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国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)、OECD石炭火力ルール厳格化後に、世界で計画の15件中12件に関与。「世界で最もダーティな公的輸出信用機関」と、米FOEが報告書(RIEF)

2018-11-23 08:53:14

OECD1キャプチャ

 

   環境NGOの「Friends of the Earth U.S.」 は、日本の公的輸出信用機関(ECA)である国際協力銀行(JBIC)と日本貿易保険(NEXI)が、OECD(経済協力開発機構)の石炭火力発電所への輸出信用ルール制定後に、計画が持ち上がった15の事業のうち12件に関与し、うち5件はルールで適合にもかかわらず資金供与を進めていると指摘する報告書を公表した。資金供与額は毎年17億㌦に上る。JBICとNEXIは世界で最もダーティ(汚い)なECAの称号を得た形だ。

 

 OECD輸出信用グループは2015年に、OECD諸国による途上国等への石炭火力発電事業への支援を制限することで合意した。2017年1月1日に制定した「石炭火力発電事業に対する輸出信用に関するOECDセクター了解(CFSU)」で支援が認めるのは、超々臨界圧火力発電(USC)、もしくは最貧国向けの小規模発電所(亜臨界圧は300 MW未満、超臨界圧は500MW未満)に限った。

 

 パリ協定の発効後は、「USCも問題」との指摘が広がっている。CFSU制定後に、世界では15件の途上国向け大規模石炭火力発電所計画が動いており、このうちの大半に相当する12件にJBICとNEXIが関与しているという。JBIC等が関与する案件のうち、ボツワナ(モルプレB)、インドネシア(カルセルテン2)、モンゴル(ウランバートル第5熱電供給プラント)、ベトナム(ギソン2、バンフォン1)はOECDルールに照らして不適格とされる。

 

JBIC、NEXIが関与する石炭火力事業の概要
JBIC、NEXIが関与する石炭火力事業の概要

 

 またベトナムのもう1件(ブンアン2)は技術要件が公表されておらず「不明」の扱いだが、これを含めると、日本勢が手掛けている12案件の半分はOECDルールに適合しないのに、事業化を検討したり、すでに支援中ということになる。

 

 OECDルールの制定後に事業化案件が進む理由は、OECDのCFSUでは、環境・社会影響評価(ESIA)が2017年1月1日より前に完了し、「これに基づいて迅速な行動が なされた」案件についてはECAの支援を認める、との例外規定があるためだ。ただ、報告書は、各事業のESIAには問題が多く、さらに2017年の期限からすでに1年半以上が過ぎており、ESIAに基づく「迅速な」行動がなされたとはいえない、と批判している。

 

 報告書は、2013年から2015年にかけて、JBICとNEXIが年平均130億㌦を超える資金を化石燃料の支援に提供し、うち毎年17億㌦を石炭事業に投じてきたと指摘している。

 

OECD4キャプチャ

 

 日本が支援している12件の石炭火力発電所(発電容量約12GW )が完成した場合、発電所から排出される推定年間CO2排出量は、80%稼動率の場合で7192万㌧とみられる。これは年間1500万台超の自動車の走行、もしくは日本人740万人分の排出量に相当する、という。

 

 JBIC等のECAが石炭事業への公的支援を継続している一方で、一部の民間機関は「脱炭素」に動いている。2018年6月1日時点で、国際的な19の主要銀行がもはや炭鉱の支援を行わず、16の銀行が石炭火力発電への支援を行わないことを宣言、実行している。このうち、石炭火力と炭鉱の両方を資金支援から除外した銀行には、フランスのBNPパリバ、ドイ ツのドイツ銀行、オランダのINGなどがある。

 

 USCに対する支援を認めている銀行も事業から撤退している。例えばオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)は、石炭向け資金支援を制限する方針を採用した後、ベトナムのソンフア1(Song Hua 1)石炭火力発電を支援しないと決めた。ドイツのアリアンツは炭鉱と石炭火力発電の建設および運転関連の保険提供を拒否したほか、日本の日本生命も内外の石炭火力発電事業への新規融資を停止した。

 

OECD3キャプチャ

 

 JBICとNEXIが支援する12件の火力発電計画でも、ベトナムのギソン2事業では、英スタンダードチャータード銀行は、同事業の環境汚染がひど過ぎるとの判断で支援から降りたほか、インドネシアのチレボン2やタンジュンジャティBユニット5、6号機向けではフランスのソシエテ・ジェネラ ルとクレディ・アグリコルの両銀行が支援をやめた。

 

 しかし、日本のメガバンクは、JBICとNEXIの支援、輸出信用を背景に積極的に融資を継続している。ただ、報告書はこのうち、ベトナムのバンフォン1およびボツワナのモルプレの事業への支援は難しくなっている、と指摘している。

 


 報告書の執筆者でもあるFOE.USの国際政策アナリストKate DeAngelis氏は「日本政府は、彼らの支援なしではすでに衰退しているであろう石炭産業に対し、無責任にも支援を提供し続けている。日本はまさに、気候変動に加担する世界最悪な国の一つだ」「気候変動に対処する必要があるといった安倍首相の言葉は、安倍政権が石炭を世界全体で何10億㌦も支え続ける限り、全くもって空虚で、うわべだけのものだ」と批判している。

 

http://www.foejapan.org/aid/doc/pdf/20181019_OECD%20CFSU%20Report%20Japan%20-%20Japanese_final.pdf