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経産省、固定価格買取制度(FIT)の「改悪」を発表。未稼働案件一掃を目的に、いったん認めた買取価格を強制的に大幅引き下げへ。国会審議を経ず、省令改正で強行(RIEF)

2018-12-06 00:28:37

Metiキャプチャ

 

 経済産業省は5日、再生可能エネルギー発電の固定価格買取制度(FIT)の認定を受けながら、運転が開始されない未稼働案件が大量滞留しているとして、いったん国が認めた電力買い取り価格を強制的に引き下げることを決めた。国民負担増大の懸念や、新規開発・コストダウンが進まなくなっているとの理由。今回の経産省の強硬姿勢に対しては、太陽光発電事業者だけでなく、事業者に投融資している金融界からも「契約の基本原則を無視した暴挙」との批判の声があがっている。

 

 同省は、今回のFIT抜本見直しについて、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会での審議を経て、一般からの意見公募も得て決定した、としている。だが、いずれも同省の審議会での意見徴求で、国会等での議論は踏まえず、行政判断による省令改正のみで政策転換することになる。

 

 国がいったん認めた買取価格を引き下げる対象となるのは、2012~14年度に認定された10kW以上の事業用太陽光発電。このうち2017年4月に施行された「改正FIT法」への移行時に、「3年ルール」の運転開始期限を設定していない案件となる。

 

 ただ、2016年8月1日以降、送配電事業者から系統接続の同意を得た案件と、開発工事に本格着手済みであることが公的手続で確認できる大規模事業(2MW以上)は今回の措置の適用外とする。また条例に基づく環境アセスメントの対象事業も適用を1年遅らせる。

 

朝日新聞より
朝日新聞より

 

 対象案件で現状の買い取り価格の引き下げを免れるには、2019年2月1日までにる電気事業法に基づく工事計画届出を行い、系統連系工事の着工申し込みを3月31日までに送配電事業者(電力会社)に行う必要がある。運転開始期限も2020年3月31日までと設定している。

 

 今回の措置の適用対象外となる2MW以上の大規模発電も半年程度先延ばしになるだけで、2020年9月30日までに運転稼動しないと、買取価格が大幅減額される。買い取り価格の強制引き下げは、送配電事業者が着工申込みを受領した日を適用基準点とし、その受領日から2年前の買い取り価格を適用する。

 

 例えば、買い取り価格が2012年度の40円、13年度の36円、14年度の32円の各事業の買い取り価格の案件は2019年度中の場合は21円に、2020年度の場合はさらに18円に引き下げられる。このため、19年度中に稼動手続きに入ったとしても、12年度分の買い取り価格はほぼ半額に、13年度分は約4割減、12年度分は約3割減となる。

 

 経産省がこうした改革を主張する理由は、対象となる12~13年度にFIT認定を受けた太陽光発電案件の総発電量5370万kWのうち未稼動案件が44%の2352万kWに達していることが大きい。このうち半分近くは運転開始期限が付いていない。

 

 同省は、①すでにFITによる国民負担が年間2.4兆円に達しているとしており、これらの高買い取り価格案件が後々動き出すと、国民負担が更に増大、事業者の過剰な利益となる②新規開発・コストダウンが進まない③これらによって系統容量が押さえられてしまう――などを指摘し、未稼働案件を抜本処理することが必要、としている。

 

 だが、こうした経産省の主張は、そもそもFIT制度を作り出した際の同省の政策設計の不備を棚上げにした議論といえる。FIT制度はすでに欧州で長い歴史があり、現在、経産省が問題になっている、と主張するような課題は各国の政策を子細に点検すれば事前に対応できたものばかりだ。

 

 太陽光発電事業者の事業化が遅れる要因の一つとされる系統連系の遅れも、我が国の既存電力会社による独占的送配電網の改革を求めないまま、発電量の変動が大きい再エネ電力側に、連係接続の新規投資の負担を求める「旧来電力網前提の政策」に終始してきた事が要因として大きい。

 

 こうした政策当局の「迷走」ともいえる政策運営に対して、太陽光発電関連事業者も、同事業者に融資している金融機関等も、困惑状態に陥っている。太陽光発電関連事業者で組織する太陽光発電協会(JPEA)は、FIT制度が変わると、金融機関からの融資が止まるなどで、事業者の損害額は2000億円を大きく上回る可能性がある、と指摘。制度改正によって事業者が国を相手に損害賠償訴訟を起こす可能性もあるとも警告している。http://rief-jp.org/ct5/84913

 

 一方、全国銀行協会は、大手銀行がまとめた関連融資合計3000億円が焦げ付きや、融資停止となる可能性があるとしている。同協会が経産省に提出したパブリックコメントでは、金融機関がすでに融資契約を締結済み、もしくは融資の一部を実行している案件も一部、FIT価格の減額対象となるため、金融機関は貸付実行の留保、条件の見直し等が必要となる。そうなると、事業者は、事業中断あるいは中止に追い込まれる場合も想定される、としている。https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/opinion/opinion301121.pdf

 

 仮にそうなった場合、金融機関への影響のみならず、地域経済への影響も大きい。①借り入れに頼って事業を計画する地元企業(事業主)への影響②造成工事やパネル設置等を担当する地元下請け企業への影響③事業中断した場合、開発中の事業用地が不適切に放置される周辺環境への悪影響④金融機関は与信判断で、制度改正リスク(政策リスク)が無視できなくなり、再エネ普及が進まなくなり、地域の未来への影響――などだ。

 

 借入金に頼ってきた地元事業者は場合によっては、借入金の返済に困窮する事態も想定される。その影響は、低金利にあえぐ地方銀行の経営に及びかねない。銀行融資が既に止まった事業者もあるという。中小事業者は返済に回せる原資に乏しく、銀行にも相当の損害が出る可能性がある。「FIT改悪」は地方経済悪化の引き金になりかねないのだ。

 

 欧米では、FIT(米ではRPS)などの政策による需要の喚起と支援が、再エネ市場を育成・拡大してきた。政策への市場の信頼から、金融機関が新たにグリーンボンドやグリーンローンを開発して資金を供給、再エネ市場とグリーンファイナンス市場が両輪となって、「ウィン・ウィン」の成長を続けている。

 

 ところがなぜか、日本市場だけが再エネ市場もグリーンファイナンス市場も、逃水のように手応えがなくなりつつある。場当たりな政策の都合によって・・・。

                          (藤井良広)

http://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181205004/1812005004-2.pdf