HOME11.CSR |<CSR点検> みずほフィナンシャルグループの2016年統合報告書。企業価値創造プロセスは改善。ステークホルダー評価で疑問も(RIEF) |

<CSR点検> みずほフィナンシャルグループの2016年統合報告書。企業価値創造プロセスは改善。ステークホルダー評価で疑問も(RIEF)

2016-09-14 17:52:52

mizuho5キャプチャ

 

 みずほフィナンシャルグループは、2016年のディスクロージャー誌として昨年に続いて二度目の統合報告書を発行した。

 

 企業価値を表現する「価値創造プロセス」について、前年は「銀行・信託・証券を中心にグループ一体となって・・」と定性的な表記にとどまっていたのを、2016年4月から持ち株会社の下に、セグメント別のカンパニー制を導入したことを受け、5つのカンパニーと、2つの横断的ユニットを図示して、わかりやすくなった。

 

mizuho1キャプチャ

 

 みずほグループとしての価値創造の循環は、前年は「資本」から「資本」へと、グループ内の循環に力点を置いた内容だった。今回は「お客さまの課題を解決し、持続的成長に貢献」「経済・社会の未来を創造」と、顧客、社会の課題解決を経て、資本に循環する流れが読めるようになっている。

 

 また「財務ハイライト」と並べる形で、「ESGハイライト」を設けた。環境関連ファイナンスの実績、みずほが海外で関与している環境都市プロジェクト、社会分野では地域経済活性化に向けた取り組み、従業員向けのダイバーシティとワーク・ライフ・バランスの推進実績等を3ページにわたり掲載している。価値創造の流れに非財務情報を組み込んだ形となり、統合報告らしさが、高まった。

 

 ただ、CEOメッセージで前年は「CSRへの取り組みについて」との項目を設け、農林漁業6次産業化や健康産業・医療介護事業育成支援ファンド、再生可能エネルギー事業への融資、東日本大震災の復興支援等に言及したが、今回のメッセージには言及がない。ページ数も前年の8ページから6ページに減っている。「分量を減らしたので、優先度の低いCSRへの言及をカットした」と読まれる可能性がある。

 

 もう一つ、気になったのは、みずほがとらえるステークホルダーの位置づけである。冒頭の価値創造プロセスのチャート図には、前述したように、顧客(お客さま)の位置づけが盛り込まれた。だが、顧客以外の、みずほを取り巻くステークホルダーは誰なのか、という疑問が出てくる。

 

 mizuho3キャプチャ

 

 ステークホルダーに関した記述については、後段の「企業を支える基盤」の中の一つに、「ステークホルダーコミュニケーション」の紹介がある。そこでは「顧客」「政治・行政」「仕入先・競争会社」「地域社会」「社員」「株主」の6つがコミュニケーション対象のステークホルダーとして位置づけられている。

 

 これを、みずほが想定するステークホルダー像とすると、先に見た三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)による分類と、二つの点で違いがある。一つは、みずほには「政治・行政」があるが、MUFGにはない。またMUFGには「地域社会・環境」として環境を含めているが、みずほは「地域社会」だけとなっている。

 

 「政治・行政」は企業一般にとって、ステークホルダーであるのは間違いない。政策や規制、ルールメーキングなどは企業活動に影響を与えるからだ。だからといって、マテリアル(重要な)ステークホルダーかというと、産業、企業によって異なる。企業が重視すべきステークホルダーは、当該企業の価値創造にとってマテリアルな相手、と考えると、「政治・行政」というステークホルダーは、そこに依存しなければならない産業・企業以外は、一定の距離を置くべき対象ではないか。

 

 特に、企業がステークホルダーと協働して価値創造を高めるという視点に立つと、「政治・行政」を協働相手とする企業は、数が限られる。また、政治・行政が企業活動に影響を及ぼすのは、通常は経済社会全体の発展や豊かさ向上等を目指すためである。そのように考えると、「政治・行政」を金融グループのマテリアルなステークホルダーと位置づけるのはどうか。これは考え方の問題でもあるが。

 

 もう一点のステークホルダーとしての「環境」の欠落は、おそらく何らかのミスではないか。前述のように「ESGハイライト」では環境関連ファイナンスを紹介しているし、「責任ある投融資への取り組み」として、国際プロジェクトファイナンスにESG視点を盛り込む「エクエーター原則」の活動を取り上げているからだ。あるいはCSRと同じく、みずほにとって、環境は優先度が低いということか。              (藤井良広)

http://rief-jp.org/ct1/64640

http://rief-jp.org/ct1/63937?ctid=67

http://www.mizuho-fg.co.jp/investors/financial/disclosure/data16d/index.html