HOME4.市場・運用 |地域金融機関の気候変動意識。深刻さは認識するも、具体的対応は不十分。ダイベストメント、石炭火力投融資の見直しなどには「距離」。一部に前向き回答も。「気候ネットワーク」が近畿の金融機関を調査(RIEF) |

地域金融機関の気候変動意識。深刻さは認識するも、具体的対応は不十分。ダイベストメント、石炭火力投融資の見直しなどには「距離」。一部に前向き回答も。「気候ネットワーク」が近畿の金融機関を調査(RIEF)

2017-11-07 22:37:41

KIKO1キャプチャ

 

  気候問題NGOの気候ネットワーク(KIKO)は、地域金融機関の気候変動対応を調べたアンケート結果を公表した。脱炭素経済・社会への移行に際して、地域コミュニティに立脚する金融機関がどのような問題意識をもち、対応しているかを調べることが目的。近畿2府6県で活動する地域金融機関を対象とした。

 

 調査は近畿財務局管内の62の金融機関を対象とし、6月14日から7月18日にかけて、郵送によるアンケートを実施した。回答は15機関から得た(回答率24.1%)。

 

 気候変動問題への認識については、回答15機関中、11機関が「大変深刻である」「深刻である」との認識を示した。「どちらともいえない」(3件)、「わからない」(1件)。KIKOでは、概ね気候変動問題の深刻性への認識は広がっている、と評価している。

 

KIOKO2キャプチャ

 

 ただ、パリ協定実施への貢献については、5機関が「大変貢献したい」「貢献したい」と回答したが、「どちらとも言えない」(8件)、「分からない」(2件)と、対応が定まっていない機関のほうが多かった。前項の回答と連動させると、気候変動問題の深刻さは認識しながらも、パリ協定にはどう貢献するかという考えが確立していないところが多いといえる。

 

 パリ協定実施に貢献する考えを公式に発表している機関は1件だけで、他の14件はいずれも「発表していない」と回答した。発表していると回答した機関は「中期経営計画の挑戦目標として、当行が排出するCO2削減目標を掲げている」と説明した。

 

 投融資の中で、化石燃料関連取引を引き揚げるダイベストメント(Divestment)への取り組みが、欧米の金融機関などで広がっている。15機関の認識では、「ダイベストメントの取り組みを知っているか」との問いに、「はい」の回答は3件、「いいえ」が12件と大きな開きを示した。欧米での動き等は報道されているのに「いいえ」が多いのは、「知っている」と答えると「対応」を求められるのを懸念して、「いいえ」と、知らぬふりをした可能性もある。

 

KIKO3キャプチャ

 

 このため「ダイベストメントへの取り組み」への質問にも、「特に取り組みはない」(12件)、「わからない」(2件)と大半が距離を置く姿勢を示した。その中で、「取り組みを検討中」と回答した機関が1件あった。

 

 「石炭火力発電への投融資の有無」については、「いいえ」が10件と多かったが、「回答できない」のも5件。これも「投融資があるから回答できない」という可能性が高い。「原子力発電所への投融資の有無」も、ほぼ同様で、「いいえ」が11件、「回答できない」が4件。ただ、今後の原子力発電への投融資をどうするか、という問いには、1機関が「なくしたい」と回答、その他は10機関が「回答できない」、3機関が「現状維持」とした。

 

 「再生可能エネルギー事業への投融資の有無」では、「はい」(7件)、「いいえ」(5件)、「回答できない」(3件)と分かれたが、前向きな機関が過半を占めた。

 

KIKO4キャプチャ

 

 KIKOでは、「気候変動問題を深刻と受け止める金融機関が多数あったが、パリ協定実施に貢献するダイベストメントや石炭火力等への投融資の見直しなどの活動に必ずしも結びついていない。パリ協定の重要性などの理解を広げる必要がある」と評価している。その一方で、パリ協定への貢献やダイベストメントの取り組み検討などという回答が、少数ながら1機関ずつあったことに着目、「日本の金融機関の中にも、パリ協定の意義や自らの社会的責任等を認識した画期的なこと」と位置づけている。

http://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2017/11/20171101kinki-divestment-report-f.pdf