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<金融CSR点検:3>三菱UFJフィナンシャル・グループ。ESGを「価値創造の重要課題」と位置付け、非財務情報の開示で他行を上回る。石炭火力、TCFD対応が次の焦点(RIEF)

2017-09-16 23:17:01

MUFG1キャプチャ

 

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の統合報告書も今年が3回目。今年の特徴は、ESGについてCEOメッセージでしっかり書き込んだほか、特集面でも「価値創造における重要課題・ ESG課題への取り組み」として、ガバナンスを除くESの環境・社会だけで10ページを割いた点だ。

 

 前年のMUFGの統合報告書は「危機感」がにじみでていた。CEOメッセージで、平野信行グループCEOは、海 外経済の減速、与信費用の増加、そして世界的 な低金利の継続を指して「三つの逆風」と呼んだ。経営環境が大きく変化する中での「持続的成長に向けた取り組みと思い」を語った。

 

 持続的成長に向けて、「価値を創造する力」と「企業価値を支える力」に分け、それぞれの取り組みを紹介、そのうち「支える力」の中にCSRを位置付けるという構成だった。その構成は他行と大差なかった。今回、目に付くのは、「創造する力」と「支える力」をつなぐ形で「価値創造における重要課題 ─ESG課題への取り組み」として、ESGにフォーカスして情報を30ページにわたって掲載した。

 

 このうちガバナンス情報は他行も指名報酬委員会や社外取締役主体のガバナンス構造への転換を複数のページを割いて紹介している。なので、ガバナンス情報を除くES(環境・社会)情報だけをみると、それでもMUFGは14ページに及ぶ。情報量が多いのは、実績があるからだ。

 

MUFG5キャプチャ

 

 例えば、グループ本体の自己資本力増強のためのTLAC(総損失吸収力)増強資本のため世界で初のTLACグリーンボンドを発行した。2016年の再生可能エネルギー部門での国際プロジェクトファイナンス・リーグテーブルで各国の金融機関を制してトップの座を得た。政府主導の二国間クレジット制度(JCM)へのファイナンス、など。価値創造力に加えて、事業活動におけるCO2排出量の削減実績値の開示も他のメガバンクにはない試みだ。

 

 CEOメッセージでは、12ページ中4ページはESGの取り組みに費やした。何よりも、「ESG課題への取り組み」を前年までの「企業価値を支える力」ではなく「価値を創造する力」に伴う課題として位置付けた点に、統合の視点が反映している。ESGへの対応と取り組みが、価値創造(財務)と支える力(非財務)を融合するとの位置づけだ。

 

平野信行グループCEO
平野信行グループCEO

 

 もちろん、ESGに関する表記が多いだけで、統合価値が高まるわけではない。国際統合報告書評議会(IIRC)の報告書テンプレートをなぞるだけでなく、明確な非財務についての問題意識と、それを財務力で解決し、財務力を強化するという視点と展開が必要だ。

 

 平野信行CEOは「環境保護、とりわけ気候変動への取り組みは、私たちに与えられた社会的使命の中でも 最も重要なもの」と述べるとともに、「事業を通じた課題解決策」として再エネ事業への積極的なファイナンスをあげた。その資金力確保でグリーンボンドを発行するという財務と非財務の循環が、企業価値を高める展開を描く手応えを得たようだ。

 

MUFG5キャプチャ

 

 ただ、財務と非財務の統合が進めば進むほど、次なる課題克服への期待は高まる。「気候変動への取り組みを社会的使命」と明言する以上、再エネ等の緩和策へのファイナンスに積極的に取り組むだけではなく、CO2を大量排出する石炭火力などの化石燃料事業へのファイナンスをどうするのか、という姿勢の明示も求められる。

 

 国際環境NGOグループが今年6月公表した世界の主要国際金融機関37行の石炭関連融資調査で、日本勢では2011年からの6年間でもっとも多い、みずほフィナンシャルグループがやり玉に挙がったが、直近3年の総融資額では海外での存在感の大きいMUFGがみずほグループを上回っている。インドネシア等での複数の石炭火力事業をめぐっては、環境への影響に加えて、地域住民への人権侵害問題も指摘されている。

 

 気候変動対応も次のステップを求められている。金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は今年6月、気候変動関連のリスクとビジネス機会を財務報告に開示することを求める報告書をまとめた。報告書はG20でも了承された。まさに財務・非財務の統合行動の要請だ。

 

 MUFGは今回の報告書の中で、メガバンクの報告書では唯一、TCFD報告の経緯を紹介、「TCFDは、財務報告への開示を推奨する 提言を金融機関に対し行った。 MUFGは、地球温暖化がビジネスに及ぼす影響とその 関連リスクについて認識し、金融機関として適切に対応し ていく」と記載した。TCFD報告に沿った気候変動情報開示でも、MUFGがリーダーシップを発揮することが期待される。

               (藤井良広)

 

http://www.mufg.jp/ir2017/pdf/all.pdf