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米DAPLパイプライン事業主、Energy Transfer社、別のパイプラインでも汚泥大量漏れ事故引き起こす。法令違反も多数。融資金融機関にとっての信用リスク高まる(RIEF)

2017-05-15 21:34:43

ET1キャプチャ

 

  トランプ政権が開発許可を出したダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)計画で原油漏れ事故を引き起こしていたことが発覚したが、DAPLの事業主体のEnergy Transfer Partners(ET)がオハイオ州で建設中の別のパイプラインでも、同州内で汚泥漏れや法令違反などが見つかり、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が工事中止を命じた。

 

 先住民の居留地に環境汚染、水質汚染を引き起こす懸念が高いDAPLのパイプライン建設はオバマ前大統領が迂回路を指示したが、トランプ政権はその決定を覆し、建設ゴーサインを出した。だが、今回の別のパイプラインでの汚泥漏洩事故の発覚で、原油のDAPLだけでなく、ガスパイプラインも含めて、米エネルギー開発事業の環境配慮が、極めて杜撰であることが改めて確認された。http://rief-jp.org/ct1/69826

 

 今回、問題が見つかったのは ETが事業主となっているRover Pipeline建設事業。中西部のシェールガス開発で産出した天然ガス日量32億5000万立方フィート (Bcf/day)を、北米の北東部、東部沿岸部、ガルフ湾沿岸、そしてカナダにも配分する州間パイプラインを建設するもの。総事業費42億㌦で、直径42インチのパイプを2列に配して、ウエストバージニア州にあるガス製造工場から、オハイオ州北西部まで運ぶ計画になっている。

 

 ETは今年2月に、FERCからパイプライン建設許可を得、7月にフェーズ1、11月にフェーズ2の建設を完了する予定だった。ところが、3月24日の工事開始から7週目の間に、シェールガス採掘に使う化学物質を含有したスラ―リー(薄い泥)の噴出事故1件と、7件の法違反を引き起こしたという。

 

 ET3キャプチャ

 

  最大の環境汚染となった化学物質含有スラ―リーの噴出は、4月13日に起きた。総量数百万ガロン(約10~30ML)もの有害汚泥が広大な湿地を覆ってしまった。米国の平原等に点在する湿地は、農地と生態系の間のフィルターの役割を果たすが、微細で重いスラ―リーに覆われ、湿地の植生や水生生態系が壊滅的なダメージを受けた。これ以外にも5月7日までに、17件のトラブルが発生、そのうち7件は法令に抵触する違反を引き起こした。

 

 FERCは5月10日、Rover Pipelineの直接の事業者に対して、スラーリーが大量流出した大規模湿地でのパイプラインの建設を直ちに停止させると同時に、新たなサイトでの工事着手も禁じる命令を発した。さらに独立の調査機関を導入して原因を早期に解明するよう命じた。

 

 実はFERCが命令を出す前に、オハイオ州の環境保護庁が事業者が相次いで引き起こす法令違反に対して、43万1000㌦の罰金と、緊急対応計画を直ちに作成するよう要請していた。しかし、州の担当者は事業者の了解を得られず、追い返されていたという。連邦機関が命じて、ようやく工事停止になるというお粗末さを露呈している。

 

ET2キャプチャ

 

 オハイオ州の環境保護庁の担当者によると、汚染された湿地が元の状態に回復するには数十年がかかるだろう、という。親会社のETのスポークスマンは「われわれは、FERCと州の環境当局と一緒に問題解決にあたっている。影響を受けた地域の完全浄化がもっとも重要な課題だ」と述べている。

 

 しかし、環境保護団体シェラクラブの化石燃料担当の Cheryl Johncox氏は「ETらは、自分たちがやってしまったことの重大さを理解としていないし、それを気にも止めていない。問題は、これほど短期間に多くの法令違反を引き起こし、さらに州当局から指摘を受けていたのにそれを無視してきたことだ」と、ETに法令順守(コンプライアンス)精神が欠如していることを問題視している。http://rief-jp.org/ct7/68597

 

 Rover Pipeline計画へどの金融機関がファイナンスしているかは明らかにされていない。だが、DAPLのほうには、日本の3メガバンクをはじめ、欧米の主要金融機関が事業資金を貸し込んでいる。金融機関は契約対象事業の環境・社会・ガバナンス(ESG)課題だけではなく、融資先企業自体が抱えるESG課題についても把握することを求められる。DAPLでも、パイプラインがほぼ完成して稼動直前だが、すでに84ガロンの原油漏れが発覚しており、ETの事故管理能力の低さが改めて問われている。

http://www.energytransfer.com/