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金融・保険業の温暖化対策の取り組み、他業種より低く。最高点は東京海上ホールディングス、損保各社が上位独占。銀行業は低迷。環境NGOのWWFジャパンの調査評価(RIEF)

2017-10-31 21:51:11

WWF1キャプチャ

 

  環境NGOの世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、日本の金融・保険業の温暖化対策の取り組み状況を調べ、独自評価を加えた報告書を公表した。それによると、総合評価では東京海上ホールディングスがもっとも高得点をあげたほか、3位までを損害保険各社が占めた。金融・保険業の平均点は34.9点で、他の業種に比べて低く、損保業界だけが気を吐いた格好だ。

 

 WWFはこれまでも業種ごとに、環境報告書やCSR報告書などでの開示情報を調べ、各社の取り組み状況を同一の指標を用いて評価している。これまでに、電気機器、輸送機器、食料品、小売・卸売の4業種で実施、今回の「金融・保険業」は5回目となる。

 

 今回対象となった「金融・保険業」は65社だが、このうちの環境報告書等で温暖化関連情報を開示していない35社は除外、残りの30社を対象とした。温暖化対策の目標設定の有無等、21の指標で評価し、このうち「長期的なビジョンの設定」「削減量の設定」「第三者による評価」などの7指標については実効性の高い対策としてボーナス加点をするなどの評価を行なった(100点満点)。

 

 その結果、総合点では、東京海上ホールディングスが78.2点で第1位となった。次いで、 MS&ADインシュアランスグループホールディングス(75.1点)、SOMPOホールディングス(72.5点)と、3メガ損保がそろって70点台に並んだ。

 

WWF2キャプチャ

 

 4位は少し差があって、野村ホールディングス(60.0点)。以下、50~60点未満のグループが、第一生命ホールディングス、芙蓉総合リース、三井住友フィナンシャルグループ、八十二銀行の4社。40点~50点のグループは、みずほフィナンシャルグループ、T&Dホールディングス、滋賀銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループ、オリックス、日立キャピタルの6社(下図参考)。

 

 平均点は34.9点。平均点以上だったのは、上記の各社に加えて、40点未満グループの三井住友トラスト・ホールディングスと大和証券グループ本社を加えた16社だけ。中にはゼロ点の企業も5社あった。環境報告書等を発行していながら、評価がゼロというのは開示情報に意味がないということになる。

 

 金融・保険業の平均点の34.9点は、過去の4業種(電気機器48.7点、輸送用機器46.7点、食料品44.8点、小売業・卸売業34.1点)と比べ、小売・卸売よりは上回っているが、他の3業種からは10点以上も引き離されており、「不十分な業種」ということになる。しかしその中で、「損保3社はいずれも、長期的な視点で実効性の高い取り組みを行っている」(WWF)と評価された。その一方、3メガバンクは、「長期目標を持たず、総合得点も伸び悩んだ」と指摘されている。

 

 情報開示の中身では、調査対象30 社のうち24 社が、温室効果ガスのScope1と同2 の総排出量を開示している。また、そのうち 12 社(全 体の 40%)は総量だけでなく原単位データの開示も行っていた。ただ、データの開示だけでなく、総量と原単位の両方で削減目標を掲げているのは 東京海上ホールディングス1 社だけ。

 

 対象の金融・保険業のうち、環境報告書類を作成していない企業が全体の過半数(54%)の35社にのぼったことも特徴だ。その中でも銀行の報告書未作成企業は63%に達し、銀行が「環境コミュニケーション」を重視していないことが浮き彫りになった。金融業では資産運用を中心に、ESG投資等をはやしているが、実際には金融業自体の環境情報開示が不十分なことが判明した。

 

 報告書作成企業においても、「投 資の運用に伴う排出」を開示している企業は一社もみられ なかった。ESG 投資では、機関投資家に対し、持続 可能性に配慮した投融資行動を求める。だが、金融機関側がESG投資の結果を市場や顧客に知らせる姿勢を欠いていると言わざるを得ない。

 

 温室効果ガスの排出量データの妥当性について第3者機関による検証を受けている企業の割合は9社で、対象企業の30%と、比較的高い水準だった。電気機器、輸送用機器、食料品の3業種よりも高く、小売・卸売業と同レベル。9社は総合ランキング4位までの3損保と野村ホールディングス、大和証券、第一生命、T&D、三井住友フィナンシャルグループ、オリックスの各社。

 

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https://www.wwf.or.jp/activities/data/20171031_cllimate01.pdf