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三菱UFJフィナンシャル・グループ FSB規制対応のTLAC債でグリーンボンド発行へ。月内にもTLAC債30億㌦発行、うち5億㌦を「グリーン」に。毎年定期発行も(各紙)

2016-09-06 18:47:45

MUFGキャプチャ

 

 各紙の報道によると、三菱UFJフィナンシャル・グループは世界の巨大銀行の金融危機対策として銀行持ち株会社が発行するTLAC債(総損失吸収力債)を活用して、グリーンボンドを発行する。月内にも30億㌦(約3000億円)のTLAC債を発行し、うち5億㌦を再生可能エネルギー向け投融資等に使途を限定したグリーンボンドにするという。

 

 TLAC債は、金融安定理事会(FSB)が世界の巨大銀行(G-SIBs)を対象に、銀行に対するバーゼル自己規制資本に加えて、新たな資金調達を求める規制対応の債券。金融危機が生じた場合でも、公的資金に頼らず、各金融グループが自らTLAC債で調達した資金で対応できるようにする狙いだ。日本では、三菱UFJのほか、三井住友、みずほの各メガバンクの持ち株会社が発行する。

 

 FSBが定めた国際規制によると、リスクアセット比のTLACの最低所要水準として、2019年1月からの第一段階で16%、2022年1月からの第二段階で18%とすることが求められている。このため三菱UFJの場合、毎年60億~80億㌦のTLAC債の発行が必要で、今年2月にドル建てで50億㌦を起債した。他のメガバンクもTLAC債の資金調達を進めている。

 

 一方で、TLAC債の場合も、調達した資金は投融資に運用しなければならない。世界的に景気が減速気味の状態が続き、途上国でも多様なリスクが顕在化する中で、安定した運用先の確保は容易ではない。そこで、地球温暖化対策で今後、資金需要が見込める再生可能エネルギーなどを資金使途対象とするグリーンボンドを盛り込むことで、債券の販売を容易にするとともに、グリーン投資市場での収益確保につなげようというのが、三菱UFJの戦略のようだ。

 

 月内に発行する第一号のTLAC型グリーンボンドは、償還期間7年、利回り年2%台後半を想定しているという。マイナス金利下の日本の国債より利回りが優位にあるだけでなく、米国債と比べても1%ほど高いことから、ESGマインドの高い海外投資家などの需要を見込むとしている。今後もTLAC債の一定割合をグリーンボンド発行とする方針だ。

 

 日本のメガバンクのグリーンボンド発行は昨年10月に、三井住友銀行が5億㌦のドル建て債券を発行したのが初めて。それ以外では日本政策投資銀行の発行(2本)があるだけ。三菱UFJなどのメガバンクが毎年、グリーンボンドを定期的に発行することは、日本のグリーンボンド発行体の増加につながる期待もある。http://rief-jp.org/ct1/55480

 

 ただ、TLAC債は、傘下の銀行が経営不振に陥るなどの万一の場合、他の債務よりも優先的に損失吸収に充当され、投資家の元本が毀損する仕組みだ。一方、グリーンボンドの場合は、調達した資金の投融資先の「グリーン度」をどう評価するかが最大の課題。このためTLAC型グリーンボンドの投資家は、資金使途の流れとともに、発行体の金融グループの信用力の両方を的確に見極める必要がある。

 

 http://www.nikkei.com/paper/article/?n_cid=kobetsu&ng=DGKKASGC05H11_W6A900C1MM0000