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国際協力銀行(JBIC) インドネシア・チレボン石炭火力発電所への融資強行。いったん破棄された環境許認可に基づく融資契約の妥当性が論点に(RIEF)

2017-11-14 23:08:07

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 国際協力銀行(JBIC)は14日、インドネシア・西ジャワ州チレボン石炭火力発電事業・拡張計画(1000 MW、丸紅・JERAが出資)に対して、第一回目の融資を実施した。JBICは4月に総額7億3100万ドル(約826億円)の融資契約を同事業の事業会社と結んでいる。しかし、健康被害や生活環境への影響を懸念する現地住民らによる訴訟でその後、環境許認可は取り消されており、環境NGOらは今回のJBICの融資強行はJBIC自身のガイドラインからも逸脱しているとし、緊急声明を発表した。

 

写真は、稼働中のチレボン石炭火力1号機)

 

 チレボン石炭火力発電事業は、日本の丸紅が主導して2013年に稼動した1号機(発電出力660MW)に続き、一回り規模の大きい2号機(100MW)を建設する計画。発電所はCO2排出量が相対的に少ないとされる超々臨界圧の石炭火力。事業主体は丸紅が35%の筆頭株主で現地企業や日本の中部電力などと合弁で設立したチレボン・エネジー・プラサラナ(CEPR)が担う。

 

 稼働中の1号機にもJBICが融資を供与した。しかし、同機の操業によって、地元では小規模漁業、貝採取、製塩、農業などを生計手段とする住民の生活に甚大な影響が及んでいるとされる。このため、住民らは2号機の建設・稼働になれば、被害はさらにひどくなるとして反対運動を続けている。そして住民らは昨年12月に環境許認可の取り消しを求める訴訟を起こした。その裁判途中の今年4月、JBICは判決の前日に融資契約を締結した。しかし、判決は住民勝訴で環境許認可は取り消された。http://rief-jp.org/ct6/68945

 

 

裁判に訴えている住民たち
裁判に訴えている住民たち

 

 JBICのガイドラインでは融資契約に際して、「相手国及び当該地方の政府等が定めた環境に関する法令の遵守」や「相手国政府等の環境許認可証明書の提出」を定めており、JBICは手続きを進められなくなった。しかしその後、7月に現地の西ジャワ州政府が新たな許認可を発行したことで、JBICは「JBICのガイドラインとの適合性を確認できた」としている。

 

 だが、住民や環境NGOは、JBICの現在の融資契約自体は、取り消された旧許認可証明書に基づいており、「無効な許認可の改訂プロセス」を進めることになると指摘。また新しい環境許認可の発行前には住民協議が行なわれておらず、非常に不透明と批判している。インドネシアの法令や規則には、無効となった環境許認可を改訂するための手続きは一切規定されていない。

 

  住民らは来週にも新たな環境許認可の取り消しを求める行政訴訟を準備中。その直前に、JBICが融資を実行したことは、4月の時と同様、訴訟の前に既成事実を作っておこうとする卑劣なやり方だと、反発している。

 

 現在、ドイツのボンで開いている国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)では、石炭火力発電所の新増設への強い批判が高まっている。特に、先進国の中で唯一、石炭火力発電の新増設を推進している日本への名指しの非難が続き、「化石賞」も贈られている。こうした環境下でのJBICの融資強行に、欧米の金融界からも、その国際感覚のなさに疑問のまなざしが向けられている。

 

来日して日本の政府関係者に陳情活動を行った住民の代表者たち
来日して日本の政府関係者に陳情活動を行った住民の代表者たち



 住民たちの抗議活動を支援している環境NGOのFOEジャパンは「JBICは、計画の推進ありきで貸付を行なう判断で、その決定は拙速だ。住民の声や権利、および、違法性を軽視し続けるJBICに対し、私たちは強い抗議の意を表明する」と緊急声明を公表した。そして、「国際的な石炭関連事業からの融資撤退(Divestment)の動きを直視し、パリ協定の1.5度目標達成にも逆行する石炭火力の輸出促進の方針をただちに見直すべき」と求めている。

 

  チレボン石炭火力の拡張計画は、すでに仏クレディ・アグリコル銀行がすでに気候変動対策の観点からDivestment行動をとって撤退した、いわくつきの事業だ。JBICの融資を条件として、日本のメガバンクが協調融資を予定している。ドイツの環境NGOのウルゲバルトが公表したグローバルな「石炭産業リスト」では、丸紅は新規石炭火力発電計画企業として第26位にランクされている。http://rief-jp.org/ct4/74524

 

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/cirebon/171114.html

http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2017/1114-58532