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環境NOGのRAN、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)に対し、改定した人権・環境方針の「実践」を迫る署名2万強を提出。「気候変動への融資」の停止を求める(RIEF)

2018-09-25 23:06:19

MUFG5キャプチャ

 

  国際環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN:本部米サンフランシスコ)は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がタールサンドのパイプラインや石炭火力発電、そして熱帯林破壊への資金提供等の「気候変動への融資」を増やしているとして、同融資を止めるよう求める署名数を送付した。署名は10日間で、2万4757人をグローバルに集めた。またMUFG子会社のMUFGユニオン・バンクのオフィス前でアピール行動も行った。

 

 (写真は、MUFG傘下の米ユニオンバンクのサンフランシスコ支店の前でキャンペーン活動を展開するNGOら)

 

 MUFGは今年5月、環境・社会課題解決に貢献する基本方針として「MUFG 環境方針・人権方針」等を改定した。この中で、新規の石炭火力発電所向け融資について「OECD などの国際的ガイドラインを参考に、ファイナンスの可否を慎重に検討」と明記した。日本の主要銀行で石炭火力融資の基本姿勢を示したのは、その時点では初めてだった。

 

 RANはMUFGのこの行動を評価し、「MUFGは大胆な最初の一歩を踏み出した。しかし、さらなる改善が求められる」(「責任ある金融」シニアキャンペーナーのハナ・ハイネケン氏)と述べ、環境・人権方針の実践を求めている。

 

 RANによると、MUFGは米国市場で、先住民の聖域を貫通する計画を立てたダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)への融資で中心的な役割を果たす銀行に含まれている。DAPL建設はパイプライン建設地のスタンディングロックでの先住民とその支持者たちによる数カ月にもわたる歴史的な抗議に火をつけ、国連の代表者も先住民の権利が侮辱されたと非難するなどの展開をみせた。

 

石炭火力向け融資では世界第5位。日本の銀行ではトップ
 石炭火力向け融資では世界第5位。日本の銀行ではトップ

 

 MUFGは、DAPL以外にも他の化石燃料インフラ計画に資金提供をしている。それらの計画には、バイユー・ブリッジ、キーストーンXL、ライン3などのパイプライン建設計画が含まれる。MUFGはこれらの計画を推進するエナジー・トランスファー・パートナーズ、トランスカナダ、エンブリッジなどの北米のタールサンド・パイプライン建設企業へ融資してきた。

 

 RANをはじめ米国の環境団体は、MUFGが森林破壊及び環境負荷が最も高い「エクストリーム化石燃料」に資金を提供することは「気候変動への融資」となる、と批判している。そのうえで、MUFGは自らが制定した人権・環境方針に沿って、即座に融資を止めるように求めている。

 

 先住民環境ネットワークのコミュニティ・オーガナイザーで、シャイアン・リバー・スー族のジョイ・ブラウン氏は「MUFGのタールサンドやパイプライン建設企業への資金提供は大量虐殺的で、環境及び社会的配慮がほとんどされていない。銀行が私たちの民族や孫たちの生活を脅かし続けることを許せない」とMUFGを名指しで非難している。

 

NUFGに石炭関連融資の停止を求める別の環境NGO、350.org.Japanのメンバー
MUFGに石炭関連融資の停止を求める別の環境NGO、350.org.Japanのメンバー

 

 NGOや住民団体等は、MUFGへのアピールとして、9月14日には、MUFGの米子会社であるユニオン銀行のサンフランシスコオフィス前で、抗議のキャンペーン活動を展開した。同時に、MUFGに人権・環境宣言に沿った行動をとることを求める署名活動をグローバルベースで開始した。今回、MUFGに送付した署名数は、わずか10日間で2万4757人分に達した。

 

 RANが4月に発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表2018」によると、MUFGは2015年から2017年の間の石炭火力発電への融資・引受額では世界5位。エクストリーム化石燃料では11位で、いずれも日本の金融界でもっとも多い。

 

 また、MUFGの融資活動の問題は、化石燃料だけでない。RANは、気候変動を悪化させる熱帯林破壊と、それに関連する人権侵害に関わる企業への資金提供を行っている点も見逃せない、としている。問題視されるのは、MUFGがインドネシアの食品・パーム油大手のインドフード社に融資を続けている点だ。同社は熱帯林破壊と労働者搾取問題を引き起こしており、RANは「MUFGはインドフード社に加担している」と非難している。

 

 数年前まで、国際的環境NGOのキャンペーン対象は、欧米の大手金融機関が中心だった。しかし、欧米金融機関の多くは、人権・環境対策の整備を進め、NGOとの「対話」も継続的に展開したうえで投融資活動の見直しを実施してきた。こうした改善が図られたことから、主要な環境NGOは、「宣言」と「実践」がかみ合っていない日本の大手銀行に照準を移しつつあるといえる。MUFGは今年の株主総会で別の環境NGOの350.org からの批判も浴びている。

 

http://japan.ran.org/?p=1276

https://act.ran.org/stop_funding_climate_destruction