HOME1. 銀行・証券 |美談か負担か。日本の金融団が原発廃炉・東電向け緊急協調融資を実施(FGW) |

美談か負担か。日本の金融団が原発廃炉・東電向け緊急協調融資を実施(FGW)

2011-03-31 22:01:33

三井住友銀行など8金融機関は3月31日、東京電力への約1・9兆円の緊急融資を行った。福島第一号原発の処理に必要な資金を提供した。英紙は融資をリードした三井住友銀がかつて信用不安に直面していた際に、東電が欧米金融機関からの資金調達を仲介したことへの“恩返し”との美談を報じたが、東電が国有化あるいは債務超過になれば、今回の融資は全額不良債権化するリスクを抱えることになる。

 今回の東電向け融資は三井住友のほか、三菱UFJ銀行、みずほコーポレート銀行のメガバンク3行のほか、三菱UFJ信託銀行など信託4行、それに信金中央金庫などが応じた。三井住友はしているほか、これまでも東電に対し1200億円の長期貸し出しをしているほか、みずほコーポも810億円の融資残段かを持つ(2010年3月末時点)。

 英ファイナンシャルタイムズ紙が3月25日に報じた、電と銀行間の“美談”は、1997年のアジア金融危機の際に起きた。そのころ、すでに信用不安に直面して海外での資金調達が困難だった邦銀に代わって、当時、最高の信用格付けを受けていた東電が、欧米の銀行から低利で約20億㌦を調達、その現金を即座に三井住友銀行(合併前の住友銀行かさくら銀行のどちらか)に預け入れ、同行が機器を切り抜ける手助けをしたという。今回、同行などが危機に直面している東電の資金要請に応じたのは、その時の「恩返し」という。

 日本の銀行と企業の関係を象徴するような“美談”ではあるが、銀行団が貸付資金を東電に払い込む直前に、東電の勝俣恒久会長が福島第一の廃炉を可と、事態収拾の長期化を認めたことで、東電株はさらに下落、500円を切った。勝俣会長は廃炉の対象を第一の1~4号機とみなしているが、枝野官房長官は同じ敷地内にある5~6号機も廃炉が避けられない見通しを示している。

 また米投資銀行のゴールドマンサックスは福島第二も含めた廃炉試算を実施している。当然だが、廃炉対象が多ければ多いほど、東電の負う負担は大きい。FGWは第一の1~6号機の廃炉費用を最大7兆円と推計している。第二まで廃炉になると仮定すると10兆円規模に膨らむ。 メガバンク等の東電向け新規融資は、こうした東電の厳しい環境を前提にしての融資だけに、東電が赤字だけではなく、債務超過に陥った場合は、全額焦げ付く可能性もある。