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カナダ中央銀行副総裁 気候変動対策として「カーボン価格付け」と「グリーン金融」を政策の選択肢として強調。金融政策においても「気候変動」を判断要因の一つに組み入れへ(RIEF)

2017-03-16 01:07:00

 

  カナダ中央銀行のティモシー・レーン(Timothy Lane)副総裁は、気候変動への対応を怠ると、カナダは2050年までに毎年210億~430 億㌦の損失を被ると指摘、効果的な対策として「カーボンへの価格付け」と「グリーン金融の推進」を提唱した。

 

 レーン副総裁はモントリオールでの会合で「気候変動による温度上昇とカナダ経済の未来」と題して講演した。

 講演の中で副総裁は、「気候変動及び、その対策としての緩和策や適応策は、カナダの経済と金融システムに重要でかつ深い影響を及ぼす」と述べた。中央銀行として気候変動への対応が重要な使命であるとの認識を示した。

 

 実際にカナダでは、各地で異常気象が広がっている。副総裁は、「干ばつの影響によるアルバータ州での森林火災で、昨年第二四半期のカナダのGDPが1%減少した」と、実体経済への影響が深刻化しつつあると警告した。そのうえで、低炭素経済への移行は、カナダ経済の全面的な構造改革を必要とするとの認識を示した。

 

 同副総裁は、そうした気候変動に対応する政策として、カーボン価格付け政策と、金融のグリーン・イニシアティブの二つの政策の選択肢を示した。価格付けでは、「カーボン税にしろ、排出権取引制度にしろ、価格付けは温室効果ガス排出量(GHG)をもっとも効率的に削減できる」と評価した。

 

 カーボン税についてはカナダでも産業界から懸念が示されている。だが、副総裁は、ブリティッシュコロンビア州が先行する形で導入したカーボン州税によって、企業行動が変わり、同州のGHG排出量の削減が進んでいると説明した。

 

 またグリーン金融についても、「民間の金融セクターの資金を、環境面で持続可能な事業への投資を促すことになる」と位置付けた。特に、カーボンに適正な価格付けができると、グリーン投資の収益性は向上するとし、カーボン価格付けとグリーン金融の相乗効果への期待を示した。

 

Canada2キャプチャ

 

 そのうえで、「グリーン金融を推進するには、気候変動リスクについての情報開示の高度化と、それらのリスク分析技術の向上が必要」と述べた。再生可能エネルギーや省エネなどのグリーン事業は収益性の確保に長期的な期間を要するため、投資家が投資判断に際して、気候変動リスクを評価できる仕組みが必要と指摘。金融安定理事会(FSB)の気候財務情報開示作業部会(TCFD)の報告書の重要性を改めて強調した。

 

 また気候変動が金融政策に及ぼす影響にも触れた。世界的に低炭素経済への移行を進める中で、低く、安定的で、予測可能な物価上昇率を追求しなければならないが、カーボン価格付け政策は、産業界にとってコストアップとなる。しかし副総裁は「カーボン価格付け策は、一時的に経済社会のコストを引き上げるが、それは過去の石油価格の乱高下の際にも体験した一時的なコスト上昇であり、『物価の安定』と対立するものではない」と説明した。

 

 その一方で、「低炭素経済社会への移行で、需要と供給の全体構造が抜本的に変貌する可能性」に言及、「気候変動の影響で、経済活動が停滞するようなショックの発生が増えるようなら、金融政策のリスクマネジメントのフレームワークに気候変動要因を加える必要がある」と述べた。

 

http://www.bankofcanada.ca/2017/03/thermometer-rising-climate-change-canada-economic-future/