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インドネシアの違法伐採合板を東京五輪の施設建設に使用、輸入は住友林業、三井住友銀行が違法伐採企業グループに一部融資。環境NGOのRANが報告書で指摘(RIEF)

2018-11-26 08:03:03

RAN11キャプチャ

 

 環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN:本部サンフランシスコ)は、インドネシアと韓国の複合企業であるコリンド・グループが東京オリンピック施設建設用に製造し、住友林業が調達・供給した合板に、違法伐採木材が含まれている可能性があるとの報告を公表した。RANは同報告に基づき、オリンピック組織委員会に調査の実施と情報開示を要請するとともに、調査対応できるまでコリンド製木材の使用停止を求めている。

 

 コリンド社はインドネシアで、木材、パーム油、パルプ、製紙など広範な林業ビジネスを展開している。合計52万5000haの伐採事業許可地域を保有するほか、16万haのパーム油事業許可地域、さらに日本の王子製紙と提携し、11万haの製紙原料用植林向け事業許可地も保有している。同社はこうした広大な森林地域を開発するために、火を使って森を焼き払う方式をとり、煙害で周辺国にまで健康被害の影響を及ぼしてきた。

 

 2015年に東南アジアに広がった煙害では、同地域の何千人もの人々が早死にしたと考えられ、世界銀行の推計では160億㌦の損害をインドネシア経済に及ぼしたとされる。しかし同社は、火災は同社の事業によるものではなく、自然火災と主張して責任を逃れている。

 

コリンド社の開発と輸出の流れ
コリンド社の開発と輸出の流れ

 

 コリンド社がインドネシア環境林業省に提出した申告書によると、2016年と2017年に合板製造に用いた木材の約4割が森林皆伐に由来するいわゆる「転換材」であり、大部分が工業用木材やアブラヤシ農園および石炭採掘用に更地を作るために伐採された自然林からの木材という。中にはボルネオオランウータンの生息地からの木材も含まれている。

 

 RANによると、これらの合板の一部はコリンド・グループのバリクパパン・フォレスト・インダストリーズの工場で製造され、今年5月、東京五輪バレーボール会場となる有明アリーナで見つかったという。合板は住友林業によって供給されていたとされる。

 

 東京五輪の木材調達基準では「中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来すること」、「伐採に当たって、生態系の保全に配慮されていること」を求めている。RANは、森林皆伐の由来分を含んだコリンド社の合板は、東京五輪の基準が定義する「持続可能な木材」に該当しないと可能性が高いとしている。

 

有明アリーナの建設現場で見つかったコリンド社の合板
有明アリーナの建設現場で見つかったコリンド社の合板

 

 さらに五輪施設の建設に使われたコリンド社の合板には、同国北マルク州で違法伐採された木材が含まれている可能性もあるという。同州では、同社が地域の住民の反対を押し切って強引な森林伐採を展開、住民たちは、インドネシア政府や、コリンド社のメインバンクであるバンク・ネガラ・インドネシア(BNI)などに抗議行動を展開している。

 

 RANによると、今年5月30日時点で、東京五輪施設の建設にインドネシアのコンクリート型枠合板が11万8900枚使われ、そのうちの11万枚以上が新国立競技場に使われたことが公表されている。五輪当局は、製造企業や木材原産地の詳細を公開していないが、一部が有明アリーナで見つかっており、新国立競技場の建設にもコリンド社の違法伐採木材が含まれている可能性がある、と指摘している。

 

 RANは東京五輪組織委員会に対して、大会の施設建設に使用されているコ リンド社製木材の割合を調査および情報開示し、住友林業をは じめとする全ての関係者が木材の合法性と持続可能性をどう確認しているかを説明するほか、調査と対応がなされるまで、 コリンド社木材の使用を停止し、木材調達基準を強化する等を求めている。

 

コリンド社製合板を輸入してきた日本企業の分類
コリンド社製合板を輸入してきた日本企業の分類

 

 また日本政府に対しては、合法的に伐採された木材の使用を確かなものにするために、特にマレーシア、イン ドネシアなどの高リスクな生産地について、日本の合法性検証システムの「グリーン購入法」と「クリーンウッド法」の有効性評価を求めている。木材サプライチェーンのデューデリジェンス強化、ESG情報開示の強化等も要請している。

 

 コリンド社との取引企業に対しては、同社事業における合法性と持続可能性に関する問題が確認されるまで、同社製木材の輸入を停止し、自社の確固たる木材方針を導入するよう要請している。伐採地の森林まで遡る完全なト レーサビリティの確立などを踏まえた木材調達方針順守の監督の強化、アカウンタビリティ(説明責任)を果たすことも求めている。

 

 金融機関に対しては、違法な事業活動、高保護価値(HCV)地域、高炭 素貯蔵(HCS)林、泥炭地、先住民族の権利・慣習的権利、労働者の権利に悪影響を及ぼす可能性のある顧客企業の事業活動、サプライチェーンの事業活動等への資金提供を明確に禁 止する既定の策定等を求めている。

 

http://japan.ran.org/wp-content/uploads/2018/11/BrokenPromises_20181120_jp_web_low.pdf