

 またインドネシアの国家人権委員会も同事業がインドネシアの人権法の規定に抵触すると勧告している。住民たちは、国連の「 ビジネスと人権に関する指導原則(Guiding Principles on Business and Human Rights)」や 「相手国の法令遵守」を規定したJBICガイドラインにも違反している、と批判している。

 

 住民らはすでに、昨年7月29日の段階で、日本企業2社の行動が、OECDの多国籍企業行動指針に違反しているとして、調査を要請していた。しかし日本のNCP窓口を構成する外務省、厚生労働省、経済産業省の3省はこれまで、3ヶ月で終えるべき初期評価調査を完了せず、放置した状態だった。JBICの融資決定後に、ようやく、正式調査を受け入れた形だ。

 

 NCPの調査開始は、直ちに、住民側の主張が受け入れられるというわけではない。ただ、調査は日本政府が恣意的に行うものでもない。OECDの基準との整合性をはかり、基準との合致の有無を説明する回答をしなければならない。

 

 国連の「Guiding Principles」は「人権を尊重する企業の責任」と並んで、「人権を保護する国家の義務」も明記されている。また輸出信用機関の支援を受けている企業による人権侵害に対する義務も規定している。同事業の推進にはJBICの融資供与が不可欠であり、日本政府・JBICは同事業に係る人権保護について大きな義務を有していることになる。

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   伊藤忠の経営を巡っては、金融市場でも話題を集めている。

 CIキャプチャ

    米市場で空売りをする米グラウカス・リサーチ・グループ(カリフォルニア州)は、伊藤忠がコロンビアの炭鉱への出資持分の価値下落にも関わらず、1531億円相当の減損損失処理をせず、2015年3月期の当期純利益を過大報告した可能性があるなどを指摘するレポートを公表した。

 

 レポートが「不適切な区分変更」とし指摘しているのはまず、2011年に米資源大手ドラモンド・カンパニーの持つ権益の20%を取得したコロンビアの石炭鉱山の会計処理。取得後に石炭価格の下落と、ストライキなどで採算が悪化した。伊藤忠は15年3月期に同鉱山への出資分を「関連会社投資」から「その他の投資」に変更した。

 

 レポートはこの処理で伊藤忠は1531億円相当の損失の認識を回避したと指摘する。また、中国最大の国有複合企業、中国中信集団(CITIC)への投資で伊藤忠が出資分を持ち分法適用としたのも、会計操作に当たるという。

 

 もう一つは、持ち分法適用会社である中国食品・流通大手の頂新グループの持ち株会社、新(ケイマン)ホールディングを、伊藤忠は15年3月期に連結対象から外し、同期に約600億円の再評価益を計上したことも、株主を無視した会計操作だと指摘している。

 

 伊藤忠は同レポートの指摘について、「適切な会計処理を実施しており、当社の見解とはまったく異なる」、「単体、連結ともに監査法人トーマツによる監査を受けており、いずれも適正との監査意見を取得している」とするコメントを出している。

 

https://business-humanrights.org/en/indonesia-japan-japanese-oecd-national-contact-point-accepts-complaints-on-batang-coal-plant

http://www.itochu.co.jp/ja/news/files/2016/pdf/160727report5_jR.pdf