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日本政策投資銀行の「グリーンビルディング認証」、GRESBの不動産評価で「評価ダウン」、評価と融資のセットで「第三者性が乏しい」との理由。背景にESG分野の国際基準化の流れ(RIEF)

2017-12-08 20:46:19

DBJ5キャプチャ

 

 日本政策投資銀行(DBJ)が提供する建物のグリーン性能を評価する「DBJグリーンビルディング認証」が、不動産会社・運用機関のサステナビリティ配慮を測るグローバル・ベンチマークのGRESBの調査で、「第三者性が乏しい」として評価スコアを大きく減じられたことがわかった。認証とDBJによる融資が連動していることが評価ダウンにつながったとみられる。

 

 GRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)調査は欧米を中心に、不動産会社のほか、RIET(不動産投資信託)などが、グローバル投資家の評価を高めるため、調査に参加、スコアを取得する事例が増えている。今年の調査では世界で850社(昨年より91社増)、日本で53社(同7社増)となっている。

 

 日本の不動産会社やJ-RIETは、GRESBの対象となる保有不動産の評価に、国土交通省が中心になって開発したCASBEE(建築環境総合性能評価システム)や、LEED(米国グリーンビルディング協会の認証制度)などのほか、DBJのグリーンビル認証制度などを活用している。

 

GRESBキャプチャ

 

 DBJによると、同社の認証制度は、「対象物件の環境性能に加え、物件の様々なステークホルダーからの社会的要請への配慮等を含めた総合評価システムに基づき、グリーンビルディングを選定・認証する」との位置づけ。同時に、「本認証と併せてDBJの投融資メニューを活用することにより、財務面でも顧客の取り組みのお手伝いをする」として、本業の融資と連動させている。その融資を得るために認証を取得する不動産関係会社が多い。

 

 関係筋の説明では、GRESBの昨年の調査では、DBJの認証は他の認証制度と同様、「フルスコア」の評価を受けていた。しかし、今年の調査では「部分プラス」として、ポイントでは4割減にダウンしたという。GRESB側の説明では、認証と評価は別にすべき、としてDBJの制度には第三者性(客観性)の観点で疑義があると評価されたという。

 

 これを受けてDBJでは、個々の物件のグリーン性の評価については、これまで共同で取り組みを進めてきた一般財団法人日本不動産研究所(JREI)が担当することとし、DBJは制度全体の運営を担当するという役割分担に切り替えたという。

 

DBJ1キャプチャ

 

 DBJの認証は、CASBEEよりも手続きが容易で、かつスコア評価が高いと、優遇金利での融資を受けられるので、GRESBの調査に参加する日本の不動産会社やJ-RIETの中でDBJ認証の利用は増えていた。

 

 DBJのグリーンビル認証はこれまでに国内の470の不動産、事業者数では112社に付与している。認証物件の総床面積は東京ドーム換算で521個分(今年10月末時点)となっている。

 

 今回の認証問題は、基本的にはDBJの制度の「甘さ」に原因があるといえるが、背景には、これまで日本で普及してきた、金融機関による自発的な評価や環境格付などの客観性を問う形でもある。

 

 最近は、ESG投資の盛り上がりで、金融機関だけでなく、指標会社や資産運用会社などが、自らの手法と経験で、独自のESG評価を提供、金融商品・サービスに組み込むケースが増えている。だが、ESGの多様な項目の評価を、本当に適切にできているのか、という疑問が生じる事例は決して少なくない。

 

 一方で、先行する欧米では、グリーンボンドやグリーンファイナンスなどのESGをベースとした評価の仕組みを標準化しようという作業がすでに始まっている。今回のGRESBのDBJ認証への”注文”も、グローバルに整合性のあるルールを重視する欧米の視点と、「認証」の形は整えても、客観性に疑義を抱える日本風とのギャップが、国内勢が想定する以上に大きいことを浮き彫りにしたともいえる。

 

http://www.dbj.jp/pdf/service/finance/g_building/gb_presentation.pdf

https://gresb.com/