日本のメガバンクを含む、世界の59主要金融機関の気候変動戦略の立案状況等を問う調査の結果が公表された。大半の金融機関が気候変動のリスクや解決策等に取り組み、ガバナンス面での対応していると答える一方で、パリ協定の「2℃シナリオ分析」に基づく対応は49%と過半数に満たず、CO2排出量の多い企業に気候リスクの情報開示を求めているのは、わずか2社だけという実態が浮き上がった。調査を主導した米Boston Common Asset Mangement(BCAM)は、金融機関の対応は、「まだうわべだけにとどまっている」と指摘している。
BCAMはこの調査を2014年から定期的に実施している。2017年はNGOのShareActionなどと共同で実施した。BCAMの調査には合計2兆㌦以上の運用資産を抱える100以上の機関投資家や資産運用会社等が賛同している。調査は対象機関へのアンケートを軸にし、回答が得られなかった機関については、開示された公的資料等を活用した。
今回、調査対象になった日本勢は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBG)、みずほフィナンシャル・グループの3メガバンクのほか、野村ホールディングス、オリックス。・コーポレーションの5機関が含まれている。
2017年の調査結果はまず、企業としての気候戦略への取り組みについては、59機関のほぼすべて(97%)は気候変動リスクとその解決策等に関して、関連産業やマルチステークホルダーとの間で、知見の共有や協力について一定の対応をしていると答えている。経営レベルでの「気候ガバナンス」の採用も95%と高レベルの回答だった。ただ、自社の金融グループ全体で共通した気候戦略をとっているのは58%にとどまり、所属の金融業界団体や金融界全体での取り組みになると41%に下がる。
気候関連のリスクマネジメント体制では、71%の金融機関が、CO2排出量の多い事業への取り組みを除外する公的規定を採用していることを明らかにした。しかし、そうした規定にもかかわらず、それらの高排出企業を低炭素化させる移行計画に、貸し手として取り組んでいると答えたのは53%と半数に低下。さらに、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告に沿って、それらの企業に気候リスクの情報開示を求めているのは2社だけだった。
低炭素社会移行に伴う新たなビジネスチャンスとなる気候オポチュニティに関しては、95%が低炭素化のグリーン金融商品やサービスの開示を実施している答えた。ただ、それらのグリーン商品が、最高位のサステナブルクライテリアに合致しているかどうかを、内部のデュージェリジェンスで検証し、第三者評価を得ているとしたのは34%で、3分の1でしかなかった。それらのグリーン金融商品・サービスの販売促進や増加のための明確な目標を設けている金融機関も半数に満たなかった(46%)。
石炭関連企業向けの投融資を禁じていない金融機関は過半以上の64%に達し、これらの金融機関が2014年から17年にかけて、世界中で120の石炭火力発電事業等に、総額6000億㌦(約63兆円)を投融資したことも明らかになった。