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<金融CSR点検:4>三井住友トラスト・ホールディングス。マテリアル・マネジメントを宣言。課題はむしろ財務面での競争力と、内外の提携先を含めた財務・非財務の統合力にあり(RIEF)

2017-09-18 08:00:46

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 三井住友トラストホールディングス(SuMi Trust)は、今年初めて統合報告書を発行した。先行する他のメガバンクと同様、国際統合報告書評議会(IIRC)のテンプレートを雛形として整理する一方で、独自の「マテリアル・マネジメント」の概念を盛り込んだ点が目新しい。

 

 マテリアリティ(重要さ)は伝統的な会計の概念であり、財務面での情報開示に際して、企業価値に一定以上の影響を与える項目を特定する概念である。同グループは、このマテリアリティ概念を中長期的な企業価値への影響と、ステークホルダーとの関係を通じ社会へ与え る影響の両面から特定し、ESGと重なり合うものと位置付けている。

 

 具体的には、①コーポレートガバナンス②リスク管理とレジリアンス(復元力)③コンプライアンス④人的資本⑤ステークホルダーとの対話⑥顧客満足度の向上――などをマテリアリティが高度な領域の項目として特定している。

 

 これらの視点で特定したESGを含むマテリアル項目については、社外取締役による評価、ステークホルダーへのヒアリング等の手続きを経て、企業価値への影響度、企業が社会に与える影響度の両面を評価するマテリアリティ・マップを作成する。マップ上で「最 もマテリアリティが高い領域」としてプ ロットされた項目については、経営面で最も重要視すべきESG課題と位置付けるマネジメントプロセスをとると明記している。

 

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 同グループは、これらのマネジメントが企業内で本当に定着しているかどうかを確認するため、経 営企画部CSR推進室が「擬似投資家」となっ てマテリアリティの高い業務の担当部署と 対話(エンゲージメント)を行うインターナル・エンゲージメントを実施しているという。

 

 これらの活動が、実際のESG評価を律する役割を果たしているかは、今後のモニタリング等で確認されるだろう。だが、財務・非財務の統合の意義を、各金融機関の個別特定のマテリアリティを踏まえたマネジメントレベルに落とし込んだ点は注目に値する。

 

 また信託専業の金融機関として、顧客資産の価値増強を重視するフィデシャリー・デューティー(受託者責任)の実践、スチュワードシップ活動についても独自の体制を整備している。これらの顧客重視の目線の上に、コミュニティ・社会の価値増進のための国際的活動である国連の持続可能な開発計画(SDGs)等への取り組みを掲げ、グループとしてのCSR活動をその中に位置付けている。

 

 事業におけるサステナビリティの取り組みについても、①気候変動問題②自然資本(生物多様性問題)③環境不動産④サステナブル投資⑤超高齢化社会、の5項目を例示し、SDGsとの関連を整理したうえで、グループの取り組みについて簡潔に表示している。

 

三井住友トラストホールディングスの取締役執行役社長の大久保哲夫氏(左)と、三井住友信託銀行取締役社長の橋本勝氏
三井住友トラストホールディングスの取締役執行役社長の大久保哲夫氏(左)と、三井住友信託銀行取締役社長の橋本勝氏

 

 トップメッセージでは、ホールディングスの取締役執行役社長の大久保哲夫氏と三井住友信託銀行社長の橋本勝氏の二人が連名で、「(マテリアリティ・マネジメントに)真に取り組んでいくことが、当グループの長期的な成長に つながる」と宣言している。

 

 ESGを代表とする非財務面の評価・取り扱いについてはこれまでも同グループは大手行の中でも定評があった。むしろ同グループの課題は、メガバンクに比して量的厚みにおいて一歩、後れを取る財務面かもしれない。昨年2月にエクエーター原則に署名したが、これも財務面主導での国際的プロジェクトファイナンス等への「遅れてきた参画」への対応といえた。

 

 国内外でのネットワーク網の薄さという課題の克服には、地銀や海外の地域金融機関との連携が課題となる。だが、その場合、提携先の内外の連携先金融機関や、不慣れな企業基盤地域で抱える独自のESG課題を的確に把握し、的確な対応ができるのかという新たなテーマも浮上している。

 

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 昨年、インドネシアで地元住民の反発を呼んだジャワ島中部バタン州での日本企業主導の石炭火力発電所計画では、日本の金融機関中最大の融資量を出した。また、同じジャワ島のタンジュン・ジャテイB石炭火力発電所計画でも、主要融資行として名を連ね、いずれにおいても、現地の住民団体やNGOの批判を浴びてしまった。

 

 ともに日本の金融機関によるシンジケートローンへの参加によるもので、マテリアル・マネジメントが十分に機能したのか、という疑問を引き起こした。非財務面の評価・位置づけで明瞭な方向性を示す三井住友信託グループだが、その明瞭な方向性を、財務面での価値創造力の展開にどう展開させるかは、引き続きの課題となっている。

 

 同グループはそうした経営環境の中で今年度からの中期経営計画では、ビジネスモデルの変革を含む「The Trust Bankへの進化『第2の創業』」を打ち出している。ここでの「Trust」は信託機能だけでなく、顧客との信頼、提携先の内外金融機関との信頼等も含むと思われる。その意味での「Trust」の土台には、ESG配慮が条件なしで組み込まれていなければ、マテリアル・マネジメントの土台が危うくなりかねない。

http://smth.jp/ir/disclosure/2016/all.pdf