一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

  　環境NGOの「350.org Japan」は2017年11月から12月にかけて、大手銀行に対して、気候変動や石炭関連企業などへの投融資方針の開示、気候関連財務情報開示タスクフォース（TCFD）報告への取組等の質した要請の回答をまとめた。大手の3メガバンクは、TCFD支援を正式に表明したものの、350Japanとの面談では、「（開示には）時間がかかる」「簡単にはできない」などと、実際の取り組みには消極的な回答に終始したという。

　350Japanは2017年9月22日に「パリ協定」に整合した銀行業務を求める要請書を​国内大手7銀行 に提出した​。その内6行から回答を得たが、「投資・融資先企業におけ る適切な情報開示やCO2排出量の削減目標等の要請に対して、どの銀行からもまともな回答は得られなかった」（350japan）。そこで、同年11月から12月にかけて「レッツ・ダイベスト！」キャンペーンを展開、各行に面談を要請した。http://rief-jp.org/ct1/73382

　これに対して、大手4行が年末から年始にかけて、面談に応じた。350Japanのまとめによると、まず三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）はTCFD報告に基づく気候変動関連の財務情報開示について、「全ての提言に対してどれらの情報を開示できるのかは検討中。前例のない取り組みであ るため時間がかかる。いつまでどの情報を開示するかは現時点でコメントはできない。提言の 中に記載がある５年間のスパンで考えている」と回答した。

　またTCFDの関連情報を開示する報告書については、欧米金融機関が重視する財務報告書中での開示ではなく、「統合報告書での取り組みの公表が、今後必要になってくると認識している」と回答した。

　三井住友フィナンシャルグループは「​TCFDのガイダンスを参考に、具体的に情報開示の手法を探っている。残高の開示は社 内のコンセンサスを取るまでには至っていない​」と、引き続き検討途上であると説明している。

　みずほフィナンシャル・グループは「​提言書がでているが、確立したものがない。ルールが確立されていない。開示をして いくには簡単にはできない。できるところから開示する」と、様子見段階であると回答している。

　三井住友信託銀行は「2017年度に気候変動への取り組み をまとめたCSRレポートを公開し、事業活動に伴うCO2排出量削減に向けた対策を公表してい る（投融資額は公表されていない）。TCFDに沿う開示内容を公表することに前向きである」と述べた。ただ、同社の住友三井トラスト・ホールディングスは TCFD支援を明確にしていない。

　パリ協定の1.5℃～2℃目標に整合した投融資方針の取り組みについての質問に対しては、「​地球温暖化への対応は国際社会全体で取り組むべき重要な課題」（MUFG）、「パリ協定を踏まえた、金融機関としての気候変動に関する適切な情報開示につい て、現在対応を検討している」（SMFG）などと回答する一方で、実際に1.5℃−2℃目標を投融資方針に取り組むかどうかは明言しなかった。

　三井住友信託銀行は、12月からスタートした温室効果ガス排出量の多い世界の100社に対する共同 エンゲージメント活動の「Climate Action 100+」に参画している（日本の金融機関で唯一の参加企業）と回答した。

 

　石炭関連企業への投融資については、MUFGは「​石炭関連企業への投融資を判断する際に、OECDなどの国際規準を内部で参照にして 判断基準を決めている」ことを明らかにしたという。ただ、そうした方針を外部公表することはしておらず、350JapanはMUFGが、この内 部での判断基準の公表を検討課題と認識している、と判断している。

　SMBCと三井住友信託銀行との面談で、両グループとも排出量の多い特定セクターに対する投融資ポリシーの重要性を認識しているが、350Japanは「その取り組み姿勢が明確ではない」と判断したという。 みずほは​石炭に対する回答を得られなかった。


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