HOME |日本の金融機関の化石燃料・原発企業向け投融資、過去5年半の融資・引受は800億㌦。投資を含め10兆円超え。石炭・原発投融資ゼロの「クリーンバンク」は38機関。環境NGOが調査(RIEF) |

日本の金融機関の化石燃料・原発企業向け投融資、過去5年半の融資・引受は800億㌦。投資を含め10兆円超え。石炭・原発投融資ゼロの「クリーンバンク」は38機関。環境NGOが調査(RIEF)

2018-09-13 22:39:42

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 石炭開発、化石燃料保有、原発事業の3事業分野に関わる日本の大手26社への、日本の金融機関の投融資状況を調べた報告書を環境NGOが公表した。それによると、2013年1月から今年8月までの5年半の間に日本の金融機関(対象151社)が、融資・引き受けで約800億㌦(約8兆9000億円)、株や債券の投資で約120億㌦(同1兆3000億円)と合計10兆円強の資金供給源となってきたことがわかった。融資額がもっとも多かったのは、みずほフィナンシャルグループ、投資分野で三菱UFJフィナンシャル・グループだった。

 

 報告書を公表したのは環境NGOの350.org.Japan。オランダの調査機関Profundoに調査と分析を委託した。Profundoはブルームバーグや、トムソン・ロイター・エイコン等をベースとして対象期間中に、銀行、保険等の日本の151金融機関が該当する企業に提供したコーポレートローン、引き受け、債券保有、株投資等を調べた。

 

 新規石炭火力発電事業などの事業者や投資家を対象とする石炭開発関連企業は、東京電力と中部電力が設立したJERAのほか、各電力会社や電源開発(Jパワー)、丸紅、三菱商事などの商社等を含む19社。エネルギー源としての化石燃料を保有する企業は、商社のほか国際石油開発帝石(Inpex)など7社。原発メーカーは日立、三菱重工、東芝の3社。

 

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 総額800億㌦の融資・引き受け額のうち、石炭開発企業向けが全体の半分に相当する400億㌦、化石燃料保有企業向け270億㌦、原発企業向けが120億㌦。金融機関別では、石炭開発企業向け融資・引き受けで、みずほグループが113億7700万㌦でトップ。2位の三井住友フィナンシャルグループ(SMFG:68億1200万㌦)、3位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG:65億9300万㌦)よりも、倍近い規模だった。

 

 みずほグループには、傘下の千葉興業銀行やみずほ証券等、SMFGには、SMBC日興セキュリティーズ・アメリカ等、MUFGには三菱UFJモルガン・スタンレー証券等もそれぞれ含む。上位の3メガバンク合計で全体の62%を占めた。

 

 一方、化石燃料保有企業向け融資・引き受けでは、SMFGが108億1300万㌦でトップ。次いで、みずほが87億7100万㌦、MUFG52億9700万㌦の順。同分野の融資・引き受け分の91%は3メガバンクが提供してきた。

 

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 原発3メーカー向けでは、みずほが38億2900万㌦でトップ。2位はSMBCが27億900万㌦、3位は野村ホールディングス(13億3900万㌦)、4位にMUFG(11億3200万㌦)となっている。野村グループは石炭開発企業向けでも4位の53億3700万㌦を供給しており、3メガバンクに匹敵する位置にいることがわかる。

 

 3分野全体では、みずほが239億7700万㌦で一位、次いでSMBC(203億3400万㌦)、MUFG(130億2200万㌦)の順。3メガバンクで全体の7割を超えている。

 

 ただ、対象とした5年半での年間の新規融資・引受額の推移は緩やかに減少している。もっとも多かったのは2014年の160億㌦強で、17年は140億㌦強へと約20億㌦減少、18年(7月まで)は60億㌦強。今年の融資・引受額は、このままの推移だと年間で120億㌦台と下がる可能性がある。

 

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 対象企業発行の株・債券への投資状況では、MUFG、野村ホールディングス、日本生命の3社で全体の半分以上を占めた。投資分野では保険会社が上位に入った。

 

 対象金融機関151のうち、石炭開発・化石燃料保有・原発メーカーの3分野への投融資が一切なかった金融機関は38機関だった。愛媛銀行、福島銀行などの地方銀行、城南信用金庫などの信金、セブン銀行や楽天銀行などが含まれている。

 

 350.orgJapanの古野真代表は、「本欧米の主要金融機関は、石炭開発事業への新規融資を中止するだけでなく、石炭関連企業向けの投資資金の引き揚げにも迅速に動いている。それらの資産が気候変動の進展で減価リスクが高まっているためだ。日本の経済はまだ『カーボン・バブル』の可能性を抱え込んでおり、金融機関は明らかに出遅れており、日本経済全体も気候変動に対して脆弱になっている」と指摘している。

http://world.350.org/ja/energy_finance_report2018/