HOME5. 政策関連 |小泉環境相、ベトナムのブンアン2石炭火力事業計画に「反対」を表明。事業主体に三菱商事、融資も3メガ中心。だがEPCは米中企業で「低炭素型インフラ輸出に当たらず」と(RIEF) |

小泉環境相、ベトナムのブンアン2石炭火力事業計画に「反対」を表明。事業主体に三菱商事、融資も3メガ中心。だがEPCは米中企業で「低炭素型インフラ輸出に当たらず」と(RIEF)

2020-01-22 00:54:57

koizumi11キャプチャ

 小泉進次郎環境相は21日、三菱商事が関わるベトナムでのブンアン2石炭火力発電所の建設計画に反対の立場を表明した。同計画は三菱商事の香港子会社が事業会社に参画するが、事業のEPCは中国と米国企業が担う。小泉氏は、石炭火力は地球温暖化対策を妨げるとして国際的に問題視されていることを踏まえ、「国際社会から批判を浴びながらこのような実態があるのはおかしい。国民、国際社会の理解は得られない」と述べた。

 ベトナムのブンアン2石炭火力発電所計画は、同国中部のハティン省キーアイン県キーロイコミューンハイフォンに計画されている。三菱商事の香港子会社のVung Ang 2 -DGAが40%、日本の中国電力20%、香港のCLPホールディングス40%の合弁会社のOneEnergy Ltd.が設立した特別目的事業体「Thermal Power Company(VAPCO)」が事業主体。

 総事業費約22億㌦で、2020年建設開始、24年稼働予定。総発電量1200MW(600MW×2基)の超々臨界圧石炭火力発電(USC)設備を建設する計画だ。だがすでに隣接地にはペトロベトナム(PetroVietnam)によるブンアン1石炭火力が稼働中で、周辺では大気汚染、水質汚染、増え続ける石炭灰などの課題が指摘されている。

 koizimi3キャプチャ

  小泉氏は、日本政府がエネルギー基本計画で「低炭素型インフラ輸出」推進の立場をとっている点を取り上げた。ブンアン2事業では、融資は日本勢中心の予定だが、建設は米中が担うことから、日本のUSCが使われるわけではないと指摘。「石炭輸出に関する要件との整合性については疑問の余地がある」と語った。

 同氏が指摘したように、同事業への融資は、日本の国際協力銀行と3メガバンクなどが中心。国際協力銀行が参加することで民間銀行の信用リスクを引き受ける。その民間は三菱UFJ、みずほ、三井住友、三井住友信託の大手4行が融資団として並ぶ。

 当初融資団に入る予定だった英スタンダード・チャータード銀行は昨年末、石炭火力事業への投融資の段階的停止方針を打ち出している。シンガポールのOCBC銀行も撤退と報じられている。いずれも、化石燃料向け事業に長期間コミットすることで投資家から敬遠されることを嫌った動きとみられる。https://rief-jp.org/ct8/97374

ブンアン2石炭火力発電所の完成予想図
隣接するブンアン1石炭火力発電所

  三菱UFJ等は、昨年、石炭火力向け融資の原則中止方針を打ち出した。しかし、ブンアン2は融資方針変更前から計画中ということで「融資中止の例外」とみなしている。事業者、融資団は「日の丸」だが、事業のEPC(設計、調達、建設)事業は中国のEnergy China GPECと、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)が担う。

 こうした状況下で、小泉氏は今回の建設計画への懸念を示した。環境相には海外での発電所計画を止める権限はない。だが、同事業の推進がグローバルな地球温暖化対策を妨げるとして批判されていることから、今回の発言に踏み切ったとみられる。

  環境相がブンアン2計画に疑問を示したことに対して、FOEジャパン等の環境NGO5団体は、「気候危機が深刻化し、緊急の気候変動対策が求められる中、小泉環境大臣が日本による海外石炭火力発電事業への公的支援の問題について踏み込み、疑問を呈したことを歓迎する」とコメントを出した。http://www.foejapan.org/aid/jbic02/va/pdf/200121.pdf

 NGOらは、「日本の海外への石炭火力に対する公的支援額は世界第2位であり 、2017年〜2019年の間、日本の3メガバンクによる石炭火力発電事業者への融資額は世界トップ3を占めている」と指摘。

 「日本の官民は、ブンアン2石炭火力発電事業及びビンタン3石炭火力発電事業(同じベトナム)、その他の新規の石炭火力発電事業からの投融資撤退を一刻も早く決定すべきだ。もう新規の石炭火力発電所を建設しているような場合ではないく、どのように既存の発電所を閉鎖し脱炭素を実現していくか、真剣に取り組まなくてはいけない時にきている」と述べている。

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/va/pdf/20201_vungang2_factsheet.pdf