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環境省が 金融行動原則への民間金融機関の署名を“丸抱え支援” (FGW)

2011-12-19 12:39:39

環境省は、日本の民間金融機関が打ち出した環境配慮の投融資行動を宣言するための「金融行動原則」の署名活動を支援するため、今年度予算から支援資金を供給する。支援対象事業は、行動原則の事務局機能を担う事業者を公募し、運営資金を供与するほか、署名促進のために全国で説明会を開催することなどを予定している。民間金融機関の自主的活動という触れ込みで、立ち上がったが、実際は国費による“丸抱え署名運動”になりそうだ。

環境省が公募している「金融行動原則の普及促進事業」によると、環境省が支援事業を行う理由として、「行動原則の普及及び行動原則の署名機関の取り組みを支援することによって、金融機関の取り組みを後押しし、環境金融のすそ野の拡大と質の向上をもって持続可能な経済社会の構築につなげるために、本業務の実施を行う」としている。

具体的な支援事業は、事業運営業者を公募し、同原則の事務局として活動させる。事務局は署名金融機関の取り扱いを一手に引き受けるほか、各機関から提出される環境金融の取り組み事例から優良事例集を作成し、環境省のHPで公開する。また行動原則の署名機関を広げるために、今年度は全国5か所程度で説明会を開催、説明会に参加する金融機関の担当者に対しても、旅費や謝金を国の予算で支給する。また来年春に署名機関の総会も環境省の費用持ちでを開くなど、行動原則の普及に関する大半の費用を国の予算でまかなうという。

金融機関が環境・社会性に配慮した活動をすることはFGWとしても、このサイトの趣旨に合致するため、大歓迎である。しかし、署名金融機関はすべて営利事業者であり、本来、金融機関による自主的な活動としてスタートした署名活動のはずである。投融資行動に環境配慮を盛り込むことを市場や顧客に宣言する運動は、すでに国際的には次のように、複数の原則が推進されている。

国連環境計画(UNEP)の金融イニシアティブ(FI)や、、責任投資原則(PRI)、プロジェクトファイナンスのエクエーター原則など。今回の日本版の行動原則は、当初から国際的な活動に「屋上屋」を重ねることにならないかとの懸念もある中でスタートしていた。地域の環境や社会性を重視した金融活動としては、市民の手によるNPOバンクや、被災地支援でもミュージックセキュリティーズなどのファンド運営会社による市民ファンド活動などが、国費の支援なしで、展開されている。

それに対して、営利の金融機関は銀行も、保険も、地域金融機関も、大半が手を拱いているのが現状である。「復興ファンド」と称する一部の公募投信も、被災企業や地域を直接支援するものは少なく、信託報酬の一部を寄付することにとどまっているものが多い。つまり、資金を必要なところに融通するという、本来の金融機能を発揮しているケースは例外的と言わざるを得ない。

そうした金融機関を、しかも、実際の活動そのものではなく、まずは署名活動にとどまる段階で、国費丸抱えで支援する意味があるのかどうかの議論が必要だろう。さらにいえば、国全体では未曾有の財政赤字を積み上げている。仮に環境省の予算に余裕があるのならば、より政策支援の必要な非営利事業活動に振り向けるか、あるいは予算を返上して、少しでも財政赤字の削減に協力するべきではないのか。このままでは、民主党お得意の“事業仕分け”の本年度の有力候補の一つになりかねない、と危惧する。

環境省の公募概要 http://www.env.go.jp/kanbo/chotatsu/021003908.html