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環境NGO5団体 ベトナム・ビンタン第4石炭火力発電所拡張案件への 国際協力銀行の融資決定に抗議の共同声明(RIEF)

2017-04-18 16:54:12

Vietnum1キャプチャ

 

 日本の環境NGOのFoE Japanなど5団体は、ベトナムの国営電力公社(EVN)が計画する南部のビントゥアン省ビンタン第4石炭火力発電所の拡張案件に、国際協力銀行(JBIC)が融資決定したことに対し、パリ協定が目指すCO2削減目標に反するほか、地域の住民への健康影響や生態系などへの悪影響があるとして、融資決定に抗議する共同声明を出した。

 

 共同声明を出したのは、FoE Japanのほか、気候ネットワーク(KIKO)、JACSES、メコン・ウォッチ、350.org.Japanの5団体。

 

 ビンタン第4石炭火力発電所は、現在、試運転期間中だが、それをさらに拡張する事業が、今回のJBICの融資対象。本体の第4発電所(超臨界圧600MW×2基、総事業費14億㌦)はJBICのほか、韓国輸出入銀行、三菱東京UFJ銀行が2億200万㌦協調融資が融資した。今回の拡張計画は、もう一基、同能力の発電設備を追加(総事業費11億㌦)する内容で、融資金融機関は本体と同じく、JBIC、三菱東京UFJ銀行が融資し、三菱UFJの融資には日本貿易保険(NEXI)による保険が付保される。

 

 環境NGOらは、すでに建設拡張予定地のビンタン村において、2014年9月に先行して稼動した第2発電所の影響とみられる大気汚染が深刻化し、周辺住民への健康被害を発生させていると指摘している。15年4月には、住民ら数千人による抗議デモが起き、警官隊と衝突する事態も引き起こしている。また同村沖合いのニャンチャン湾の海洋保護区でもはサンゴ礁が石炭灰に覆われるなどの影響が指摘されている。

 

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 こうしたことから、日本の環境NGOらも、現地の環境団体や住民団体と協力して、今回の案件の公害・安全対策の不備や海洋保護区への影響などの環境社会面の問題について、JBICに問題を指摘するとともに、JBICが設定している「環境社会配慮確認のためのJBICガイドライン」に基づく必要な対応をとるよう求めてきた。

 

 しかし、今回の共同声明によると、「JBICが自らのガイドラインに則って、事業者が同案件に伴う環境社会影響を回避・最小化するために必要な対策をとっているかについて、依然十分な確認ができていない状況にもかかわらず、自らのガイドライン規定を蔑ろにし、市民社会に対する説明責任も果たさぬまま、JBICが拙速な融資決定を行なった」と指摘、抗議を表明している。

 

 現在、試運転中の第4発電所本体では、今年3月に工事現場で火災が発生、2名が負傷する事故が起きている 。またすでに発電している第2発電所の近隣地域では、草木が突然枯れる現象が続いており、地元住民らは石炭灰を貯めるアッシュポンドからの水漏れによる土壌汚染の影響の懸念を示している。しかし第4発電所の拡張計画では、このアッシュポンドを設ける予定であることも、NGOらの疑念を高めている。

 

 さらに、途上国での石炭火力発電所の増設は、2015年に採択されたパリ協定が「世界の気温上昇を産業革命前からの2℃上昇より十分低く抑え、できれば1.5℃以内とする」と定めた目標の趣旨と反する。パリ協定の目標を達成するには、「高効率といえども、最も温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電への投融資は避けるべき」と求めている。

 

 ビンタン第4発電所とその拡張案件は、日本政府が推進する「質の高いインフラ輸出」政策の一つと位置づけられている。その一方で、事業主体のベトナム電力公社は円借款の増大で業績が圧迫され、昨年上半期では4000万㌦以上の赤字を計上している。ベトナム全体でも、債務総額はGDPの約6割に増加しており、拡張計画はさらなる債務増大につながるとの懸念が、世界銀行などからも指摘されている。

 

 こうしたことから、NGOらは「JBICとNEXIは自らの環境社会配慮ガイドラインに基づいて適切な再調査を行い、深刻な影響が回避・最小化できないと認められる場合は、貸付等を停止すべきだ」と求めている。

 

http://sekitan.jp/jbic/2017/04/14/2190

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