HOME10.電力・エネルギー |再エネ活用の水素を使った混焼発電で、従来型のディーゼル発電のCO2排出量を大幅削減する「水素サプライチェーン」実験に成功。日立製作所、産総研等(RIEF) |

再エネ活用の水素を使った混焼発電で、従来型のディーゼル発電のCO2排出量を大幅削減する「水素サプライチェーン」実験に成功。日立製作所、産総研等(RIEF)

2020-03-23 22:06:30

suiso2キャプチャ

 

 日立製作所とデンヨー興産(東京)、産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所の3機関は、福島県で進めている再生可能エネルギー電力から水素を製造し、500kW級のディーゼルエンジン発電システムで水素混焼発電を1000時間以上継続運転することに成功した。CO2排出量を大幅削減できる「水素サプライチェーン」にメドをつけた形だ。

 

 3機関は、太陽光発電の電力を用いて水を電気分解し、製造した水素を、水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)に効率的に化学変換させるシステムを開発している。気体の水素ガスは、体積密度が非常に小さいので、液化や化学変換等によって貯蔵性や輸送性を向上させた水素キャリアに転換させる。

 

 MCHは常温常圧で液体の有機化合物で、水素キャリアの候補の一つとされる。理論的には1㍑の液体MCHに500㍑の水素ガスを貯蔵できる。3機関は、MCHを用いることで、水素を安全、安価に貯蔵、輸送して、エンジンやガスタービンなどの内燃機関用の燃料に利用する「水素サプライチェーン」の技術開発を行ってきた。

 

suiso1キャプチャ

 

 今回、この水素キャリアのMCHへの変換に際して、シンプルな構成の水素キャリア製造システムを開発した。そのMCHを使った水素混燃発電機システムの実験は、2018年10月から保土谷化学工業郡山工場(福島県郡山市)で行われ、発電出力300~500kW、水素混燃率40~60%で、合計1000時間以上の稼働を実現できたとしている。同システムは、既存のディーゼルエンジンを活用した水素混焼発電装置となる。

 

 レシプロエンジンの水素混焼の場合、軽油と空気、水素を同時に燃焼させるが、水素の火炎伝播が早く、水素が逆火して水素供給サイドへ戻るなどの課題があった。今回の発電機では専用のエンジンコントロールユニット(ECU)を使って最適燃焼状態を自動制御することで長時間の水素混焼運転を実現した。

 

 実証実験を詳細にみると、300kW出力、水素60%の場合で700時間燃焼、500kW出力で同40%で300時間燃焼ができた。300kWで同80%以上での短時間運転も達成した。発電効率は従来のディーゼルエンジンと同等の40%を達成した。事業化に際しては500kW級で従来のディーゼルエンジンと同程度までコストを下げることが目標。国内で副生水素が発生する工場や分散型発電所の地域などで地産地消する発電システムを目指す。

 

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2020/pr20200318/pr20200318.html