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東京電力に大手金融機関が2兆円緊急融資。不良債権化の懸念は?(FGW)

2011-03-24 13:36:40

新聞各紙の報道によると、三井住友銀行など大手銀行は、東日本大震災で原発事故が起き、復旧が長引いている東京電力に対して、2兆円規模の緊急融資を実施する検討に入った。事故を起こした原発の復旧費用や、不足する電力供給力の回復費用、社債の償還資金等に充てる予定という。

日本経済新聞(3月23日夕刊)は、三井住友銀が6000億円、みずほコーポレート銀行5000億円、三菱東京UFJ銀行3000億円としており、朝日新聞(3月24日朝刊)ではこのほかに、住友信託銀行3000億円、三菱UFJ信託銀行1500億円、中央三井信託銀行1000億円、みずほ信託銀行500億円と、信託4行で6000億円、信金中央金庫450億円などで調整中という。さらに、政府系の日本政策投資銀行、日本政策金融公庫も融資を行う見通し。

東電に対する大手金融機関の長期融資残高(2010年3月末)は、日本政策投資銀行が3500億円でもっとも多い。このほか、日本生命が1400億円、第一生命1260億円、三井住友銀行1200億円、みずほコーポ810億円などとなっている。日経によると、このうち生保各社は保有する東電株の下落で業績に影響を受けているので、追加の融資要請に応じるかは微妙という。日生、第一とも東電の株式シェアを4%台で保有する上位株主。

東電の資金需要は原発復旧のための資金や、電力不足を補うため火力発電所を活用することに伴う燃料費用の増加、さらに2011年度に予定されている社債の償還資金5500億円が必要という。2兆円規模の緊急借入はこうした資金需要に充てられる見通しだ。ただ、今後、事故原発の廃炉資金、放射性物質で被害を受けた農家や被災住民あるいは消費者への補償問題も予想され、今回の緊急融資はあくまでも一時的な金策でしかないとの見方が強い。

金融機関にとって東電向け融資は、普段ならば優良企業向け融資となるが、今回の事故と今後の対応次第では、東電自体の経営問題が生じることも予想される。政府が補償問題や廃炉資金などにどれだけ政府資金を供給するか、あるいは民間融資に対して実質的な保証を付与するかが明確でないと、新規融資自体が即「要注意先債権」あるいは「要管理債権」になる懸念もある。英紙ファイナンシャルタイムスは東電の国有化の可能性に言及している。