HOME1. 銀行・証券 |3メガバンク。原発立地先から歴代幹部が多額の金品を受領していた関西電力へ、合計3000億円融資。社債償還資金等に充当。投資家のESG対応の一方で、銀行のESG判断の曖昧さ浮き彫りに(RIEF) |

3メガバンク。原発立地先から歴代幹部が多額の金品を受領していた関西電力へ、合計3000億円融資。社債償還資金等に充当。投資家のESG対応の一方で、銀行のESG判断の曖昧さ浮き彫りに(RIEF)

2019-12-17 16:44:11

3megaキャプチャ

 

   三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)をはじめとする3メガバンクは、関西電力に対して総額3000億円の緊急融資を実施した。関電は歴代幹部が高浜原発の地元有力者から長年にわたって多額の金品を受け取っていた問題が発覚、市場での資金繰りが困難な状態に陥っており、社債の借り換え費用を銀行が肩代わり融資した形という。投資家はESGの観点から関電の社債引き受けを見送る判断をしたとみられるが、銀行の融資判断でのESG評価の「緩さ」を示す形でもある。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、関電は不祥事発覚を受けて、2019年度下期の資金計画を見直した。当初予定していた1000億円規模の社債の発行と、同額規模のコマーシャルペーパー(CP)の発行を見送るか、あるいは減額することを決めたという。不祥事発覚で投資家に敬遠される可能性が高いためだ。

 

 しかし、すでに発行している社債等の償還は今年末から来年にかけて、合計2500億円が予定されている。通常は新たに社債を発行して借り換えてもらうのだが、ESGマインドを高めている機関投資家は、売り切りにする可能性が高い。こうしたことから、関電は償還資金を銀行からの融資でまかなうことにしたとみられる。

 

金品受領の不祥事発覚で謝罪する関電幹部
金品受領の不祥事発覚で謝罪する関電幹部

 

 すでに3メガバンクは合計で1000億円分を融資済みで、今後、必要に応じて残りの2000億円も融資するという。

 

 企業不祥事はESG評価の中でも、Gのガバナンス評価の対象となる。収益がプラスの企業でもガバナンス上の不祥事が明るみに出ると、投資家はESG上の判断から投資を避けるのが最近の動きだ。関電が社債発行を見送るのはそうした市場の感触を踏まえてのものとみられる。では、銀行の関電に対するESG評価はどうなのか。

 

 MUFGの環境・社会ポリシーフレームワークでは、「贈収賄防止への取り組み」として、海外贈収賄防止を重要課題として定めている。だが、国内企業についての言及はない。まさか、国内企業は贈収賄をして問題ない、というわけではないだろうが。https://www.mufg.jp/csr/policy/

 

 また「評判リスクに関する協議の枠組み」として、融資先の事業がMUFGの企業価値を大きく毀損する可能性があると判断される場合は、当該ファイナンスへの対応を経営層も入れて協議するとしている。今回、融資に踏み切ったことは、不祥事企業に融資しても銀行の評判は崩れないとの経営判断に至ったからなのだろうか。

 

  三井住友フィナンシャルグループの「サステナビリティ方針」では、「社会の健全な発展に貢献する」「業務の遂行において常に、ビジネスエシックスを意識するとともに、監査等の指摘に対する速やかな行動を確保し、社会の良識に即した企業集団を確立する」等と明記している。関電向け融資はビジネスエシックス上も問題ないとの判断からか。

 

 みずほフィナンシャルグループは、リスク管理の中で、「与信集中先・大口与信先の不測かつ急激な信用悪化」をトップリスクに据えている。ただ、融資先の不祥事対応についての明文規定は、HPをみる限りない。

 

 今回の関電向け融資は、3メガバンクにとって、関電側の緊急性とリスクカバーの両面から、通常よりも高い金利を得られたのかもしれない。また一行ではなく、3メガの協調融資とすることで、リスクシェアリングを図ったともいえる。

 

 しかし、投資家が投資先の不祥事発覚を踏まえてESG評価の動きを強め、企業に改善を求める流れになっている中で、銀行がESG上の評価を明確に外部に示さず、当該企業に資金を融通するというのは、とりもなおさず、銀行のESG対応が形だけ、ということを市場に示したことにもなる。

 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53336900T11C19A2TJ1000/