一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

　環境NGO 350.org 日本支部（350.org Japan）は、28日に開いた三菱UFJフィナンシャルグループ（MUFG)の株主総会に合わせて、同グループに「無責任銀行ジャパン大賞2018」を贈呈した、と発表した。過去3年間で、環境負荷の高い化石燃料への融資・引受額が3メガバンクの中でも最も多かった、と「授賞理由」を説明している。

　350.org Japanは他の賛同団体とともに、3メガバンクを対象にして、石炭火力発電事業や石炭採掘事業への新規融資の停止、パリ協定と整合した事業戦略や明確な指標や目標を公表することを求める署名活動を展開してきた。その結果、今月25日に約9000人から署名を集め、要望書とともに各銀行に提出した。

　MUFGに「大賞」を贈呈したのは、国際的なNGOが共同で調査報告した「化石燃料ファイナンス成績表2018」での評価に基づく。過去3年間で環境負荷の高い化石燃料への融資・引受額が国内の3大メガバンクの中で、もっとも多かったという。

　350.orgらは、MUFGのESG方針を評価する「三菱東京UFJフィナンシャル・グループに関する2018年 ESG評価レポート」を作成、28日の同社に対するアクション活動に合わせて、MUFGの株主に配布した。レポートはMUFGの株主に対して、石炭をはじめ、環境負荷の高い化石燃料への投融資の中止をMUFGの経営者に求めるように呼びかけた。

　「成績表2018」によると、MUFGは温暖化加速の影響が大きいエクストリーム化石燃料（タールサンドなど）への融資・引受額が日本の 銀行の中で最も 多く、111億7000万㌦（世界第11位）。次にみずほフィナンシャルグル ープが88億3700万㌦（同17位）、三井住友フィナンシャルグループ （SMFG）48億5100万㌦（同23位）と続く。いずれもタールサンド・パイプライン建設 の3大企業(キンダー・モルガン、エンブリッジ、トランスカナ ダ)に融資している。

　 石炭火力発電への資金提供は欧米では停滞してきているが、グローバルには依然とし て非常に大きな資金供給が行われている。2015年から2017年の融資・引受額は約940億㌦。上位は中国工商銀行（ICBC）、中国建設銀行など中国4行が占める。MUFGはその次の融資規模が44億7100万㌦で、みずほ33億1000万㌦、SMFG9億600万㌦となっている。

　350.orgらは、MUFGが「気候変動のリスク管理」のために、まずとるべき行動として、「国内外の石炭火力発電関連の事業に関与する企業への新規融資を中止し、持続可能な開発を支えるビジネスへ移行、責任のある銀行業務に向けてさらなる行動が求められる」としている。

　3メガバンク宛ての共通の要請としては、各行がグループの株主総会前に新たな環境・社会方針を発表し、石炭火力発電所や森林減少などの特定セクターへの与信の対応を改めたことに触れている。それによると、3メガとも方針内容において石炭火力を許容する姿勢を示し、唯一、SMBCだけが「USCおよびそれ以上の高効率の案件に融資限定」をすると言及した。

　350.orgは、「仮に高効率のものが導入されたとしても、パリ協定の目標達成には新たな石炭火力の建設は許されず、既存の石炭火力も廃止する必要があるという国連環境計画の勧告が存在する中、このような姿勢は状況認識が甘いと言わざるを得ない」と、脱炭素への転換を求めている。

　350.org Japanの古野真代表は「MUFGをはじめ、日本の3メガバンクには、預金者が気候変動を加速させるような事業に自分たちのお金を使ってほしくないと考えていることを認識していただきたい。石炭やその他の環境負荷の高い化石燃料への投融資を続ける日本の金融機関は、脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーへのシフトを急激に進んでいる世界の潮流に反している」と指摘している。

https://drive.google.com/file/d/1ubjyVusP1MT2JFMF9V_4Ocs1daEeJvk2/view